第4話 海老リング
「見てこれ有佐、
「え」
佑菜の指に――海老フライ。
左中指に、海老フライ。
……2cmぐらいの。
「……佑菜、どうしたのそれ」
「ガチャガチャで当てた。いいでしょー」
「いや別に」
「えー! ほら、よーく見て有佐っ。めっちゃリアルに出来てない? しかも
……2限終わり、休憩時間。羽を伸ばす、教室で。
右側の席の佑菜から、海老フライの玩具について。
私は、プレゼンされている。
この上なく、謎の時間。
「あー、佑菜。もういい? 終わった?」
「うっわー、何その煙たそうな目っ。あ、
「見ないよ……。てか佑菜、それどうするの?」
「どうするって、着けてるけど」
え。
「その海老フライ――ぷっ、着けてるの?」
ちょっ、笑っちゃったじゃん。
「というより、朝からずっと着けてるけど」
「へー。……ん?」
え、佑菜サン。
朝からずっと、着けてるの?
「え、きょ、今日ずっと?」
「うん、自宅から。あー、有佐も着けたくなったぁ〜?」
「それは無い。てかよくバレてないね、佑菜……。
「ふっふっふ。コツは堂々としてる事だよ? “え、あたし、海老フライなんて食べてませんけど?”、って感じで」
「食べてはないでしょ」
てか佑菜のドヤ顔。バレてほしい〜。
「――なら佑菜。バレるかどうか、賭けてみない?」
「えー、
「丁か半。簡単な勝負」
そう、至って
「佑菜は今日1日中、その海老フライを着ける事。帰りのホームルームを終えて、誰にもバレずに正門を出たら、それで勝負は佑菜の勝利。途中で誰かに指摘されたら、その時点で私の勝ち」
「ほ〜、臨む所じゃんっ。じゃあ負けた方は明日の学食、相手に海老フライ弁当、奢りねっ」
「了解。……そこも海老フライ?」
――3時限目も終わり。
さて、佑菜の海老フライは――って、あ!?
右手、
「ちょっ、佑菜、ズルくない!?」
「隠しちゃダメって言わなかったし〜」
「ぅ……じゃあ、今日1日。右手だけで過ごすつもり?」
「まぁ1日だけだし? それに授業中とかは、ほらっ」
って、指の海老を。
「って、それもズルっ!?」
「ズルくなーいっ。有佐の
ぐっ、小癪っ……!
悪知恵ばっかり働かせてぇ……!
佑菜、またもドヤ顔で――
「あっはっは。もう既に、勝負あったね
「
「授業で
くっ、ナメ切ってた。
佑菜って、もうちょっと――隙だらけだと、思ってたのにッ……!
けれどまだ、勝負は序盤。
最後には――笑ってみせるっ!
――……15時、40分。
ぅ、何の確変も無しに。
もうこんな、帰宅時間……。
掃除の時間も終わっちゃったし。後は、もう――
「フッ、有佐ちゃん」
っ、この声――藤沢佑菜っ!
「ゴミ捨てもした、宿題も持った。後はお茶でも飲みながら、部屋でアニメを観るように。悠然と門を、
「ぅ、ぐっ……!」
もうダメだ。
私の敗北――ん?
「あれ、佑菜、左手の指――海老フライは?」
「え? あれっ、海老ちゃん無い? 海老フライだけ、取れちゃったぁ!?」
佑菜の指に、金色の。
と、いう事は――
「つまりこれって、無効試合? って、」
佑菜、ゴルフの芝読むみたく。なんか真剣に、探してる。
掃除用具入れの中まで。ガサゴソすっごい、探してる。
……私の話、聞いてナイ。
「佑菜、
「んー、まぁ。だってアレ、有佐とお
って、こっちにお尻を向けなが――え?
「佑菜、お揃いって?」
「? 言ってなかったっけ? 海老フライ、ダブっちゃって。でも有佐に片方あげればさ、2人でお揃いになるじゃん? だから、お揃いのつもりだったんだけど〜……」
ぇ、ええっ……!?
「ちょっ――佑菜、どこまで探した? 私も見付かるまで探すっ」
「え!? あ、有佐様ぁ〜!」
だって。
“お揃い”とか言われたら、探さない訳には――あぁ、もうっ!?
「ん? おーい、そこの2人」
っ、女性の声?
この声は、担任の――
「藤沢、櫻庭、何してる? もうお前達が最後だぞ」
「先生、あの、佑菜が……揚げ物を」
「は?」
「そ、そうなんですよぉ! あたしが、その、海老フライを〜」
「…………」
ヤバい、我ながら意味不明。
「……これか?」
! 先生、それ!
佑菜の無くした、海老フライっ!
「さっき廊下で拾ったぞ」
「「せ、先生〜っ!!」」
「え、何? こんなん探してたの? 今のJKよく分からんわあ……」
まぁ、とにかく。
海老フライ、カムバック!
「はぁ……よかったね、佑菜っ」
「うんっ! あ、先生にはお礼に――この牡蠣フライを、差し上げますっ!」
「ん? それ指環なの? じゃあ没収。海老フライも」
「あっ」
バカぁ――――。
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