シャーマン・クロコダイル
「ジャップの洞穴は何処だ」
シャーマン・クロコダイルを走らせる戦車長であるディアス軍曹が鼻歌交じりに言う。
上陸前は雨あられの攻撃で無事に揚陸艦がたどり着けるか不安だった。
仲間の戦車を積んだ揚陸艦が何隻も沈められるのを見て、次は自分ではないかと思ったくらいだ。
無事に接岸し、島に上陸してからも、急な砂浜を押し上がるのに時間がかかり、その間も砲撃を受けて生きた心地がしなかった。
だが工兵の頑張りによりスロープが作られ、彼のシャーマンは硫黄島内陸部へ進出に成功した。
戦場に現れたシャーマンは無敵だった。
日本軍の対戦車兵器ではシャーマン・クロコダイルに正面から対抗できない。
不注意な味方から離れ、単身突っ込みすぎて横腹や後ろを撃たれ撃破される事はあったが、ディアス軍曹はそんなへまはしなかった。
歩兵が確保した地域を慎重に進み物陰は必ず偵察して確認する。
そして、周囲の安全を確認してからようやく前進。目標へ接近すると火炎放射を浴びせる。
目標の入り口から盛んに小銃や機関銃を放ってくるが、分厚いシャーマンの装甲板を鳴らすだけで貫通は出来ない。
敵の弾を浴びながら悠々と接近し砲身を向け、後付けされた火炎放射器のスイッチを押す。
ガソリンによって生み出された猛烈な火炎が吹きだし、炎の柱が伸びて洞窟へ入り、中を焼き尽くす。
外付けのタンクに歩兵が使う個人携帯式とは比べものにならない量の燃料を入れている事もあってな十数秒以上、火炎放射を続けられる。
徹底的に中を焼却しないと日本兵が湧いてくる。
彼は、念入りに焼いていく。
「うわああああっっっ」
熱さに耐えきれず、全身火達磨になった日本兵が飛び出してきた。
周囲にいた歩兵が銃を構え近寄ってくる前に射殺した。
その光景を見たディアスは、更に数秒火炎放射を行い日本兵が出てこないと分かるとようやく、火炎放射を止めた。
「焼き終わったぞ、一発お見舞いしてやれ」
シャーマンに装備されている七五ミリ主砲を放ち、洞窟の奥を破壊する。
火炎で焼いているが中には上手く壁のへこみに隠れているのか生き残って反撃してくる奴もいる。
主砲を撃ち込んでおけばなお安心だ。
「よし、それくらいでいい。後ろのブルドーザーに埋めさせろ」
後ろにいたブルドーザーが前進し周りの土砂を掬いつつ入り口に迫る。
土砂が入り口に詰められ、完全に塞がる。
上に少し隙間が残っているが、歩兵が駆け寄り、ガソリンを入れて更に燃焼を促す。
「良し、十分だな。次に行くぞ!」
全て終わったのを見てディアス軍曹は周囲の制圧を後続の歩兵に任せ次へ向かうことにした。
「おい、二号車、今度はお前がやれ」
後続の戦車にディアスは命じた。
あまりにも損耗が激しいため、彼が他の戦車の指揮をしなければならない。
それに彼の戦車だけでは手が足りない。仲間が仕事が出来るようになってくれれば、多少は楽になる。
「おい! 前に出すぎるな!」
不用意に前に行こうとしたことを咎める。
撃破されたら自分の負担が増える。生き残って貰わないと困る。
二号車はディアスの言うことを聞いて止まったが、次の瞬間、正面から飛び込んできた吹き飛んだ。
「馬鹿な!」
二号車が吹き飛んだのを見て、ディアス軍曹は驚いた。
横や後ろから薄い部分に攻撃を受けたのではない。不意打ちを受ける前に止まっており、攻撃出来ない。
信じられないことだが、二号車は、真っ正面からやって来た砲弾によって一番分厚い真っ正面の装甲が破られた。
日本軍の対戦車兵器でシャーマンの装甲を正面から貫くことは出来ないはずだ。
あったとしても偵察で対戦車兵器が置けそうな箇所は把握している。
どうして撃たれたのか、訳が分からないかった。
だが、すぐディアス軍曹の目の前に二号車を撃破した戦車が現れた。
「な、何だアレは!」
予想外に大きな戦車にディアスは驚きの声を上げた。
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