第4話 乖離

「ねえ、君」


「え? え? 私?」


「そうそう君だよ、俺の名前は鈴木悠馬。よろしく!」


「え、えっと……佐々木花音です……よ、よろしくお願いします……」


 佐々木花音。Eクラス所属で大人しめで理知的、そして少し臆病な性格のサブヒロイン。例の料理で科学しちゃうヒロインである。ルート中盤からおしゃれをしだし、コンタクトを付け始める……正直、滅茶苦茶可愛いです。

 この学院にはエンフォーサーになって、生き別れた後行方不明になった兄をダンジョンで探すために来ている。

 ちなみにそのお兄さんは既に邪神教団に改造されており、妙な仮面をつけている上に技から名前まで全てとても中二病臭い。他のルートでは中ボス、花音ルートではほぼラスボスとして登場する。

 え? ラスボスはアスタロトだろ、だって? 実はこのルートには一年生時にのみ分岐できるのだが、このルートに分岐すると一年生編終盤。主人公が祭りイベント中に花音へ告白しOKを貰った翌日、例のディートハルトと魔改造お兄さんが学院に襲来する。

 そしてディートハルトに主人公は足止めをされ、主人公が駆け付け手を伸ばした瞬間、魔改造された兄に刺されてしまう。

 花音は自分が妹を刺した事で、一瞬自我を取り戻し発狂する兄を見て今まで戦っていたのが兄だと気づく。

 しかしそんな状態でも兄に生きててくれて良かったと言葉を発すると、崩れ落ちた花音を抱きかかえながら泣きじゃくり、必死に声を掛ける主人公にこう言い遺す。


「大好きだよ○○……貴方の笑顔が……貴方の温かい手が、いつも臆病な私に勇気をくれました……だから泣かないで笑って? 私は……ずっと……あなたのそばに……居る……から……」


 その後。花音を失った悲しみと憎しみをぶつける主人公と、再び自我を失った上に暴走した魔改造お兄さんとの実質ラスボス戦が始まる。

 そして暴走魔改造ラスボスお兄さんを倒し終えると、主人公はイザナギ学院から姿を消す。

 そのまま主人公は各地を旅しながら、時折シーガルの力を借りながら邪神教団を壊滅させていく。

 ちなみにこの時主人公は闇落ちしている上に、レベルもカンスト固定な上装備もこのルートでしか存在しない、寿命を代価に使う呪い付き最強装備固定のほぼイベント戦である。

 ただ公式チートを使って他ルートで血反吐を吐きながら苦戦するボスを、作業の様に楽々倒すだけのパートだ。

 そんな事を繰り返しながら、二年後。いよいよアスタロトが復活するが、我らが公式チート主人公の敵ではない。

 あっさりとアスタロトは倒され、ラスト。

 主人公は花音の墓まで足を引きずりながらもたどり着くと、その前で眠るように力尽き。死んで魂だけになった主人公とずっと主人公の隣に居た花音が、手をつなぎながら何処かに去る。


 そして、最後。花畑で抱き合う二人のCGを背景にエンドロールが流れる。やったね! ゲームクリアだよ! ……クソッタレ。


 とりあえずシナリオライターは出てこい、主人公と花音の代わりに俺がぶちのめしてやる。

 ちなみに、このルートはコミカライズされていない。当たり前だ、こんなのがコミカライズされた日には俺が発狂する。どうしてパッケージに乗ってるメインヒロイン三人だけじゃなくて、サブヒロインまで悉く殺すんでしょうね……

 ついでに言うと、花音ルートを選ばなくても同じように花音は死ぬ。

 その場合は主人公は花音が死ぬ場に居合わせず、好感度によって邪神教団に殺された友達から、なんかよくわかんないけど襲撃されて死んだEクラスの生徒まで扱いが変わる。

 俺は花音ルートを完走した後に別ルートを選んで花音の好感度を稼がず、花音が死んでも無関心で終わる主人公を見ると、ついディスプレイにコントローラーをぶん投げそうになった。

 

 ――Sクラスだったから主人公様は間に合わなかったが、同じEクラスならばきっと!


「なんだなんだ? ナンパか? 悠馬! お! この子可愛いじゃん!」


「いや違うから。偶々目についたからクラスメイトだし仲良くなれないかなって思って」


「それをナンパって言うんじゃないか?」


「うっせ」


「え、えっと……」


「あ、ああごめん。花音さんはなんか趣味とかある?」


「うわーベタだなぁ……」


「そこ、うるさいぞ」


 俺は遠山の口を掴んで黙らせた。


「そ、その! 私の事は花音って呼んで下さい! しゅ、趣味はスイーツ巡りとアニメ鑑賞です! よ、よろしくお願いしましゅ!」


 ――あ、噛んだ。


「面白いよね、アニメ。あ! 今期の○○見た? 滅茶苦茶伏線回収熱かったよね! まさかあそこに繋がるなんて……」


「え! 鈴木君も○○見てるんですか! いつも面白いですけど、今週は凄かったですよね! 私なんか鳥肌立ちっぱなしでした!」


「悠馬で良いよ、花音。それにしても凄い偶然だね! あのアニメを見てる人と知り合えるなんて! 俺達いい友達になれそうだ!」


「はい!」


 ――ちなみに、偶然ではなくラスティア内で花音がこれが好きだと言及していたので見始めたのである。……まあ予想より面白かったから、ロトと一緒にテレビに齧りついているのだが。


「ぷはッ! ところで二人共、どうしてこの学院に来たんだ? ちなみに俺は高ランクエンフォーサーになってモテまくりたいからだぜ!」


 遠山は俺の手の拘束から逃げると、そんな質問をしてきた。


「ん? 俺は強くなって、大切な人達を守るために来た」


「……素面で言うセリフじゃねえぞ」


 ――う……わかってるよそんな事! でも本心なんだからしゃあないだろ!


「私はとっても素敵だと思いますよ? 自分の為だけじゃなくて、大切な人の為って素敵じゃないですか!」


「そう言う花音はどうなんだ?」


「私ですか? 私は……えーっと、ところでお名前を伺っても?」


「遠山和人だ、和人で良い! 美人なら大歓迎だ!」

 

 そう和人が言うと、花音は若干引いた。


「え、えっと……」


「この馬鹿はほっといて良いから、俺も会って二日目だけど何となく慣れた。で、花音さんはどうしてここに?」

 

 ――まあ知ってるけど。生き別れた兄を探すために……。


「家庭の事情で離れ離れになってた私の兄が、最近再会した時にエンフォーサーになってたんです。それがとってもカッコよくって! だから憧れてココに来ました!」


 ――……あれ?


「えっと、お兄さんが行方不明になってそれを探しに?」


 俺がそう聞くと、花音はきょとんとした顔で言った。


「いいえ? 行方不明にはなってないです。それに、臨時講師としてこの学院に来るみたいですよ? この学院のOBですから」



 ――…………んんんんんん!?




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 ワクチン打ちに行かねば。体の調子によっては明後日辺りまで更新止まるかも……もしくは軽かったら今日中にまた一本上げるかも知れないけど……


 驚愕の真実はまだまだ続く! 次回の更新をお楽しみに!

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