第39話 親バカと鈍感
コンビニからはノンストップでカラオケ大会を続行しつつ走り続けて10時になるかどうかってくらいに目的のキャンプ場に着いた。
キャンプ場は、川沿いにあって、すでに何組かの人たちの姿が見える。
「さあ、到着したわ」
美優紀さんは、誰よりも早く車から降りて体を伸ばした。
それに倣うようにみんなもおりて各々、体を伸ばす。
さすがに何時間も同じような姿勢でいると疲れがたまって体をほぐしたくなる。
「あ、達希君は私の手伝いをしてくんない?」
美優紀さんがバックドアを開けながらそういった。
積み荷を降ろすのを手伝ってってことなんだろう。
「わかりました」
「一人じゃ準備しきれないから助かるわぁ。みんなはお昼になるまでその辺で遊んでおいで」
美優紀さんは、指示を出しながらてきぱきと持ってきたアウトドアグッズを降ろし始める。
そこに六花がやってきて
「私も手伝うよ」
と言ったが
「二人で事足りるから遊んできなさい、これはお母さん命令です」
と、追っ払ってしまった。
お母さん命令と言われて、六花はすごすごと引き下がっていく。
六花がスマホをポケットから取り出し、何かを打ち込むと僕がメッセージの受信を振動して伝えた。
あとで見ておこうかな。
「やっと、あの子たちもどこかへ行ったわね」
美優紀さんは、一旦準備の手を止めてこちらへ視線を向けた。
真面目な顔をしている。
「いや、六花のお母さんとしてちょっと気になることがあってね?」
何やら重大な話らしかったので僕も作業の手を止めた。
「なんでしょうか?」
思わず、少しあらたまったふうに訊き返してしまう。
「うんと、あの子たちってみんな魅力的じゃない?」
突然、まじめな顔でそんなことを言い出すから少し面食らった。
「えぇみんな、とてもいい人たちです」
当たり障りのない返し方をしておく。
「そう言われると、六花を頑張って育ててきたかいがあったわね。で、率直に訊くんだけど」
と前置きをして美優紀さんは切り出した。
「あの子って君の目から見てどう思う?」
「抜けてるところをフォローしてくれたりするいい友人です」
学級委員長として何かをするときなんかにもよく助けられている。
ありがたい存在だ。
そう答えると、美優紀さんは何とも言えない顔をした。
「うーんと、なんていうか……ちょっと違って……聞き方が悪かったのかしら……」
それならともう一つ別の質問をしてきた。
「なんて言うか、異性として男の子である達希君から見ると六花は、どうなの?ちょっと親バカかもしれないけど、あれでも頑張って魅力的な子になるように育ててきたのよ」
異性としてか……この質問は、男の僕から見るに六花の男性受けはどうか?という質問なのだろう。
「男性からすると、明るいですし楽しいですし異性として認識する人もいると思いますよ?」
クラスでは、六花の男子からの人気は、間違いなく高い。
そう答えると、美優紀さんは何かを諦めたようにため息をこぼし遠い目をしながら
「六花……まだ全然、遠いみたい。頑張りなさい」
と祈るように呟いた。
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