一面雪景色に何日も包まれるのは関東民には辛い
さて、ウパシチリのお告げ通り雪はしんしんと降り積もり続けて辺り一面を白く染めている。
雪が降り始めた1日目は降り続ける雪の物珍しさに、子どもたちが雪上で雪像を作ったり、犬とともに駆け回ったりしていたが、さすがに三日三晩もの間続くと、雪が深くなってしまい遊びまわるなどということはできなくなってしまった。
ちなみに雪玉をぶつけ合う雪合戦はこの時代は無いぜ。
まあ、犬は寒さにも雪にも強いから、雪の上を駆け回ってウサギなどを狩ってきたりもしているようだが、人間は家にこもっておとなしくしているくらいしか無い。
しかし、家の屋根が雪の重みでミシミシ嫌な音を立て始めたので、俺達は、家の屋根の雪下ろしをすることにした。
「おーしおろすぞー、巻き込まれないように注意しろよー」
「はーい」
雪かき道具、スコップなどはないので、全身毛皮の耐寒装備を身につけて、手で雪を押したりなんだりして屋根から落とし、屋根の下に落ちた雪は、イアンパヌたちが雪の上に登って、鍬で掘って家から離すようにしている。
しかしまあ、雪というのは氷の塊だから重い。
「しっかし、思っていた以上に重労働だな……」
関東では三日三晩雪が降り続くなどということは珍しい。
しかし、甲信や北陸、東北などは冬は毎年こんな感じなのだろう。
まあ、雪が落ちやすいように屋根の角度を急にしたりしたりもしてるかもしれないけど。
「いや、しかしイアンパヌのお告げがなかったら大変だったな」
「ええ、そうね、薪も食べ物も十分あるからゆっくり家の中で過ごせるけど
なかったら大変だったわ」
「今頃大変なことになってる集落もあるんだろうなぁ」
縄文時代の竪穴式住居の炉は暖房と換気と調理を兼任しているので、一年中常に火をつけっぱなしにしている。
半地下である竪穴式住居では夏は湿気を払うために、冬は気温をあげるために炉の火が必要だからな。
その炉の火の燃料である薪が切れたら、大変だ。
関東では冬でも薪がなくなりそうになったら、雑木林に入ったり、村の周りに植えてるクリを切ったりすればいいが、雪が深い地域では、専用に薪を貯めるための建物とかもあるんだろうな。
しかし、関東の集落にはないから、薪を集めていない集落では炉の火が消えてる場所も出ているかもしれない。
俺にできるのは早く雪がやんでくれるように祈ることだけだがな。
「はあ、ちょっと休憩にするぜ」
「ええ、そうしましょう」
とりあえず家の入口が雪で埋まってしまわないように、そのあたりは優先して雪かきも行った。
家が潰れたときにせめて逃げ出せるようにしないとな。
周りに経っている家の人間も同じようなことをしている。
人間考えることは同じなんだな。
まあ、雪を下ろしたら家の中でゆっくり寝ることにしよう。
鴨の羽を入れた麻の袋の布団もどきのおかげも有って、双子も今のところは大事はない。
こんな時に熱でもだしたら最悪だもんな。
たまには雪景色もいいもんだと言いたいところだが、一面の雪景色に何日も包まれるのは関東民には辛いぜ、なんせ慣れてないからな。
まあ、雪で道路が渋滞していても、電車が止まったり遅れていたりしても勤め先に出勤しないといけないとかがないだけいいと考えるべきかもしれないがね。
落ち着いたら鹿の骨をアクを取りながらじっくり煮込んでだしを取った鹿の骨のスープで、鹿肉を煮込んで食べる。
川まで水を汲みに行くことはできないので、そこら辺に降り積もっている雪を土器にいれて火にかけることで水を得ているが、まあこの時代の雪ならカラダに悪い事もないと思う。
「ふう、ふう、ほれくえ」
「あい、とーしゃんありがとでし」
息子に吹いて冷ました煮えた骨付き肉を石皿にとって渡すと、息子はそれはうまそうに食べる。
「うまーでし」
「おう良かったな」
イアンパヌは娘と仲良く食べている。
鹿の肉も肋骨付胸肉(スペアリブ)はとてもうまいのだ。
今回は子鹿やメスの鹿も狩っちまったが、その分可能な限り食べられるところは食べるぜ。
雪のお陰で雪に埋めておけば腐らないしな。
腸とかの内臓は人間は食わないが、犬が大好物だし、腸の中の消化されきってない草や樹皮は犬にとって大事な植物性の食べ物だから、そのまま食わせてやる。
”わんわん”
まあ、犬にとっても深い雪の中を狩りをするより、人間の食べ残しの内臓や骨を食っていたほうが楽なんじゃないかな?
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