第45話 温泉タイム
「うわ~、大きい」
脱衣所で服を脱ぐと、六花さんの視線が思いっきり刺さった。
恥ずかしくて思わず取ったばかりの下着で隠してしまう。
「こら六花、あんまり人の体を
六花さんのお母さんの美優紀さんまでもが私の体を見ている。
「だ、大丈夫……成長の可能性を私の体は秘めているはず……」
「やりましたね、姉さん!!」
妹の智菜は、なぜか機嫌がいい。
「……何が……?」
そう訊くと、智菜は私の胸を持ち上げて
「んっ、何してんのっ!?」
予想外の行動に私が、慌てるとニヤッと笑って
「スタイルでは、六花さんに大勝じゃないですか!!」
といった。
改めて自分の体を見下ろしてみると、そんな見事のものではなく不登校が招いただらしないだけの体に思えてならない。
それを今度は智菜が撫でまわして
「この胸は、男の視線を誘ってやまないですし、適度な肉付きの腰周り。さらにこの尻なんて魅力的すぎですよ?私からすれば羨望ものですよ。JKの持ってていいものじゃないですよ?けしからん体です」
と言って胸に顔を
智菜の息がくすぐったい。
「でも、学校行かない間に増えた駄肉だよ……」
あんまり運動をしなかったから、こんな体になってしまったと自分では思っている。
もっとこう、お腹周りに付いた肉を落としたい。
そう言うと、智菜は胸から離れて私に指差しした。
「いいですか、姉さん? このカラダは、男を相手にするには武器になるんです!! そうですよね美優紀さん」
智菜は美優紀さんにも話を振る。
「私が他の家の子供にこんなことを言うのはちょっと気が引けるけど……うん、その通りよ!! 結婚したばっかりの頃とか付き合ってた頃の話だけど私の旦那も私の体に夢中だったからね」
美優紀さんは照れもせずそんなことを言った。
確かに美優紀さんの体つきを見れば、男性が夢中になってしまう理由もわかるのだ。
端的に言えば色っぽい。
「ほら姉さん、言ったとおりでしょ? これは武器なるの!!」
そう言って智菜はどさくさに紛れてもう一度胸に手を伸ばしてきたので今度は、その手を優しく振り払った。
「むぅ~」
「でも、智菜ちゃんの言う通りで璃奈ちゃんの体つきは魅力的よ? 私が男だったら飛びついているわよっ!」
美優紀さんはそう言って、じぃ~っと私の体を見つめた。
恥ずかしい……。
でも、そこまで私の体が男性に対して魅力的だとするならば、どうして達希君は関心を示さないのだろうか?
達希君と一緒にいるときも、そういったところに視線を感じたことはなかった。
もしかして……私のことが眼中にないのかな……。
それはちょっと辛い。
「何だか姉さんが物憂げな顔してる……今なら……チャンス」
手をワキワキさせて智菜が近づいてきたのでそれをあしらう。
「私にはないの!ちょっとくらいいじゃないですかぁ」
智菜は不服そうな表情を浮かべた。
そのとき、浴室と脱衣所の境の扉が開いて中から六花さんの声が聞こえてきた。
「ちょっと、いつまでみんなで喋ってるの? 私、もう全部洗い終わってお湯に浸かるだけなんだけど!?」
六花さんの
「そうね、そろそろ浴室に行きましょうか」
美優紀さんの提案で浴室へと入ることにした。
体を洗っていると「お背中を流しましょうか?」と智菜が来たが下心が顔に出ていたので無論、却下する。
久しぶりに動き回って疲れた体にシャワーのお湯が心地いい。
実際のところは、わからないけど体がほぐれていく感覚がする。
洗うところを洗い終わってお湯に
「あふぅ~」
「運動不足の姉さんは、帰ったら筋肉痛になっちゃうかもだからちゃんと揉んでほぐしといてくださいね」
気づくと智菜も隣でお湯に浸かっていた。
智菜との間隔は近くすぐ隣にいたので、さっき気になったことを話してみることにした。
私がいろいろ相談できるのは多分、達希君か智菜かお母さんくらいだ。
でもこういうことって当然だけど達希君には相談できないしお母さんに相談するのは、ちょっと恥ずかしかった。
「ねぇ……智菜?」
智菜相手でも少し恥ずかしいので顔を直視しながら話すことができず、湯舟を見つめながら話を切り出した。
「なんです?」
対する智菜は、しっかりと目線を私に向けている。
「あ……あのさ、さっき智菜と美優紀さんが……言ってたことなんだけどさ……」
体つきの話とかってちょっと変態的な感じがして、これも恥ずかしい原因の一つだ、
「あぁ、姉さんの体つきが魅力的って話です?」
智菜は、そういったことを話す恥ずかしさをおくびにも出さず言った。
こういうところも私と智菜の大きな違いなんだよね。
「う、うん……仮にもだよ?そうだとしてどうして達希君は、そういう意味を含めて私に関心を示さないのかなって……」
「う~ん、豊胸サプリでも使ってもっと大きくしときます?」
えっと……達希君のお眼鏡に
「足りないのかな?」
思わず自分の胸を見つめてしまう。
「冗談ですよ。それ以上大きくなってもらったら私、姉さんの横に立てないですしそれじゃぁ、ただのおっぱいお化けです」
「じゃ、じゃあ何で?」
頬に手を当てて智菜は少し考え込むと
「多分、そういう風な目で見ないようにわざと目を
だとしても、少しくらいはそういう風な目で私を見てしまうことだってあるはずだ。
「で、でも…」
そう言いかけると智菜は
「よく考えてみてください。鮎川先輩だって思春期の男子高校生ですよ?」
言われてみれば確かにそうだけど……。
「それに先輩は、人の立場に立って物事を考えることのできる人です。だったらそういう目で見られたとき女性が、どう思うかって考えると思いますよ?」
私が学校に行けるようサポートしてくれていた時も、そうだった。
私のことを考えていろいろ取り計らってくれていたと思う。
「そうなのかなぁ……」
「そうですよ……。どうしてもそういう風に見て欲しいなら大胆な服でも来て迫ってみません?」
智菜が飛んでもないことを言ってきた。
智菜は、そんなことが私に出来っこないことだって知ってそう言っているのは分かっている。
「それは、絶対ムリ……」
「でしょ? そういうことなんですよ」
智菜は、この話はここまでとでもいう風に話を切った。
判然としない気持ちは私の中にあるが頭が良くて人のことをよく見ている智菜の言うことだから多分、合っているのだろう。
隣の方で、ちゃぽんと水音が聞こえてきたので音の聞こえたほうを見ると、少し不機嫌そうな顔をした六花さんがお湯から上がるところだった。
「お母さん、お湯でのぼせちゃいそうだから
六花さんは、入れ替わりのような形で美優紀さんとシャワーを交代し体を流すと浴室から出ていった。
「あちゃ~……機嫌悪くしちゃいましたね」
智菜が六花さんの後姿を目で追いながらそう言った。
でも、それが私にはよくわからなかった。
――――――――――
筆が捗りました。
ムフフ、冗談です
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