第10話 夜更かし
「急に電話で“夜更かしだ”って、平日深夜に迷惑な――」
って……あれ、佑菜?
駅前に、佇む格好。
藤色ジャンパー、その下は。衣替えした、
「お、有佐ぁ! 待ってたよ〜!」
「佑菜……もう、わざわざ私の地元まで来てっ。電車賃とか掛かるのに」
「フッ、
「何を偉そうに」
「そう言う有佐は?」
「……貰ってル」
「ほほ〜、ここが有佐の地元となぁ」
って、キョロキョロと。
駅前から連なる商店街。佑菜、初めての道歩いて――
「……普通だね」
「そりゃそうだ」
何を期待して?
「でも有佐とその地元歩くの、なんか良い。深夜のテンション?」
「まだ0時を過ぎたばっかだけどね」
まぁでも、曲がりなりにも“女子高生”。
がっつし補導対象、だよねぇ。
一応、ママには連絡しとこ。
「ところで有佐、その服装。……
「……そう?」
桜色のパーカーに、下は黒っぽいジャージにサンダル。
……普通じゃない?
「みんなもこんな感じでしょ。そういう佑菜だって半分、制服みたいな格好じゃん」
「まー、そうなんですけどもぉ……。あ、お腹空いてきた」
「何食べたい?」
「牛丼」
「マジか」
――牛丼チェーン店って、本当に深夜やってんだ……。
「それにしても、あたし達は」
って。佑菜、お冷を前にして――
「どうして学食じゃないのに、こう端の席ばっか座るんでしょう……!?」
確かに。店内、ガラ空きなのに。
今日も今日とて、
向かい合うのは、私達。
「
「典型的な日本人なんじゃない?」
「……そういう感じ? あ、もう有佐はメニュー決まった?」
「私、ミニ牛丼単品。佑菜は?」
「あたし、牛丼の並盛り。トッピングでチーズの追加」
は?
「え、佑菜、ガッツリ? 深夜に食べると、太らない?」
「? あたし、太んないけど」
……チート主人公か?
「ん〜っ! 食欲満たされたぁ〜!」
「佑菜、ペロッと完食したね……」
てか私より早かったよね。
「と、お店を出た訳なんですけども……有佐、行きたい所とかある?」
「いや別に。てかもうやってないし」
「あ、それもそっか」
「大体、もう1時前だし。そろそろ帰らな――っ?」
ぽつ。
ぁ、落ちて来た。
まぁ、6月だし。雨ぐらい――って!?
ぽたぽたぽたって、ちょっ、とヤバい……?
「うわ有佐っ、降って来たかもっ!?」
「とりあえず、コンビニに避難でっ……!」
――深夜1時半。
コンビニで夜間、灯りを借りて。駐車場を目の前にして。
しゃがみ込むって、
……私、デビュー。
それにしても雨、パラパラと。
そのまま帰ると、風邪引きそう。
まぁ
でもまだ話、あるんでしょ?
「ね、佑菜?」
「え?」って私の隣りにしゃがむ、駄肉の付かない顔に向かって――
「家、飛び出して来たんでしょ」
「ぇ、いや、ははは……分かる?」
まぁ、推測だけど、
「急に夜更かしとか、変じゃん。それに私と違ってさ、家に連絡しようとか、そろそろ帰ろうとか言わないし。どうせ学校から帰ってすぐ、親と喧嘩とかしたんでしょ。制服のまま、
なんて、私の推理。
佑菜、目をぱちくりさせて――
「今日からホームズと呼ばせて下さい」
「やめて、絶対。名前負けする」
で、
「佑菜、喧嘩の原因は?」
「え……っと、洗濯物」
は?
って佑菜、しんみりと――
「あたしの上着、お母さんが。勝手に洗濯しちゃってさぁ。ポケットにあったイヤホンが、濡れて
あぁ、まぁ、それは――
「でも、うん。あたしが悪いの」
え、佑菜?
「“今度、居間に脱ぎ散らかしたら、勝手に洗濯するからね”って、“ポケットの中は自己責任”って、前々から言われてたのに。あたしが一方的に怒って……」
「――偉いよ」
「へっ、有佐?」
こっちの顔を覗き込む、まだ揺らいでる友達へ。
「自分で“自分が悪い”って、認めるのは大変だから。私も少し前だけど、パパと口聞いてなかった」
「えっ? 有佐、意外っ」
「ふふっ、意外でしょ。私が悪かったんだけど、それ謝るのに1週間。けど佑菜、違うんでしょ?」
「――うん。もう帰らなきゃ」
――あ、タクシー来た。
佑菜、後ろに乗り込んで、
「じゃあ有佐、もう行くねっ! 急に呼び出して、ごめんね。それと――ありがとっ」
「こっちこそ、ありがとね。わざわざ私を頼ってくれて、そこは本当に、嬉しかったっ」
「……また誘うねっ」
「えー、
にいっ、て佑菜。ううん、私も。
これで一件落着、かな?
さて、私も帰ろっ。
丁度、通り雨も止んで――
「有佐っ!」
? 佑菜?
タクシーの、後ろ窓開けて――
「ごめん、タクシー代貸しテ……。1000円」
「…………」
#女子高生、他愛も無い。 小林真紘 @Lim-108
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