第30話 明珠女学館の前まで行ってみる
スマホで地図を調べると、
陸橋はすぐにわかった。
そこに上がろうとすると、向こうから明るい青色の制服を着た女子たちが下りて来る。
一人で来たり、何人かでまとまって来たりだ。勤め先の瑞城の制服は「明るい紺」ということになっているけれど、この子たちの青色はもっと色が明るい。
この子たちがスカートは、ジャケットと同じ色と、グレーと、二種類あった。
これはすぐに区別がついた。グレーを着ているほうが歳が下だから、中学校がグレー、高校がジャケットとお揃いの色なのだろう。
せっかく一貫なのに、こんなことをすると中学校から高校に上がるときに服を買い換えないといけない。
どうしてそんな仕組みにするのだろう?
もっとも、今日からの勤め先の瑞城は、中学校と高校で、色はいっしょでもぜんぜんデザインが違う。
高校生になるときに制服を買い換えなければいけない。だったら別の学校に行ってもいっしょだと思って「成績のいい子はだいたい逃げてしまう」のか?
それとも、逃げてしまう子は逃げてしまい、新しい子もたくさん入ってくるから、制服も別でいいことにしたのか?
よくわからない。
その子たちに混じって来る、
いや。
「子」と言ってはいけないのか。
半分くらいは
じっさい、すれ違って「あ、いいおねえさんだな」と思う、大人の雰囲気をにじませた人たちもいた。
その「分校」、東京明珠女子実業専門学校の子たちもおしゃれだった。でも、この「本校」の一部の子のような「隙のなさ」感はなかった。とりあえず、かわいい服、おしゃれなアイテムを、コーディネートも考えずに可能なところまで身につけてみました、という感じだった。コーディネートしても、女性誌のまねとか、ネットのまねとかだ。
自分もそうだったけど。
それを思うと、心のなかがくすぐったい。
陸橋で線路を渡り、ゆるい上り坂を上っていく。
地図で見ると線路を渡ってすぐのところが明珠女学館だった。でも、門はもっと坂を上がったところにあるらしい。
景子が坂を上っているあいだも、中高生がまとまって来たり、大学生がまとまって来たり、流れが途切れたりする。
その、明珠女生の流れが途切れたところに、向こうから違う制服の子が二人連れで来た。
あれ?
それは、景子の今日からの勤め先、
どうして明珠女のほうから来るの?
方向、逆じゃない?
そう思って見ていると、その二人は、景子のいるところの少し先にある、茶色っぽい
ビルの出口からも何人かの女子が出てきて
「おそーい!」
などと言っている。この子たちも瑞城女子高校の制服を着ている。
ということは、ここって、瑞城女子高校の何か?
ここにも教室があるとか、寮とか、生徒会施設とか?
その前を通り過ぎる。その隣には、いまの茶色よりももっとくすんだ感じの、いかにも「年代物!」という建物があった。
そこには、とてもきまじめな顔で、きまじめに鞄を提げた明珠女の生徒が吸い寄せられていき、玄関からなかへとすーっと姿を消した。
もしジャケットと色が同じスカートが高校の制服なのなら、明珠女の高校生らしい。
こっちは明珠女の寮か何か?
「あれっ?!」
瑞城女子高校の寮か何かと、明珠女の寮か何かとが隣り合って建ってるの?
しかも、その建物が建ったのはずいぶん前らしい。明珠女の建物はみるからに古ぼけていたし、瑞城の建物のほうも、明珠女の建物ほど古くはないけど、新しくも見えない。
でも、この二つの建物ができた年代は、その「最近は」の範囲を超えている。
「最近」より前は仲が悪かったはずだ。
どういうこと?
仲の悪い高校の「寮か何か」が隣どうしって?
明珠女の子が吸い込まれていった建物の少し向こう、道の反対側が、明珠女の門らしい。
ここから出て来るのは制服の子たちばかりだ。スカートがグレーの子も青の子も出て来るので、中学と高校の門なのだろう。大人っぽい子たちや女のひとたちは坂の上から歩いてくるから、大学の門はもっと先にあるらしい。
景子はその中学校と高校の出口のところに立った。
いくら東京の「分校」の卒業生だといっても、いまこの学校に入れてくれはしないだろう。
まして、いまは下校の時間帯だ。「学校を見学に来ました」と言うのも不自然だ。
景子はそこから引き返すことにした。
いまから戻れば、あの
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