この時代には寝具はないが、なんとかしたいものだ

 さて、秋も深まってくると、やはり気温も下がってくる。


 外出するときは服を麻のものから、全身なめし革を縫ったものに変えて寒さに対応していくわけだ。


 ”あぎゃーあぎゃー”


「ああ、よしよし、お腹がすいたのかな?」


 そう言いながらイアンパヌが、下の双子に乳をやっている。


 下の子供が初めて迎える冬だが、乳児はどうしても寒さによって、体調を崩したりして発熱することがおおい。


「この先冬になったら、もっと暖かくして寝られるようにしたいんだがなぁ」


 この時代には当然布団や毛布はない、木綿もないしな。


 竪穴式住居は地面を掘っているので地面の温度の15度前後以上には気温は調整されている。


 其れにくわえ、家の中央の炉に常に火をつけておくことで、家の中を温める暖房としても機能して居るんだが、やっぱりちょっと寒い。


 また、地べたに直接寝ると体温を奪われるので、丸太を削った板の上に寝たりもする。


 しかし考えてみればわかると思うが木の上に寝ると痛い。


 アパートに有った柔らかい布団を使うのは、出産などの特別なときだけだ、なにせ数がないからな。


「しかし、もう少し寝心地を良くしたいもんだ」


「そうね、そうできればいいのだけど」


 まあ、時間はあるし少し考えてみよう。


 方法はいくつかある。


 まずは幼児用。


 網目の粗い麻の袋を幼児よりちょっと大きいくらいの大きさで4つ作る。


 そこに海藻を乾かしたものを詰める。


 其れを幼児が寝るときに下にしいたものと上にかけるものを分ければいい。


「どうだ?」


「あー」


「うん、気持ちよさそうね」


「まあ。服だけとかよりは随分ましだよな」


 毛皮は保温性は高いが通気性が悪いので乳児が身につけるとあせもなどができやすくなる。


 なので麻の衣服の上に、こういった海藻の布団もどきを敷いたり掛けてしたりやると、寝心地も悪くないようだ。


「後は俺たち用だな」


「そうね、でも私達の大きさに合わせて袋を作るのは大変ね」


「だよな、とりあえず畑に行くぞ、みんなナイフと背負子か籠も持ってくれ」


「畑?」


「お父さん畑に行ってどうするの?」


「なぜー?」


 子どもたちが聞いてくるので答えてやる。


「穀物の穂以外の茎を地面にしきつめたり、かぶるようにすれば結構暖かいはずなんだ」


「なるほど、其れもそうかもしれないわね」


「なるほど」


「わかったー」


 俺がここに来た当初は、ほんの僅かに栽培されていただけだった焼き畑の穀物などだが、今では穀物や稲の栽培面積は結構増えている。


 穂を刈り取った穀物は枯れるに任せて、肥料とするわけだが、今くらい増えたら、藁として取っていっても大丈夫だろう。


 俺達は穂が刈り取られ枯れてきた穀物の茎が、まだ立っている焼き畑へやってきた。


「よし、根本からナイフで刈り取っていくぞ」


「ええ、わかったわ」


「分かりました、お父さん」


「わかったー」


 みんなで穀物の藁をナイフで刈り取っていく。


 しばらくすれば十分な量が刈り取れたが腰が痛い。


「ナイフで根本からかるって大変だなぁ」


「そうねぇ、今までそんなことしようともおもわなかったし」


 やっぱり鎌を作るべきか、まあ、今年はいいや。


「じゃあみんな帰るぞ」


「ええ、そうしましょう」


「はい、お父さん」


「帰るー」


 帰ってきた俺達は面倒を見てもらった女性に礼を言った後、刈ってきた藁をいつも寝てる場所にまずしいた、そしてその上に大きな鞣した毛皮をしいて、その上に藁をしく。


 早速家族みんなで入ってみる。


「おお、木の板の上と違って柔らかくていいな」


「うん、其れに温かいわ」


「ほんと、あったかーい」


「あったかいでしー」


 みんなでくっついて寝ればもっと暖かい。


 藁に潜って寝るくらいで感動するのもどうかとは思うが、麻の縄や穀物が存在しなかった昔はもっと大変だったんだろうな。


 其れを考えればまだまだいいほうなんじゃなかろうか。

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