第43話 戦争は続くよ何処までも
首相官邸
「ですから、講和は失敗しました。どうも足元を見てきていたようですし………一応講和条件の書類は渡しましたが、飲むかどうか怪しいですね」
葉名がお面のような無表情でそう報告すると、岸川は残念そうな表情になりながらもねぎらいの言葉をかける。
「そうですか………まあ仕方ありませんね。それより、葉名外務大臣。今回の会談はわざわざ遠くまで大変だったでしょう?お疲れさまでした」
「いえ、感情的になりすぎてしまったがゆえに失敗したのかもしれません。………申し訳ありません」
葉名が無表情のまま、そう頭を下げる。
「構いませんよ。四大魔王という興味深い情報を持ち帰ってきてくれましたし、帝国側の考えも分かりました。十分ですよ。………もう下がってもらって構いませんよ」
「はい………失礼しました」
葉名がそう言い残し、退室していく。
「さて、と」
岸川はデスク上の電話で誰かに連絡を取り始める。
「………私です。岸川です。例の件は予想通りに失敗しましたよ。もともと葉名君は帝国とやる気満々だった節がありますからね。ワザとかもしれませんが、まあ仕方がないでしょう」
『 』
電話から、何かが返される。
「成る程、既に準備は済んでいましたか。ええ。日本人の犠牲は0にしたいですからねえ。多少手荒でも仕方ありませんよ」
『 』
「まあ、帝国軍を壊滅させれば流石に終わるでしょう。勿論ミサイルは数に不安がありますから、
『 』
「分かりました。それでは」
ツー、ツーと音がして、電話が切れる。
「早めに終わらせなければ、面倒なことになりそうですね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
カミール大聖堂
「間違いないんだね?」
コーデリアがエリーに問いかける。
「はい。それどころか、帝国での黒人への差別は日に日にひどくなっているようです。また、植民地の民族らも奴隷として売買されているようでして………」
エリーからの返事は、予想通りのものだった。
「分かった。もういい………帝国との貿易へ停止命令を出す。発表は今すぐ、実行は明日からでいこう」
「なっ………しかし、そんなことをすれば我が国と帝国の関係は悪化しますが………」
「情報部によれば、二ホンは金属製の軍艦や長射程の大砲、それに航空機までを保有しているらしい。本当ならラファーやシルフィアラと同格ということだね。そんな国が帝国と戦争をしている………」
「!」
コーデリアのその一言で、エリーも何かに気付く。
「この状況なら………」
「うん。………侵略された国家を解放できるし、残酷なやり方を続ける帝国を止めれる。不可侵条約を破るのは多少不味いかもしれないけど、仕方ないだろう。元々ビジネスライクな関係だったからね」
戦いは、終わらない。むしろ、拡大をするだろう。
ヤーロピアル大陸は動乱のときを迎えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます