12.1944 対日戦レポート
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12.1944 対日戦に関するレポート
以下のレポートは合同会議より統合参謀本部第三部へ依頼された今後の対日戦方針の概要である。
緒言
結論から言えば対日戦は硫黄島攻略後、沖縄本島へ上陸すべき、と判断する。
沖縄を日本より奪うことで生産の中心である日本本土と資源地帯である南方を分断することで、日本の継戦能力を奪うことが最善の作戦と言える。
戦況
フィリピンの戦いの敗北は我が方に甚大な損害を与えた。
幸いにして我が国の生産力は維持されており、短期間で損害を復旧できる上、戦線縮小により余剰兵力が生まれており、上陸兵力の確保に不安はない。
現状太平洋各地に展開する中野部隊のゲリラ攻撃により、多数の守備兵及び掃討部隊を太平洋各地に分散配置している状況でも上陸部隊を確保出来る見通しが立った。
しかし、油断できない状況であることに変わりは無い。
何故なら、マリアナ海戦をはじめ、我が軍の苦戦の要因となっている硫黄島と機動艦隊が依然として日本の手にあるためだ。
硫黄島を確保しなければマリアナの安全は保てず、再び攻撃されるだろう。
海軍の空母任務部隊も補給路も制限を受け圧迫されるため、早急に攻撃を行い硫黄島を早期占領する必要がある。
また機動艦隊はこれまで我が軍拠点であるハワイ、エスピリシスサット、ウォッゼ、マリアナ、ウルシーへと大打撃を与えてきた。
機動艦隊は広大な太平洋を長大な航続力と強大な打撃力を与える有力な戦力だ。
ミッドウェー、マリアナの損害にも拘わらず現状でも機動艦隊の空母は増強され、航空機生産も空爆の妨害はあるものの行われており、艦載機の補充も受けている。開発中の新型戦闘機F8Fの投入後も厳しい戦いが予想される。
そのため日本艦隊の捕捉、殲滅は困難であると結論できる。
故に機動艦隊を支える本土の生産力、継戦能力を破壊するべきである。
特に資源供給源になっている南方とのシーレーンを寸断させ日本を降伏させるのがベストである。
この条件を満たすためにはシーレーンの途上にある沖縄が作戦目標として最適の地である。
本土に近いが程良い広さ、飛行場を多数建設できるほど広く、攻略が長期化しない程広くない絶妙の大きさである。
失敗したフィリピンは上陸地点であるレイテまで作戦行動圏内に多くの島と多数の飛行場があり、これらの飛行場群より発進する日本軍の航空機による反撃を受けたことが失敗の要因の一つである。
これは台湾も同様であり、単一の島故に島の配置兵力の移動が可能であり、太平洋各地で未だ猛威を振る日本軍の中野部隊によるゲリラ戦が予想されるため、上陸作戦終了後も完全占領まで長期間大兵力を配置する事となる。
故にフィリピンと台湾への上陸は避けるべき、と強く進言する。
よって沖縄攻略が唯一の回答となる。
しかし、硫黄島が健在なため、沖縄攻略への最短距離となるマリアナ経由では、我が方の補給線の側面を日本軍に晒してしまう。
故に硫黄島を攻略後、側面を確保して沖縄に上陸するべきである。
そして占領後は陸軍航空隊を展開し周辺航路への船団襲撃を行う事によって日本のシーレーンを締め上げるべきである。
他の方法もあるが検討の結果、以下の理由により却下する。
本土空襲
アーノルド、ルメイ両将軍の主張する戦略爆撃は非効率である。これは対独戦における戦略爆撃の検証により、明らかになりつつあるヨーロッパ方面での戦略爆撃の検証で効率が著しく低いこと、爆撃が不正確であり、損害が大きく、爆撃に成功しても生産力、復旧力が高い場合は短期間で回復してしまうためである。また、工場を分散された場合はより効果が低い。
特に日本はここ数年本土ではなく、安価な労働力を求め朝鮮半島や満州国に生産拠点を移している。
本土空襲を行っても継戦能力を阻害する効果は大きくなく、投入される資源に見合った効果は見込めない。
以上のことから今以上の本土空襲は行うべきではない。
例え一瞬にして都市を破壊できたとしても同じである。
通商破壊
海洋国家である日本への攻撃として最適である。しかし我が方の潜水艦は開戦より日本軍によって多くが撃沈されている。日本軍は我々の知らない兵器を使用していると思われ有効な対応策がなければ無用な損害を出し続けることになる。よって通商破壊を続けるべきではない。
本土侵攻
最も直接的で効果的ながらも現状最も損害の大きい選択である。日本本土への出撃基地となる有力な航空基地がないため、支援が空母任務部隊に限られる。フィリピンの様に各島の日本軍航空基地から上陸部隊への攻撃が行われるため、損害が大きなる事が予想される。また面積が非常に大きく入り組んだ地形をしているため長期戦になる事が予想される。
以上の理由から硫黄島を占領しマリアナの防備を確保した後、沖縄を攻略し、シーレーンの寸断を行うべきと進言する。
その後は状況に応じて本土侵攻を含む作戦を策定すべきである。
作成者 統合参謀本部第三部 部長承認済み
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