閑話 不満の高まり
『戦争反対!戦争反対!』
『須賀は辞めろーーーーっ!』
『このようにデモが国会議事堂や首相官邸前で行われており、国民の政権への不信感が高まっていることが………』
ピッ。
テレビのチャンネルが変えられる。
『悪の怪人、ワールめ!私達きゅいん♡ララキュア♡の絆の力を見せてあげる!行くわよ皆!』
「なんだい悠里。せっかくお父さんがニュースを見ていたと言うのに」
テレビでニュースを見ていた中年の男が不満げにそう話すと、中学生の少女が言い返す。
「だって、いっつもおんなじニュースばっかでつまらないんだもん。せんそーはんたい、せんそーはんたいってちょっとクドイって」
「仕方ないよ。こんなの侵略だって考える人は多いし、経済がガタガタの状況で戦争なんてとんでもない、って皆考えてるのさ。そんな金があるなら私たちに支援しろ!とも思ってそうだけどね」
ピッ。
そう中年の男は言ってチャンネルを元に戻す。
『つづいて、今月の消費者物価指数ですが………』
「にしても、なんでこんなに景気とやらが悪いの?」
少女がそう質問をする。
「外国との貿易が一切できなくなっちゃったし、石油やレアメタルがほぼ入ってこなくなっちゃったからねえ。食糧はクラートからの輸入でしばらくしたら何とかなるらしいが………」
「難しいなー」
「まあ、石油は備蓄がまだあるし、リマ国とかいう国にいっぱいあると噂されているから、何とかなりそうな気もするけどね。レアメタルはなんだか政府が調査を国内やクラートでしているそうだけどそっちはどうなのかなー」
「おーい、お父さんもっと簡単に話してよー」
「うーむ。悠里にはまだ早いかもなあ」
「えー。なんか馬鹿にされてる感じー」
そんな風に二人がリビングで話していると、台所から声が。
「ご飯出来たわよー」
「はーい、今行きまーす。お父さんもいこ?」
「ああ、分かってるよ」
二人ともテレビの前から離れて、食卓の方へ向かう。
『今月に入って倒産した企業はすでに2000を超えており、半導体事業で有名な太陽電子も………』
クラートからの食糧輸入の開始は速くても一か月後、資源は全く入ってこず、貿易も完全ストップ。経済は過去最悪の勢いで悪化しており、企業も倒産だらけ。世間ではオイルショックやリーマンショックのときより酷いとさえ言われている。
それに追い打ちをかけるように、戦争である。
誰もが、明日への希望を見いだせていなかった。
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