縄文人は狸やアナグマ、いわゆるムジナも結構食べていた
さて冬になると植物系の食料はほぼ取れなくなる。
まあ、ゴボウとかカブ、ネギなんかは焼き畑で一応取れるけどな。
なので狩猟が中心になるのだが、メインは鹿と猪、それに鴨などの水鳥が多いのだが、狸やアナグマも結構食べる。
狸は犬の仲間では在るが、臆病で道路なんかで車のヘッドライトを見ると身をすくませてしまうため車に轢かれることがとても多い。
しかし性格は臆病が故に警戒心が強く、意外と凶暴なので基本人間にはなつかない。
その割にはタヌキは人家近くでも普通に見かけられるけどな。
姿形はアナグマに似てるがタヌキは犬の仲間だが、アナグマはイタチの仲間であるので全然別の種類である。
狸は雑食性で基本なんでも食べる、なので焼き畑の作物やゴミ捨て場のゴミを食いに来たりもする。
春や夏の狸は小動物を食べているので肉は基本獣臭くてまずい、しかし秋から冬のはじめにかけては樹の実などの植物性の食べ物を食べるのでそこそこ美味しい。
姿形が似ていてムジナで一括りにされるニホンアナグマは癖がなくて美味いけどな。
またタヌキやアナグマが行う狸寝入りは、擬死行動であるが、これは無理に抵抗しないほうが、襲われた時に相手が油断するためにその間に逃げられるからではないかと言う話だ。
だが、人間相手だとむしろ逆効果だったりするんだけどな。
ちなみに鹿や猪のほうが狩猟のメインなのは繁殖力の差だな。
鹿の繁殖力というのはものすごいので多少狩ってもそうそう絶滅するようなことはない。
しかし、食肉目の動物の繁殖力は鹿や猪に比べると低い。
なので、あんまり優先して狙うことはないんだ。
とは言え、焼き畑の作物を食ってるやつが居たら躊躇なく仕留めるけどな。
”わんわん”
というわけでワンコがやってきたので、弓矢を持って焼き畑の見回りをしようと向かったら、畑で狸がカブの葉っぱをむしゃむしゃ食っていたので、弓で仕留めた。
人間に弓で狙われてるときには狸寝入りは無駄だって。
「かわいそうだけど、運が悪いと思って諦めてくれな」
仕留めた狸は早速川に持っていって血抜きしつつ、体を冷やして臭くならないように処理していく。
そしてアナグマと違って冬眠をしない初冬の狸は脂肪を蓄えてまるまる太っているので、縄文の獣としては珍しく柔らかい脂肪も食える。
「さて、さばいてみますかね」
鹿や猪とおなじように内臓を傷つけないように、腹からさばいて毛皮を剥ぐと、分厚い皮下脂肪に包まれている肉が見える。
内臓の膀胱や胆嚢、大腸などはは絶対に傷つけないようにしながら、胃をさばいてみてみれば木の実類がほとんどでネズミなどの動物の死体などは一切入っていない。
まあ内臓は犬のごちそうかつ、植物成分の補給のためにも大事なのでなので犬たちに分けるけどな。
「これならうまく食えそうだな」
というわけで今日は狸の焼肉とたぬき汁だ。
頭と手足を落とし、たっぷり脂が乗った肉を焼くといい匂いがしてくる。
双子が目を輝かせてみてる。
「おいしそー」
「おいしそー」
おれはそれに答えてやる。
「おう、うまいからちょっと待ってろな」
「まつー」
「まつー」
しかし、子供は脂とかの消化能力はあんまり高くないので、なるべく赤身を食わせんとな。
「ほれ焼けたぞ」
軽く塩を振って焼けた肉を双子に渡す。
「わーい」
「わーい」
ちゃんと手を洗ってから肉を掴んで食べる双子たち。
ハムっと口にしてもぐもぐごっくんと食べた。
「うまー」
「うまー」
俺も食ってみた。
「おお、なかなかいけるな」
確かに獣の匂いはするが、それはこの時代の他の鹿や猪にも在るものだ。
しかし、スーパーで買った安いアメリカ牛の牛肉などよりは全然臭くないと思う。
そしてついている脂がフワッとやわらかくほんのり甘い。
イアンパヌもニコニコしながら食べてる。
「美味しいわね、これ」
上の子供達もニコニコしながら食べてるな。
スネ肉やもも肉、ハラミ肉は骨やカブ、ゴボウ、ネギなんかと一緒にじっくり煮込む。
勿論アク取りはこまめに行うぞ。
「よし、こっちもいい感じだな」
まずは双子に椀にとってやりふーふーして冷ました後渡す。
「とーしゃ、あいがとー」
「とーしゃ、あいがとー」
更にフーフーした後双子は石匙ですくって食べる。
「うまー」
「うまー」
俺も食ってみる。
「ああ、なんとも言えない味だな。
悪くない」
「そうね、臭みもなくて美味しいわよね」
こうして今日も家族でのんびり炉を囲んでの食事が出来たことをカムイに感謝しよう。
狸も美味しく食えるかどうかは季節次第ってことさ。
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