第13話夏休み―苦しい
【夏休み―苦しい】
8月、うちの会社は決まった夏季休暇はなく、それぞれの課で調整して3日休みを取る。
家族持ち、1人暮らしで実家に帰る人、そういった人たちが土日と3日をあわせて8月の10日あたりから17日に休んで、俺はいつものように8月18日以降に休む。
佐々木係長が調整をしていて、いつものように俺は・・・・・・またこの時期、裕子さんと一緒と思っていたら、裕子さんが12日から5日間休んだ、皆と同じく。
俺は1人ぼっち。
17日からぞろぞろと出社してくる、俺は18日から休みなんだけど、裕子さんが皆にお土産と言って軽井沢のお菓子を配っていた
「高谷君、君にもおみやげ」そう言って俺だけお菓子のほかにジャムを
「軽井沢に行ってきたんですか?」
「うん、久しぶりの軽井沢だったけど、楽しかったよ」
「友達とですか?」
「ううん」
「えっ、違うんですか?」
「うん、知り合いがね、軽井沢に別荘を持ってて、そこに行ってきたの」
「そうなんですか」
「うん、涼しくて気持ちよかったわよ」
「そうですか、よかったですね」
「ほんとよかったわ、リフレッシュできたし、また今日から高谷君と残業、よろしくね」
「あっ、俺、休み、明日からです」
「そっか、それじゃあ休み明けからよろしくね」
「はい」
軽井沢、別荘、友達じゃないのか……
俺はそのことが気になって、お土産にもらったお菓子を持って佐々木係長の所に
「柴田さんのお土産食べました?」
「おお」
「軽井沢だそうですね」
「ああ、橘専務の別荘だろうな」
「えっ?でも橘専務って奥さんとかいないんですか?」
「どうせ、自分は仕事とか言って、奥さんは実家に帰らせて2人っきりで別荘で楽しんだんじゃないの?」
「そうですか」
「ああ、皆知ってるぞ」
奥さんに隠れて2人で別荘で……スッキリ?リフレッシュ?
なんで?どうして?奥さんのいる、しかも父親くらい歳上の……なぜ普通の男性じゃないんだ?
×2で懲りた?それでもそういう人はダメだろ、なんで?
あんな良い人が、俺にあんなに優しくしてくれるのに、その先にあるのは不幸しか見えないのに。
1日中モヤモヤしたまま夜9時、いつもならもう一仕事だけれど、皆は休み明けで俺は明日からなので、そういう日は皆俺にやさしい。
「それじゃあ、俺は明日から休みなので、今日はこれで帰ります」
「そう、明日から休みだものね、ゆっくり休養してね」
「はい、ありがとうございます、失礼します」
結局、休みはなにもしないで部屋でゴロゴロ、頭の中は裕子さんが橘専務と軽井沢の別荘で……
おなかがすいたらコンビニ、あっという間に休みは終わって、またいつもの残業、社畜生活。
裕子さんとの関係も変わらず、時々泊めてもらってビール飲みながら雑談して、朝、裕子さんの作ってくれた朝食を食べて、その時は幸せな気分に。
頭の隅に橘専務の事がへばりついているけれど
ようやく夏も終わり、残暑は続くけど、少しづつ涼しくなって、バーベキューとか楽しいだろうな、なんて思いながら、現実は……
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