第31話 ある朝のこと
翌朝も璃奈さんの家に迎えに行くと(璃奈さんからの要望で)家の前には六花がいた。
「達希君、おはよ」
六花には、朝のことは伝えてないのになと思っていると
「私も混ぜてもらいたくて来ちゃった」
と、六花の方から言ってきた。
「…お、おはようございますってえっ!? 斉川さん!?」
眠そうに玄関から出てきた璃奈さんは、驚いてあどけないその顔に似合わない声を上げた。
「そんなに、私の顔を見てどうしたの?なんかついてる?」
「い、いえ……玄関に居たので驚いただけです……」
「あら、居ちゃ悪かったかな?」
申し訳なさそうにしている璃奈さんを六花は、ニヤニヤしながら問いただしていた。
「電車に乗り遅れるし僕は行くよ?」
何しろ電車は、朝の通勤ラッシュの時間帯ですら20分に一本程度なのだ。
これを逃してしまうと学校に間に合うかが怪しくなってしまう。
「待ってください」
「ちょ、待っててば!!」
二人も慌てて追いかけてきた。
これで、問答は終わったかな?
「そういえばさ」
そんなことを考えていると六花が切り出した。
「何?」
「ゴールデンウィーク近いじゃん?」
そういえば、来週からゴールデンウィークで学校は休みになるのだった。
「だからさ、皆でキャンプしない?」
キャンプか……そういえば、まだ僕はしたことがない。
「したことがないな」
家族でしようという話はあった。
でも、その話は母の死で立ち消えになってしまったし、そういうこともあってキャンプをしようという気にはなれなかった。
「私も……ないです」
璃奈さんも未経験らしい。
「二人ならそう言うと思ってさ。せっかくのお休みじゃん? 普段できないことしようよ」
アウトドアには、もともと関心があったしちょうどいい機会だと思った。
でも問題があった。
「荷物の準備と、引率の方をどうするの?」
僕ら高校生だけじゃ、キャンプに行くのは不可能に近い。
「あ―それは、私のお母さんがついてってくれるって」
六花のお母さんの美優紀さんの車は、大型車なので六人まで乗れることは知っていた。
「叶夢も連れて行っていいかな?」
「大歓迎だよ。あと璃奈ちゃんの妹の智菜ちゃんもね」
二つ返事で快諾してくれた。
「じゃあ、皆で買い出しとか行かないとだね」
キャンプするといっても必要な道具は、多い。
「それなら、大概はそろってるからあとは、食品と服ぐらいかな」
六花には、家族でのキャンプの経験もあって装備は問題ないらしい。
「了解。じゃあゴールデンウィークに入ってからバタバタしないよう計画でも立てとこうか」
慌てると必ず何かを見落としたり忘れてしまったりするからこういうのは早めにやっておくべきだ。
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タイムリーですね、ゴールデンウィークですって!
ちなみに三年前にこの話を書いたとき、時期的には真反対の冬休み前でした。
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