第33話
「達希君は、入る部活決めたの?」
ゴールデンウィーク前の一週間、僕らの通う高校では部活動見学が行われていた。
「まだ、決まってないよ」
そう答えると六花は顔をほころばせた。
「じゃあ、一緒に見学に行かない?」
入学時に学校でもらった書類に記載されていた部活には、興味をそそられるものはなかったけど一応見てから判断するべきか。
「いいよ」
「やった」
それを見ていた璃奈さんがやってきて
「私も、その……ついて行っていいですか?」
と言って、六花を見つめた。
身長が六花の方が高いので目を合わせて会話をすると必然的に上目遣いになる。
「もちろん!!」
六花はそう言った後、今のはズルくない……?と小声で漏らしていた。
「えへへ、ありがとうございます」
蓮はいるかな?と思って教室を見回してみたがすでに蓮の姿はなかった。
「蓮は、サッカー部に入るらしいよ?」
僕が、蓮の姿を探していたのを察してか六花がそう付け足した。
蓮は、中学校の頃もサッカー部でスターティングメンバーだったからほぼ、そうなることは確定だったのかもしれない。
「なるほど、じゃあどこから行こうか?」
7限目とSHR《ショートホームルーム》が終わった4時10分から5時30分までが一年生が部活見学可能な時間になっていたので1時間20分は、見て回ることができる。
「まず、どっちを見て回りたいかだよね?」
どっちというのは、運動部か文化部のどちらか、ということなのだろう。
「私は、どっちでも問題ないけど達希君と璃奈ちゃんは?」
六花は中学時代、陸上部に所属していたが美術の夏休みの課題なんかで賞をもらってたり習字ができたりとマルチタイプだった。
「剣道部見に行く?」
「いや、あれはもういいかな……疲れた」
六花が笑いながら訊いてきたので、そう返した。
僕は中学校の3年間、剣道部で過ごしていた。
錬成会や、大会なんかで割と休みがなかったことくらいしか思いでない。
あと、夏は暑くて死にそうだった。
「そう言うと思った」
璃奈さんは、僕らの方を羨まし気に見ていた。
「どうしたの?」
その様子に気づいた、六花が問うと
「私、まだお二人のこと、ほんの一部しか知らないんだなって思って……」
と少し沈みがちに答えた。
「大丈夫、これから仲良くなって互いのことを知っていけばいいんだよ」
僕もそうフォローを入れると
「そういう言葉を私にもかけて欲しいかな」
六花は、むす~とむくれ顔になった。
「璃奈ちゃんは、文化部の方がいいのかな?」
六花は、あっという間に表情を切り替えた。
普段から多くの人と接する六花のそういったところに感心させられる。
「……運動は、苦手なので……そうしてもらえると助かります……」
「了解、達希君もそれでいい?」
運動部は、中学校から始めて部活を継続する傾向があってそういう人の方が強いしそういう人じゃないと試合に出れないから、正直なところあんまり入る気がない。
「問題ないよ」
「じゃあ、とりあえず適当に回ってこっ」
六花は、鞄から部活動の一覧表を出した。
「合わせてもらってすみません」
璃奈さんがそう謝ると少し人の悪い顔をして
「じゃあ、運動も頑張ろっか?」
と言ったが
「それは、無理です」
と><って感じの顔をした璃奈さんに即答された。
「だよねー。でも諦めたら試合終了だよ?」
「運動部じゃないから試合も関係ないです」
「そうだった……」
2人で笑いあった。
その様子を見て、璃奈さんもだいぶ、明るくなったんだなと少し安心した。
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