第20話クリスマスが終われば今度は年末年始

【クリスマスが終われば今度は年末年始】


クリスマスが終わるとさっそく年末年始。


年末年始に出勤しての仕事は、本来、俺の課でも裕子さんの課の仕事でもない。


通常は営業経理課の担当業務で財務課の俺も、経理課の裕子さんも普段は一切関わっていない。


ただ、大きなくくりで言えば経理本部内ではあるから、細かい事はいいんじゃない、と、部長承認のもと課長同士の間でそういう事になったらしい。


俺の勤めている会社は簡単に言えば全国に飲食店を多店舗展開している会社だから、大晦日も正月も営業しており、俺も裕子さんも当番で売り上げの管理をしなければならない。


普段は営業経理部の人達が交代で休みをとっているが、年末年始なのでいつもより長期でほぼ皆が休み、家族持ちや地方出身者、彼氏彼女がいる連中は大晦日と正月3が日を休み、俺みたいな1人者や正月と関係ない人がこの5日間出勤し、その後に休みを取る。


30日から3日までの5日間は俺を含め数人だけのとても静かな職場になる。


割り切れば過ごしやすいし、この期間は、店舗の売上(運営情報)管理と言ってもデータの管理のみだから暇、そういうふうに思えば気楽でゆっくり過ごせる。


全国の店舗は営業中だから、随時POSデータがちゃんとクラウドを使って、分析ツールを通したデータが、経営組織メンバーのアイパッドに流れるようになっているかを1時間ごとにチェックするだけ。


エラーを起こした場合、データセンターに連絡し対応するくらいだし、金融機関も他の業者もほとんど休みだから、他の仕事もする必要がない、電話もかかってこない。

なにもなければ10分働いて50分休憩の楽園。


実際に経営組織メンバーは、しっかり正月休みをとって、そんなのは1月3日の夕方からしか見ないのはわかっているが、3日時点でデータが飛んでいなかったら5日からの休みどころではなくなるし、社長がどなりこんできてパワハラが始まる。


だから、一応定期的にチェックしなければならないけど、それ以外は暇なので、ずーっと裕子さんと雑談できる楽しみがある。


趣味の話とか、音楽や映画・・・・男女の好みとか、学生時代の事とか、本当に雑談だけど、裕子さんのそういう所がいっぱい聞けるし、少しだけど裕子さんにアピールもできる。


裕子さんも、俺との雑談につきあってくれるし、こんな幸せな時間・・・・


お昼になったので、裕子さんを誘ってみたら、裕子さんが弁当を作ってきたらしく、それも2人分、おにぎりとおかず・・・


「高谷君、おにぎりだけど食べる?」


「はい、よろこんで」


「おかずもあるから」


「はい、柴田さんの手作りですか?」


「そうよ、こんなの買って詰めてもしょうがないでしょ、どうぞ」


「うわっ、すごくおいしいです。

柴田さんの料理っていつも思うんですけど、ほんとおいしいですよね」


「そりゃあ ×2ですもの、主婦を2人分も経験してるからね」


「いえ、そういう事じゃなくて・・・・・・」


失敗した、アピールのつもりが ×2 の話になってしまって後悔した。

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