第22話 戦利品
「兄ちゃん!」
「お兄さん!」
「やが……兄さん!」
俺の黒荊によって作られた檻が消滅したことで、解放された将司と美香ちゃんたちがやってきたようだ。清二は一瞬俺の名前を呼びそうになったが、般若面をしている意味を理解してやめたようだ。そういえば口止めしてなかったな。まあ別に佐竹の手下は全員隷属させるからバレても良いんだけど。
「すげえ! すげえよ兄ちゃん! たった一人でボスまでやっちまうなんて凄すぎる!」
清二に肩を借りてやってきた将司は、興奮した様子で俺を絶賛している。
「お兄さん怪我……大丈夫ですか?」
美香ちゃんが俺の腕や側頭部の火傷に気付き心配してくれた。
「ああ、さっき神酒を飲んだから大丈夫だ」
コートやズボンはボロボロだけど。参ったな、海音や母さんに見つからないように処分しないと。
「兄さんライガは……」
清二が駐車場の端でうつ伏せに倒れているライガを見ながら確認してきた。
「死んだよ。因果応報ってやつだ」
「ライガの奴が!?」
「そうですか……ありがとうございます」
俺の返答に清二は頭を下げ、将司と美香ちゃんは驚きの表情を浮かべながら倒れているライガを凝視していた。
「言ったろ? 仇は取ってやるって」
「兄ちゃん……ありがとう」
「お兄さん、私たちのためにありがとうございます」
「別にお前たちのためだけじゃない。俺は魔界に行くための従兵を得るために佐竹ファミリーを襲撃したんだ。将司たちの件はついでってやつだ」
「え? 兄ちゃんも仲間の仇を討つためじゃなかったのか?」
「違う、本当は魔界で戦うための従兵を仕入れるのが目的だったんだよ」
「そうだったのか、でも兄貴たちの仇を取ってもらえたのは変わらねえ、ありがとう兄ちゃん」
そう言って将司たちは頭を下げた。
俺は照れ臭くなって佐竹に立ち上がるように言い、将司たちには待っているよう伝えファミリーの蓄えがある場所まで案内させた。
佐竹にホテルの最上階にある佐竹夫妻の部屋に案内され、3つある部屋の内の一つに入るとそこには現金や絵画や彫刻などの調度品。そして宝石等貴金属が置かれていた。どうやらこの部屋は金庫代わりに使っているようだ。
俺はその辺にあったボストンバッグにまずは現金を詰め込んだ。そして次に宝石や貴金属類も全て回収した。これは孤児院からこれまで巻き上げた金と、亡くなった子供たちの賠償金だ。
佐竹はバッグに次々と現金と金目の物を詰める俺を見て肩を落としていたよ。多分演技だろうけどな。絵画や彫刻とかはかさばるから残してあるし、いつ軍の追手が来るかわからないのに財産を全て手元に置いておくわけがない。どこかに隠していると考えた方が自然だ。
ああ、俺も黒闇天から借りた金の分と、破れた洋服代を回収した。黒闇天にもっともらって家の借金返済にあてればよかろうと言われたけど、孤児院から回収したお金や、死んだ子供たちが稼いだお金が入ってると思うと貰う気になれなかった。それにこれから佐竹たちを使って魔界で稼げばいいかなって思ってさ。悪魔と戦いながら従兵たちに家探しさせて、8:2くらいの取り分にすればればそこそこ稼げるだろう。もちろん8は俺だ。悪党相手だと心が痛まなくていいな。
金目の物を回収した後は、魔界から集めた上等な武器防具を保管しているという部屋に案内してもらい、そこにあった魔槍と魔剣。そして日本軍の正式防具の『黒武者』という全身タイプのプロテクターを手に入れた。
これはインナータイプのプロテクターで、身体全体を魔法金属を編み込んだ特殊生地で覆っており、軽いうえに通気性が良く斬撃にも打撃にも強い。また、急所や各関節部分も魔法金属の鉄板で覆われており、神力を流すことで悪魔の使う魔法をある程度防ぐことができる。
ヘルムは無くあちこちに破れや穴があったが、魔界で死に仲間に回収されずそのまま魔人化やグール化した兵から剥ぎ取った装備にしては上等だと思う。他にもライガが装備していた魔法金属製のハーフプレイトメイルがあったが、黒武者より防御力は高いが動き難いし重かったのでやめた。同じように佐竹が装備していた魔獣の革鎧もあったが、赤とか緑とか色がアレだったし中位魔獣の革なら黒武者とそんなに防御力も変わらなさそうに見えたのでカッコ良さ重視で黒武者にした。黒武者はシルエットがいいんだよね。
そういう訳で回収した武器防具は全部黒闇天に預かってもらった。
なにげに黒闇天の出す黒い穴は便利だ。頼めば預かってくれるし、取り出すこともできる。俺もできないかと佐竹の運を使って何度か試したが、入れた物を取り出せなくなったりで失敗した。感覚的には第一階位の権能でできそうなんだけど、どうも入れた物を取り出す感覚がわからない。
黒闇天が言うには、もっと権能の扱いに慣れればいずれできるようになるとのことだったので頑張ってみようと思う。それでも誰か人が近くにいないと物をしまえないし取り出せないんだけど。しかしそうなると便利……なのかな?
こうして金品と装備を回収し終え、一階に戻ってバッグに詰めた現金や貴金属を将司たちに渡すと、これでチビたちに腹一杯ご飯を食べさせられるって大喜びしてた。
そんな将司たちを尻目に、俺は残った佐竹ファミリーの構成員23名に呪誓の権能を使い絶対服従を誓わせた。ちなみに構成員たちにはインポの呪いだ。呪いにかかったら一生解けないと脅したらみんな青ざめていたよ。本当は俺が呪誓を解除すれば解けるんだけど。
しかし身体能力の祝福を得ていたからか、思ったよりも多く従兵を手に入れることができた。とは言ってもこのうちの3分の1。駐車場にいて生き残った奴らは明日、間違いなく命に関わる不運が起こるだろうからすぐには使えないだろう。まあ魔界には10人くらい連れて行ければいい。神酒もあるし大丈夫だろう。
俺は全員を隷属させた後、俺の従兵となった構成員の中で最初に将司たちを囲んでいた者の生き残りへ明日朝一でトラックに食料を積み孤児院に向かうように命令した。正月だし子供たちには腹いっぱいになって欲しいしな。それと今後孤児院の子供達を守るようにとも厳命した。
そうしてひと通り指示をしたあと、乃里子から中級神酒をもらって念のため将司に飲ませ将司を背負い孤児院へ送り届けたのだった。
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