秋は果物の季節……なんだがな、この時代の果物は少いんだ
さて、秋というと様々な果物のなる季節だ。
まあ、現代では春夏秋冬構わずスーパーなどでは一年中果物は売ってるが、縄文時代においては秋くらいしか果物は取れない。
しかも取れる果物の種類は少なく「木通(あけび)」「山葡萄(やまぶどう)」「猿梨(さるなし)」「木天蓼(またたび)」「木苺(きいちご)」ぐらいだ。
あけびはつる性の植物で、紫色の実を付け、実は熟するとパカっと口を開けたように割れ、皮も身も食べられる。
サルナシは小さなキウイだと思ってもらえればよくて、親指の先程の大きさだが甘酸っぱくてとてもおいしい。
山葡萄はその名の通り野生の葡萄だと考えていいな。
木苺はまあ近いのはラズベリーか。
その他にこの時代の日本にも有ったがほとんど食べられていない果物が在る。
それは「柿」だ。
なぜなのかというとこの時代おける柿はすべて”渋柿”かつ実の小さいものだからだ。
甘い柿は鎌倉時代の1214年、神奈川県川崎市で突然変異によって甘柿ができた。
しかし、甘柿は接ぎ木でしか増やせないため種をまいて育てると渋柿になってしまう。
「しかし、柿は栄養豊富だしもったいないよな」
というわけで今日は、林に果物を探しに行くことにする。
いつも通り下の子供は預けていく。
子供の面倒を見てもらう代わりに食事や衣服、装飾品などをあげることで彼女の生活を成り立たせているわけだ。
「みんな籠は持ったか」
「大丈夫よ」
「大丈夫ですよ、お父さん」
「もったー」
「よしじゃあ行こうか」
みんなで林に入ると、まず見つかったのはアケビ。
「お、こりゃうまそうだ」
「ぼく、とるでし」
「よし、じゃあ、俺が肩車するな」
「あい」
息子を肩車して、あけびの実に届くようにしてやる。
息子は頑張ってあけびの実に手を伸ばしてもぎ取る
「ん、んしょ、とれたー」
「よしよし、偉いぞ」
アケビはビタミン豊富で果皮には、利尿効果のあるカリウムや、強い抗酸化作用をもつ紫色の色素であるアントシアニンが多い、つまり健康にもいい食い物だってこと。
山葡萄やサルナシなども見つけるたびに、其れをもいでいく。
そして……
「お、あったあった」
俺は小さな柿を見つけた。
イアンパヌが驚いている。
「え、それは渋くて食べられないわよ」
「いやいや、方法によっては食べられるんだよこれ」
そもそも、ドングリや栃の実みたいなアクの強い食べ物を食ってるわけだしな。
まあ、柿は煮たら溶けてしまうけど。
割と高いとこに生えてるので木に登って、柿をナイフで切り取って集める。
まあ、木登りなんて言うのもこの時代では何やかやで必要なのでいつの間にか身についちまった。
もちろん果物だけでなくてクリやドングリ、栃の実なども拾っていく。
やがて、そのうちに皆のかごがいっぱいになった。
「よし帰るか」
「ええ、これくらいで十分でしょう」
「そうですね、かえりましょう」
「おうちかえるー」
家族で手を繋いで、集落に帰る。
「おかえりなさい、いっぱい取れたようですね」
「ああ、いつもありがとうな、これでも食ってくれ」
俺はあけびの実を一つ差し出した。
「ありがとうございます、では遠慮なく」
彼女は十分に熟れたアケビにかぶりつく。
「甘くておしいい」
アケビの実はほのかに甘い。
甘い食べ物が本当に少いこの時代では甘い食べ物は貴重だ。
「あまいでしー」
「本当、甘くて美味しい」
一方、山葡萄や木苺、猿梨は甘酸っぱい。
だがその甘酸っぱさが良かったりする。
「ん、これはこれでなかなか」
「そうね、なんだか疲れが取れる気がするものね」
さて各自が果物を堪能したら、渋柿を食べられるようにしよう。
つまり干し柿にするのだ。
渋柿の皮剥きをした後、土器にお湯を沸かして、紐をくくりつけた渋柿を5~10秒ぐらい熱湯にくぐらせてカビないようにする。
それから柿を揉んでからあとは渋柿を家の通気口に柿どうしがくっつかないように干す。
2週間から1ヵ月程度干せば出来上がる。
渋柿の可溶性のカキタンニンが不溶性に変わって渋味がなくなり、とても甘くなる。
「よし食ってみるか、おお、これは甘い!」
「本当ね、渋くもないしびっくりね」
「こんなに甘くなるなんて信じられないですね」
「あまー」
干し柿の甘味は砂糖の約1.5倍とも言われるくらいだしな。
干し柿にはビタミンCは少いが、それはその他の果物で補える。
一年に一度くらいはとっても甘い果物を食べるのもいいんじゃないかな。
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