第22話 龍装
「……俺は気絶してたのか?」
目を覚まし起き上がると、相も変わらず目の前で例の黄色い衣を纏ったナニカが浮遊していた。
「クソ、なんなんださっきのは!? 精神攻撃か!?」
俺がそう吐き捨てながら、立とうとした。しかし隣から、うなされるエミリーヌの声が聞こえてくる。
「いや……お父様、お母様……皆……わたくしを見捨てないで」
多分、このまま放置してたらマズイ! なんでかはわからないけど凄く嫌な予感がする!
「オイ! 起きろエミリーヌ! 多分そのままだとマズイ! だからさっさと……」
俺が起こそうと両肩を掴んで揺さぶったその時、腹部に鋭い痛みが走る。そして、腹部をまさぐると手に大量の血がついていた。
「ゴフッ……」
俺がエミリーヌの護身用ナイフが刺さった腹部から視線を戻し顔をあげると、うつろな目で涙を流すエミリーヌの姿が目に映る。
「鈴木悠馬……貴方もわたくしを見捨てるのですの? わたくしなんて家柄以外、なんの取り柄も無いですもの。皆……皆敵ですわ……信じられるのはハスター様しか……」
――ハスター様って誰だよ。ったく、しゃあねぇな……。
俺は苦笑いすると、血に濡れてない手でエミリーヌの涙を拭きながら言う。
「なぁエミリーヌ。お前は知らないと思うけど、俺はお前に何度も助けられてるんだぜ? 色んな事に失敗してふさぎ込んだ時、お前のちょっと抜けてるせいで失敗しても、直ぐに立ち直って高笑いをあげるその姿を見て救われた。そしてお前の自信満々な姿を見て、いつも元気を貰ってたんだ」
痛みに耐えるため一度息を吸い、エミリーヌの頭に手を置きながら続けた。
「あ……」
「どんな時でも元気よく、人を引っ張ってくお前が俺には眩しかった。例えお前のアレが見栄だったとしても、お前のその姿に救われたんだ。だからさ、そんなへこたれた顔すんなよ。エミリーヌ。何があろうと、俺は絶対にお前を見捨てねぇ。もっと自信を持て、お前は凄い奴なんだ。俺に元気をくれたいつもの姿を見せてくれよ」
そしてエミリーヌは目を覚ますと、ナイフから手を放して泣きながら取り乱す。
「鈴木悠馬……? え……あ……ち、ちがう! そんなつもりじゃ!?」
「わかってる」
ナイフを抜いた後。そんなエミリーヌを、俺は子供をあやすように抱き寄せた。
「大丈夫だから、泣くなよ」
「でも……でも! わたくしのせいで!!」
「お前のせいじゃねえよ。悪いのは全部あの得体の知れない合羽野郎だ。俺がアイツを片付けてくるから、お前は自信満々に笑ってろ。だって、俺はお前の笑顔にいつも元気を貰ってたんだからな」
「待っ……」
俺はそう言うと、エミリーヌから離れて立ち上がった。
「さぁ、決着つけようぜ!」
俺は目の前の浮遊するナニカに叫びながら、剣を構えた。
――とは言ったものの……ちょっとキツイな。
俺がそんな事を思っていると、勝手に神威が発動する。
――そんくらいヤバい敵ってことか。ロト、お前知ってるか?
俺はロトにそう問いかけるが返事が返ってこない。しかし、代わりにアウァリティアが答えた。
――アスタロトが熟睡中なので答えよう! 答えはイエスだ。奴の名はハスター、邪神の一柱だからな。俺の力も使え!
アウァリティアの声が聞こえた瞬間。眩い光に包まれ、気がつくと俺の体は金色の鎧に包まれていた。
「なんだコレ、そして何故に金色……」
俺は龍を象った鎧や、フルフェイスのヘルメットをベタベタ触りながら呟く。
――コレは龍装、俺の力を具現化させて身にまとってる状態だ。金色の方がゴージャスで強欲って感じだろ!
――お前の趣味かい!
――とりあえずステータスカードを見ろ、スキルが変化してるはずだぞ。
――ホントだ。
俺がステータスカードを見ると、スキル名の後に軒並みシンと付いている。
「どんなものかはわからないけど。とりあえず、やってみるとしますか!」
そうして俺は、黄色い合羽野郎改めハスターへと突撃した。
「ハァァァ!」
俺がハスターに向かうと、ハスターの周りに触手が現れて俺に襲い掛かる。
「邪魔だ!!」
イグニススラッシュ・シンを発動さると、辺りの触手全てを薙ぎ払った。
――なんだこれ、もはや別物じゃねえか。
俺がその威力にドン引きしていると、例の虫型眷属が複数召喚される。
「どけ!」
俺は蹴りや拳で殴り飛ばしたり、剣で切り裂いたりしながらぼやく。
――数が多すぎるッ!
――そいつはビヤーキーだ!
――コイツに名前なんてあったんだなッ!
レイスラッシュ・シンを発動させて切り捨てるが、次々と無数に召喚されるせいで一向に減らない。
しかもその上、風の刃のようなものが俺を襲ってきていた。
――クソ! 避けなかったら今頃お陀仏だぞ!
風切り音がしたので咄嗟にその場から跳び退くと、俺に襲い掛かろうとしたビヤーキー達が纏めて切り裂かれる。
「がッ!?」
それに気を取られていた隙に、後ろからビヤーキーが襲い掛かってきて鎧が攻撃を防いでくれたものの、衝撃で俺は吹き飛ばされた。
――すげえな、この鎧。だけど、数が多すぎてこのままじゃジリ貧だ!
「チッ!」
体勢を立て直して俺が舌打ちしながら、無数のビヤーキーと向かい合ったその時。ビヤーキー達は業火に包まれる。
「なんだ!?」
「鈴木悠馬!」
炎の向こうから、エミリーヌの姿が見えた。
「貴方の背中はわたくしが守りますわ! だから負けたら承知しませんわよ!」
「あぁ! 絶対に勝つ!」
俺が立ち上がりながらそう言うと、エミリーヌはいつも通りの自信満々な笑みを浮かべる。
――やっぱりお前には、その顔が一番似合ってるよ。
「今のわたくしは絶好調ですのよ! そこをどきなさい! インフェルノ!」
エミリーヌの魔法で焼かれてビヤーキーが消滅し、その隙に俺はハスターへと向かった。
「彼には指一本触れさせませんの! イグニスウォール!」
そして、俺の背中に追いすがろうとするビヤーキーと俺の間に炎の壁を作りながら、エミリーヌは叫ぶ。
「行きなさい! 鈴木悠馬!」
その声を聞きながら俺は風の刃を避けつつ、疾風迅雷・シンを発動させ立ちふさがる触手達を切り裂いた。
「紫電一閃・シン!」
そのまま、俺はケーリュケイオンを発動させ道を切り開く。
――そういえば、神威関連のスキルには変化ないな。
――俺の力と神の力は水と油のようなもので混ざり合わないからな。
――そうかい!
「行くぜ! タラリア!」
ハスターは竜巻を発生させながら無数に風の刃を放ち身を守るが、ディメンジョンスラッシュ・シンを発動させて全て切り裂いた。
「新技だ! 喰らえ!
二つの剣から繰り出された巨大な炎の斬撃と光の斬撃によって、ハスターの仮面が割れる。
――うへぇ! なんだあれ!顔が触手で出来てんぞ!?
――集中しろ! 本来ならアレ本体にダメージを与えることなど出来ないが、神の力か俺の力ならアイツを倒すことが出来る!
――了解!
そして俺はそのままハスターの懐までたどり着くと、新たに覚えた奥義スキル『アウァリティア・バースト』を放つ!
「アウァリティア・バーストッ!!!」
その瞬間。耳をつんざくような悲鳴を上げながら、ハスターは跡形もなく消滅した。
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ちなみに、奥義スキルはゲージが溜まると放てる必殺技です。ゲージは被弾、敵の撃破、相手にダメージを与えることで溜まっていきます。
ラスティアでは主人公の龍斗しか覚えられないが……?
皆さんの暖かいコメント感謝です! ……なんでか最近眠れなかったり、逆に講義中眠気が抑えられなかったりガタガタなんですよね。
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