第30話裕子さんの過去2
【裕子さんの過去2】
「2年ほどたって、取引先の社長さんがね、若くて事業を起こした人なんだけど、私を気に入ったみたいで、父もその人をえらく気に入って、若いのにすごい、 とか ベタぼめで、父とその社長=元夫が意気投合して、2人で盛り上がって、勝手にどんどん結婚話を進めちゃって、私もこんなバツイチでももらってくれるなら、って思って、それにデートの時もとても紳士的だったし結婚してからだけど好きになれそうと思って結婚したの。
でもこれが最悪だった。
信じられない事があってね」
裕子さんは大きく深呼吸をして、覚悟したような、そんな感じに見えた。
「その彼は一代で会社を立ち上げたってくらいだから、生活が派手で、タワーマンションのペントハウスに住んでいて、かなり広くて、リビング続きのホームパーティをするスペースがあって、そこで頻繁にパーティーを開いていたの、私は奥さんだからホステスとして、夫と一緒に接待してね、夫が私を皆に紹介して回って、綺麗な奥さんだって、いろいろ褒められて、夫も得意げで、夫の株があがるんだからと思って一生懸命接待したのね……
でもね、それからひどい事が起きたの」
しばらく沈黙が続いて、先ほどより低い声に
「ある時、パーティーが終わって、後片付けのための業者が次の日にくるからそのままで良いって、夫は次の日の朝一に地方で仕事があるからって、これから出かけるって言って、そのまま出かけたの。
私は、目立つところだけ片付けてリビングに戻ろうとしたら、お客が1人残っていたの、いつも来る人で、結構夫とは親しくしていた人だから、気にしなかったんだけど、コーヒーが飲みたいっていうから、コーヒーをいれようとキッチンに行ったら、後ろから抱き着かれて……
危なかった、なんとか振り切って、自分の部屋に入って鍵をかけたけどスマホを忘れたから、そのままじーっとしてたのそのまま朝まで、それから、そーっと部屋を出て、見まわしたら誰もいなかった。その男はあきらめて帰ったみたい。
スマホを取ってすぐに夫に電話したんだけど、出ないの、何十回も電話してやっと出たんだけど、逆に出張先に電話するなって叱られて。
お昼に旦那から電話がきたから、その話をしたらね、『おしかった、うまくいけばこっちの条件で仕事が進められたのに』だって、最低でしょ。
それから、パーティーがあるごとにその男は私にしつこく付きまとうし、夫はそれを見てニヤニヤ笑うだけ、それ以上に今まで普通に接していた他のゲストの男性もねっとりまとわりつくようになってね、
2人きりで食事とか、2人で旅行に行こうなんて誘ってきてね……
どうも、夫もその男も、私を襲おうとした事を他の人にも話したみたいで、私が他の男達とそういう事になっても良いって思うのかな?異常でしょ?
耐えられなくなってその家を出たんだけど、そうしたらまた父がね・・・わかるでしょ。
あとでわかったんだけど、父は元夫にかなりの金額の出資をしてもらっていて、私はその対価だったみたい。
最低の夫と最低の父親よね。
叔母を頼って家を出て、そうしたら橘専務が弁護士を付けてくれて離婚できたけど、当然父が激怒してね、だからもう実家には一切縁を切ったわけ」
裕子さんが話し終わり、時計を見ると夜の1時間くらいたっていた。
DVの話とか、いかがわしい対象?にされた話などは、本当はもっと醜くてひどい事もあったのだろうけど、おそらく俺を気にしてくれたんだろう、さらっと流してくれた。
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