第63話 眼鏡っ娘。
本日2話更新します。
2話更新の2話目です。
※※※※※※
そういえば、
古いファンタジー作品だと、男と同じでヒゲが生えていて、異種族には男性と区別つきにくいとしているし、新しい作品だと、見た目人間の少女だけど、めっちゃ怪力な合法ロリというのが多い。
残念ながら(というとこの世界の
とは言え髭モジャとかではなく、耳から下の顎までのフェイスラインにかけて、入れ墨っぽく、しかも模様の様に複雑な形で、ごく短いのが生えている。パッと見には、髭には見えない。
キースさんのパーティにきたチャドさんも
そんな考えごとをしながら、街をぶらぶら歩いた。交易地でもあるだろうカナチヨでは、
「このあたりは、また、随分と露店が多いんだなぁ」
露店の種類もとにかく豊富である。
カナチヨはかなり広く、歩いても歩いても、街の端までたどり着かない。気になる店に寄っては、移動してを繰り返して、気づくとだいぶ長いこと歩き回っていたらしい。すでに太陽?は、真ん中を越え、やや落ちかけていた。
「いやぁ、今日は歩き回った…んん?何だか、食欲をそそる、いい匂いがするなぁ…」
周りを見回すと、いつのまにか軽食を出しているだろう露店ばかりが立ち並ぶ場所に来ていた。周りでは、歩き食いをしている老若男女が、多数、道を行き交っている。
「そういえば、昼すら食べてなかった…どうしよう?む、この匂い…ああ、この匂いもまた、いい匂いだなぁ…」
これは、間違いなくスパイスだ。どうやら、このあたりの露店で、スパイスを扱っている店があるのだろう。匂いを頼りに、覗いてみると、確かにスパイスを取り扱っている店があった。
「いらっしゃい♪」
そう言って、覗き込むと、露店の店主らしきかなり小柄な可愛らしい女の子が、これまた可愛らしい声で話しかけてきた。
女の子は…タレ目の大きなどんぐり眼に、目に占める瞳がかなり大きく、虹彩が角度で何色にも見えて、キラキラとしていた。
そして、大きな黒縁の丸眼鏡が何とも可愛らしく、よく似合っている。いや、しかし、この世界、眼鏡があるんだな。初めて見たわ。
「ここはスパイスを売っているお店ですか?」
「せや。どーぞ見ていってなー」
この特徴的な目を持つ彼女は、
「おにぃさん、めっちゃイケメンやん!イケメンにはサービスするって決めてるんよ、じゃんじゃん買うてくださいな」
そして
自分の正面に本人しか開けられない異空間があり、そこに入る大きさのものを自由に取り出したりできる。内部の大きさは小さくても3メートル立方、大きいと10メートル立方もあるらしく、これは人によるらしい。
残念ながら保温や時間停止能力はないが、必ず内部は摂氏5℃、湿度0%に保たれており、酸素はなく、窒素で満たされていて、重力も働かない、という特徴がある。
あ、この世界の気温は摂氏…いや、名前は『サーモレベル』だけど…で表示される。やっぱり水が凍る温度を0、蒸発する温度を100にして、それをもとに作ったらしい。
話を戻すと、
種族特徴としても、人懐っこい性向にしても、戦いには全く向かないため、争うことに倦んだ神が生み出した、あるいは別の商売の神様が産んだ、とも言われている。
「ドールルって料理が作りたいんだけど、どのスパイス使えばいいかわかる?」
「イケメンおにぃさん、ドールルを食べたいなんて、ツウやねー」
「あはは、前に知り合いに作ってもらって、それ以来、気になっていたんだ」
「へー。ドールルは、手順が難しいからなぁ、スパイスだけ売っても、簡単には作れないんよ?」
「え、そうなんだ…」
何となく、スパイス炒って、混ぜりゃあいけるかと思ったが違うのか。
「特にこのギリメミシリっていうスパイスが、ローズロードちゅう植物系のモンスターを材料に使ってて、扱いが難しいんよね」
植物系モンスターを使ったスパイスか…それは確かに地球の常識では取り扱えないなぁ。取り扱いがわからなくては、料理も難しそうだ。
「そうか…それは残念だな…」
「うーん、おにぃさん、そんなにドールル食べたかったん?」
「うん。こっちに来るときの楽しみの1つにしていたんだよねぇ…まぁ、でも難しいなら諦めるよ」
「ちょちょちょ、ちょいまち?」
何だろう、この話し方のイントネーションといい、人懐っこさといい、地球で言うところの関西方面の人を思い出す。関西弁とも随分と違うんだけど。
「イケメンなおにぃさん、この美少女
ちょっと待て。人懐っこい
「え?いや、いきなり?」
「いや、エッチなことしようって意味じゃないで?ちゃうちゃう」
「えーとな、ドールルなんやけど…」
ドールルに使うギリメミシリはそれなりに高価なスパイスらしい。だからドールルは食べたいから毎日食べるようなものではなく、ちょっとした記念日に食べる取っておきらしい。
「そんななんで、イケメンおにぃさん、ウチの分の材料費までだしてくれるなら、ライムちゃんが、手料理ふるまったげるで?」
「なるほど。そういうことか。うん、じゃあ、お呼ばれしちゃおうかな?」
そういう理由ね。
ま、確かに自称するだけあり、このライムちゃんは美少女ではある。どんぐり眼も、大きな眼鏡も、小柄な彼女の体格に何ともよく合っている。
耳の下まで伸ばした茶色のクセっ毛は、繋ぎ止められない自由で奔放な光を放つ彼女の目に、ぴったり合っていた。
そんな美少女からのお誘いではあるが、別に疚しい話でもないので、断る理由もない。最近は自分の顔に慣れてきたのか、スラっとこういうことが言えるようになってきた。
「アハハ!イケメンおにぃさん、即決なんて、ノリ良いなぁ。ウチ、そういう男子は好みやで?」
「そりゃあ、どうも。でも会って5分も経ってない俺をいきなり家に呼んじゃっていいの?」
会ったばかりの男を自宅に呼ぶなんて、リスクが大き過ぎる気がする。しかし、そんな俺の疑問に、ライムちゃんは、キョトンとした顔をした。
「おにぃさん
「
「そう、それや。その最初のヤツ」
「
「そうそう。
「へー、便利だね、それは」
敵対的かどうか、探らなくていいのか。人間相手だと普通に生きてる分にはものすごく役に立つなぁ。
「そうなんよ。で、イケメンおにぃさんは、めっちゃ有益ってビンビン来とるんや。だからお家にお呼びしちゃうってことなんよ?」
クイ、人差し指で眼鏡の位置を直しながら、ライムちゃんはそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます