第41話 三者会談
(ついに、始まるね。二ホンは空母を持っているらしいし、ひょっとしたら我々や帝国以上の強国なのかもしれない。………舐めたらまずそうだね)
そんなことを考えながらも、コーデリアは屈託のない笑顔でにこにこしながら自己紹介をしだす。
「二ホン国の皆さん、初めまして。ボクはナルカル連合大統領のコーデリアと言います。以後よろしくね?」
「日本国外務大臣の葉名深雪です。お二人とも、よろしくお願いします」
「アグレシーズ帝国の外交大臣であるガバダだ。二ホンよ、最初に言っておくが我々が今回の会談に来たのは連合の顔を立ててやっただけに過ぎぬ。弱小の蛮族が勘違いをするなよ?」
ヤーロピアル大陸で最強であり、列強の一角でもあるアグレシーズ帝国。
帝国が台頭してくる前まで列強であり、現在も事実上の列強と言われることが多いナルカル連合。
ウィストラ大陸周辺を完全に支配下に置いた勢いのある新興国(と思われている)、日本。
これらの三者が集ったこの会談はいきなり不穏な雰囲気で始まった。
「へえ。ずいぶん虚勢をはるんですね。そんな余裕はそちらにないんじゃないですか?今すぐ講和をしたいから、この三者会談に乗ってきた。………違いますか?」
「なっ………ち、違うに決まっているだろう小娘!貴様らこそ今頃魔王に困らされているだろうに、虚勢をはっているのはそちらだろう!?」
言い合いも同然であるこの場を収めようと、コーデリアが間に入る。
「まあまあ、会談も始まったばかりなんだ。そんなにピリピリすることもないだろう?」
「ふん、小国のくせに生意気な態度を取るからだ。分をわきまえぬと、そのうち痛い目を見るであろうに」
「私としては、我が国を見下すような発言を看過できなかっただけです」
言うだけ言ったのか、それっきり何も言わなくなった両者。場を沈黙が支配する。
そんな雰囲気を変えようと、コーデリアが口を開く。
「ところでガバダさん。さっき今頃魔王に~、なんて言っていたけどどういうことかな?魔王が出現したとなれば一大事だけど………」
そんなコーデリアの疑問に、ガバダが待ってましたと言わんばかりに答え出す。
「ふむ、連合は知らなかったか。我が帝国で開発中の新兵器が、二ホン近くの海域で巨大な魔力を発見してな。その魔力の大きさから考えるに、四大魔王でほぼ間違いないと考えられるのだ」
「何だって!?………つまり二ホンは四大魔王と戦っているさなかだってことかい!?」
余程驚いたのか、コーデリアが犬耳をピーンと立てる。
「ああ、連中はやせ我慢しているだけさ。我々は、出現した四大魔王に備えるために一旦講和を結びに来たが………二ホンの態度があまりに生意気なのでな、少し考え直さねばならんかもしれんぞ」
ガバダが意地の悪そうな笑みを浮かべながらそう話す。
(そうか………帝国がやけに乗り気だったのは四大魔王への対処に専念するためだったんだね。四大魔王が出たなると、うちの国も不味いなあ………にしても、二ホンも不運だね。下手したら滅ぼされかねないし、仮に四大魔王を追い払ってもその後に帝国が攻めてくるのは間違いない)
コーデリアが考えに沈む中、日本側である葉名の反応はというと。
「四大魔王?そんなの居るんですか?」
「「え」」
そもそも四大魔王を知らないという葉名の発言に、二人ともあっけにとられる。他の二ホン側の外交官を見ても………
「おい、どうなってるんだ………(小声)」
「知らん、四大魔王なんてのは初耳だぞ?(小声)」
本当に知らないというような感じの者ばかりである。
「え、演技もいい加減にしろ!しらばっくれても無駄なのだぞ!」
ガバダがやや困惑した表情でそう怒鳴りつけるも。
「いや、四大魔王とは一体………?それらしいものが我が国に………ああ。そういえば少し前にヒト型の空を飛ぶ何かが我が国に来ましたね」
「それだ!ふふふ、貴様らも苦しいだろうに、ふふふ………」
勝ち誇った表情になったガバダが、優雅にグラスに注がれた何かを飲み始める。もはや勝負あり、と言わんばかりの態度だ。
「多分それが四大魔王だね。ヒト型で空を飛ぶなんて高位の魔族くらいにしか無理だからねえ」
(にしても口がずいぶん軽いなあ………そんなの黙っておけば良かったのに)
あっさりとそう話す葉名にコーデリアがそう考える。自分から不利になる情報を認めるなど普通はあり得ないからだ。
「でも、一旦帰ってくれって言ったら帰りましたよ?」
ブ――――――――――――ッ!
ご、ごほっごほっ!けほけほっ
動揺の余り吹き出し、むせるガバダ。
「」
あまりの内容に絶句するコーデリア。よく見ると彼女の目は、白目をむいていた。
二国の代表が体調に異常をきたした為、会談は一時中断された。
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