第42話 キャンプカレー
川魚を10匹ほどキープしたところで釣りを止めて車を止めたところに戻った。
太陽は、中点まで上がっていて森の下草も陽に当てられている。
「待たせてしまってすみません」
キャンプ用の椅子を車の外に出して美優紀さんは読書をしていた。
「みんなおかえりー」
美優紀さんは本を椅子の上において立ち上がると袋の中に入った魚を見つめた。
魚籠を含めて道具は、全て返してきたので魚を入れるためにビニール袋をもらったのだ。
「お、いいじゃん。このデカいのいいね」
イワナを褒められた六花は、何か言いたげに唇をもにょもにょさせてまんざらでもなさそうにしている。
「これ、斉川さんが釣ったんですよ?」
美優紀さんは、六花の両肩に手を置いて
「いいところ見せれて良かったじゃないっ!!」
「ちょ……友達の前だからぁ……」
小さい子を褒めるような、美優紀さんに対し六花はその手を恥ずかし気に振り払っている。
「六花、反抗期なの? お母さん、拒絶されて悲しいよ?」
よよよと悲し気な態度に瞬時に切り替わった美優紀さんに対して六花は、面倒くさそうにため息を吐いて
「だから、そんなんじゃないって」
と応じる六花。
瞬間的に切り替わるっていうのが、この母にしてこの子ありだなと思った。
芹沢姉妹や
「あ、みんなごめんね?ちょっと取り乱しちゃって」
100%演技なんだろうなと思いつつその場の誰もが、もう、そういうことでいいです……と受け入れた。
「さてお昼もちょっと過ぎちゃってるしお昼ご飯でも作ろうか」
すでに車からは、必要そうな道具のほとんどが降ろされていた。
釣りに行く前に、美優紀さんとおろした物だ。
そして野菜も置かれていた。
その野菜から察するにお昼ご飯は
「カレーを作ろうと思うんだけどね、ちょっとみんなの手を借りさせてね」
ということらしかった。
「姉さんにできることあるかな……」
智菜ちゃんの声の先には項垂れた璃奈さんがいた。
「でね、作業分担をしたいんだけどみんなどれくらい料理できるかな?」
「私は、少しくらいなら」
智菜ちゃんは、小さく手を挙げてそう言った。
「鮎川兄妹は、ご家庭の事情が事情だから問題なさそうだし……問題は……」
僕ら兄妹は、家での生活が二人っきりだからお互い、それなりに料理は作れる。
「え、わ、私は……」
「…………」
憐れむような眼で美優紀さんは残った二人を見つめる。
「訊かなくてもわかりそうね……あ、気にしなくてもいいのよ?人間はさ、
「それ、フォローになってないよぉ……」
もうこれ、できる人だけでやってしまえばいいんじゃないかなって思う。
「でも、これもみんなでアウトドアする醍醐味だから、助け合いながら行きましょ」
かくして分担を決められていった。
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