第48話再会

【再会】

 俺は勢いで「お揃いの時計もほしいです」そう言って、そのまま銀座のビル1つ全部時計屋さんに行くと、そこに・・・・・・



「あれ?裕子?久しぶり、いや~相変わらず綺麗だね~

 もう、あれから大変だったんだよ、急に君がいなくなって、ご実家に連絡したけどお父様もわからないって言われてね、そうしたら弁護士がやってきて、離婚??

 まあ僕も色々忙しかったし、裕子には申し訳ないと思っていたからね、それに別に離婚しても今までと同じようにホステスをやってもらえばって思っていたし、まあ弁護士がうるさいからとりあえず離婚届けにサインしたんだけどね。


 ほらナイトプールパーティーの時の君の水着姿がえらく好評で、あれからかなり多くの問合せがあったんだよ、一晩一緒に過ごしたいとか、2人で一緒に旅行に行きたいとか、要望の整理をするのが大変でね、なんとか君のスケジュールを組んでいたのに、急にいなくなっちゃうんだから、でもよかったよ、こうして会う事ができたんだから、ねえ、ちょっと話そうか」


 横で聞いていた俺はその内容にあまりにも腹立たしく、顔が険しくなっていく、でもそんな俺に対し、そこに俺が存在しないかのように無視。


 裕子さんは固まったまま、顔の表情がだんだん暗くなっていく。


 1人で一方的にしゃべくりまくって、そのまま裕子さんの腰に手を回してきたので、俺はあわててあいつの手を除けて、裕子さんとあいつの間に入って、にらみつけると

「君は?」はあ?初めて気づいたのか?

 俺を品定めするかのように、上から下までゆっくり見て

「あのね、そんな身なりでよく裕子と一緒にいられるね」

「は~っ?」

「あのね、人間、特に女性は持ち物のブランドとその金額でその人の価値が決まるんだよ、今持ってるバッグは一応ヒルメスのようだけど、裕子には最低でもパークンぐらいじゃないと釣り合わないんだよ」

 そう言いながら

「裕子、イヤリングは?ネックレスは?

 何その指輪、ちっちゃいダイヤがついているだけの安物なんかして、何度も言うけど、女性の価値は持ち物のブランド名と金額で決まるんだから、もっとちゃんとしたものを身に付けなきゃダメじゃない」

 そう言って、耳と首を触ろうとしたので、思いっきり裕子さんを抱き寄せて

「裕子さんは、あなたと離婚して、とっくの昔に他人になったはずですよね、勝手に触らないでください」


 固まってなすがままになっている裕子さんは何も言わずにいるので、裕子さんを抱きながら、あいつに向かって

「いいかげんにしてください」代わり言ったけど、

 話がかみ合わない、あたかも自分が言っていることが正しいかのように。


「あのね、君、わかってるかな~、裕子はそこらへんのコンパニオンやホステスとはレベルが違うんだよ、彼女を一晩貸すだけで何億もの商談がまとまるはずだったんだよ、それがぜーんぶポシャって大変だったんだから、それを君みたいなぱっとしない男性にとやかく言われる筋合いはないんだ、わかるかな?」


 その上から目線の言葉使いと態度はどこから生まれるんだ?

(昔どこかのサイトの感想欄で見かけた奴らと一緒だ)

 こいつ、以前に裕子さんが言っていた以上に屑だ。

「一晩貸す、ってどういうことですか!」

「どういうことって、言葉の通り、一晩貸し出すんだよ」

「あなたという夫がいながら、そういうことですか」

「そういうことだよ、おかしい? 夫公認で他の男性と一晩楽しめて、旅行にも行けて、そして僕は商談がうまく行く、 WINWINの関係、違う? 」

 もうこんな奴に何を言っても無駄、そう思って

「裕子さん、行きましょう、こいつ、何を言ってもダメみたいです」

 そう言って2人で、あいつからは離れようとしたらしたら

 あいつが裕子さんの腕をつかんで

「おいおい、何勝手に裕子を連れて行こうとするんだよ、まだ話は終わってないんだ、君も困った人だね~」

 こいつ本当にダメだ、なんか自分が世界の中心にいるくらい完全に頭がお花畑だ、

 裕子さんはずーっとうつむいたままだし、きっと昔のいや~な思い出がよみがえって・・・俺が助けなきゃ。

「勝手?あなたはもう他人なんですよ、裕子さんが何をしようと、裕子さんの自由です、あなたが1人で勝手に話しているだけですよ、あなたは元夫でもう何年も前に離婚しているんですよ。

 あなたもそれなりの立場の人間なら、自分が何を言ってるかわかりますよね、これ以上付きまとうのだったら私達はこのまま警察署に行って被害届をだしますよ。

 もしそれが不服なら弁護士なりなんなり呼んでください」


「はあ?君ね~、この僕がわざわざ時間をとって、裕子に話しているんだよ、わかってる?」


「分かるわけないじゃないですか、話になりません、あなたには何を言っても無駄のようですね」


 そう言って、“頭がお花畑“がギャアギャア騒いでいるのを無視して、固まって動けなくなっている裕子さんを抱きかかえるようにしてタクシーに乗って裕子さんのマンションに帰る。


 今一番大事なことは、裕子さんを慰めていつもの裕子さんを取り戻すこと、そしてあいつから裕子さんを守ること。



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