第2話 小国の定め

 カロヌ砂漠で、スィバ国軍を完膚なきまでに叩きのめしたアグレシーズ帝国軍。彼らは、スィバの首都である【ジーア】でをとることとした。


 もちろん、ただの小休止な訳がない。


「へへへ、カルセ様、この都市で俺たちは休憩ですかい」


「ああ、そうだ。先ほどの戦いで、大分疲れただろう?少しくらい構わんさ」


「聞いたかお前ら!カルセ様は羽目を外しても見逃してくれるってよ!」


「こうしちゃいられねえ!俺は先に行くぜ!」


「待てやてめえ!抜け駆けはずりいぞ!」


 カルセのその言葉を聞いて、兵士たちは我先にと目の前の都市へ向かっていく。敵国の男性はあらかた徴兵されたはずだ。都市の内部には逃げ遅れた老人や子どもに、女がいるだろう。


「きゃああああああ!」


「やめなさい。このっ、このっ!」


 さっそく、甲高い悲鳴が聞こえてくる。


(もうおっぱじめるとは。気の早い奴らだ)


「ああ、それとだな」


 カルセが思い出したかのような口ぶりで話し出す。


「はい、どうかいたしましたか?」


「上物は、俺にも残しておいてくれよ?俺だって疲れをからなあ、ヒヒッ」


「へへへ、勿論ですよ指揮官。………話してたらなんだか俺、我慢できなくなってきました。では、俺も行ってきますね」


 そう言うと、カルセと会話していた兵士も都市へと走り出す。





 帝国軍は、皆悪魔のような笑みを浮かべていた。




 ―――――――――――

 ケッペル王国 シラファ城


 ヤーロピアル大陸の北側に、ケッペル王国という小さな島国が存在している。ケッペル王国も、アグレシーズ帝国の脅威に晒されている国の一つだった。


「国王陛下、スィバ国がアグレシーズ帝国に大敗を喫したそうです!」


 部下の一人が、国王サルボにそう報告する。


「な、なんだと!もう負けたのか!?」


(スィバ国はヤーロピアル大陸の中でも、かなり上位の軍事力を持っていたはず………開戦してから数か月と持たずに敗れるとは………)


「はい。首都のジーアでは、アグレシーズ帝国軍が逃げ遅れた女子供や老人に好き勝手しているそうで………」


「もういい!」


(聞きたくない話だ。だが、次にそうなるのはうちの国かもしれない)


「引き続き、情報収集を頼む。それと、軍備の強化、近隣国、アグレシーズ帝国との外交やラファ―への相互防衛条約の締結についての交渉も続けてくれ」


 サルボが部下にそう言う。それに対して、部下の一人がこう話す。


「外交に関してなのですが、二ホンという国が国交樹立を求めてきています」


「なんだと!?」


(アグレシーズ帝国を敵に回しかねないというのに、わざわざそんなことをする国があるとは………)


「ところで、二ホンというとまさか………」


 サルボはそれを聞いて驚くが、すぐに冷静になって問いかける。


「はい、インベルド王国を倒してリマ国を助けたあの二ホン国です!」


(我々単独ではアグレシーズ帝国には勝てない。ならば二ホンは何が何でも巻き込まねば………)

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