ただのバカップル
うーん…こっからどうしよう。頼まれたプリントは渡したし、綾瀬さんはご飯食べ終わって眠そうだし。……そういえば、綾瀬さんの家はかなり大きめの一軒家だというのに家に人の気配が感じられない。まあ親が仕事なだけかとも思ったが、一番気になったのはキッチンの異様な綺麗さ。もはや誰も使ったことがないと言われても納得出来るくらい、手もつけられていない。さっきおかゆを作った時に「これ、誰も自炊してないのでは?」と思うくらいに。でも、勝手に他の家族間への邪推をするのも申し訳ないしやめておこう。無闇にそういうデリケートなところに足を踏み入れるほど非常識ではない。
「みなっちー…」
「ふぇっ!?」
びっっっくりした。というのも、いきなり手首を掴まれて引き寄せられそうになった。女子特有のあの甘い匂いが俺の鼻腔をくすぐる。陰キャの俺にそれは刺激的すぎますねぇ…。
「どど、ど、どうしたの?」
推しにあって限界突破したヲタクくらいのきょどり方、我ながらキモすぎる。
「頭、撫でて」
「はい!?!?」
「あ、じゃあ寝るまで手繋いでて」
いやいや、どっちもどっちだよ!取り敢えず言わせて、可愛いが過ぎる……って今はそれどころじゃねぇ!!これは脳内緊急会議案件。頭の中の俺はさながら碇ゲ○ドウである。この究極の二択に私は迫った。なんでちょっと情熱○陸みたいになってんねん。そんな茶番は置いといて、どっちだ?どっちが正解なんだ—
『どっちもやればええやん』
という、悪魔的かつ最高な案が頭の中に湧き出るが、流石に…と葛藤する。
とそんなことを考えているうちに、いつの間にか綾瀬さんはすやすやと可愛らしい寝息を立てて寝ていた。しかも、気付かぬうちに手も掴まれていた。そんなに寂しかったのかな…なら、まあ……。
人間とは弱い生き物で、一度悪魔の囁きが聞こえれば大体は自分の意思が折られる。つまりはそういう事だ。
(ちょっとくらいなら許されるよな?)
そっと頭を撫で….とんでもない羞恥心が襲いかかってきて、結婚式に急ぐメロスの如く家を出た。綾瀬さんが今の覚えてたら確実に○ねる。というか○にたくなる。でも流石に寝てたしそれはないか…ん?寝てた…よな……??なんか盛大にフラグを立てた気がするのは俺だけか……?
(うわああぁぁぁああ?!?!?!なんで?!なんで起きた途端頭撫でられてんの!?)
湊はしっっっかりフラグ回収したが、それを知る者はいない。ただ、一つ言えることは
「悪い気はしなかったなぁ…」
綾瀬が意外とその時間を満喫していたということだけ。
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