第82話 巨大すぎる部品戦1



 巨大すぎる。たしかに、巨大すぎる。こんなデッカイ歯車、なんに使うんだろう? ギガゴーレムだって、ボディにおさまるパーツと考えたら、この四分の一が限度だよね。宇宙までとびだす何かかな?


「就労特性、精霊召喚! 戦闘離脱!」



 かーくんたちは逃げだした。



 テロップさん。いつも律儀にありがとう。



 いえいえ。ご武運を。



 テロップに励まされてしまった! やっぱり、なかの人がいる?



 僕らは一目散に廊下を走って逃げる。


「ランス。隠れ身使える?」

「さっき解いたばっかりだから、ムリだよ。十五分待ってくれ」


 アンドーくんは三十分クールタイムが必要だったはずだから、やっぱり対象を小さくとどめるのは有効だ。にしても、十五分で工場脱出できると思えないなぁ。最短距離でも三十分。


「追ってきてるかな?」

「気配、なくなったっすよ」

「アイツ、なんだったんだろう?」


 工場の見張りとして巡回してるのかもしれない。


「じゃ、時間もないし、急いで外に出よう」


 なんて話すそばから、チャラララララ……と戦闘音楽が。すうっと音もなく、僕らの背後に巨大な歯車がころがってくる。コイツ、タイヤみたいに自立しながら回転して。しかも巨大すぎるから、遠耳の圏外から、いっきに戦闘領域まで入ってこれるんだ。


「かーくん。倒すしかないんじゃないか?」と、ランスが冷や汗流しながら言う。


 試しに聞き耳してみると、巨大すぎる部品レベル20。HPは……なっ! 一万だ! スキルは案の定、ぶっとびちらかす! ぶっとびちらかすのか……ぶっとびつつの、ちらかす。


「HP10でさえ二千ダメなのに、一万……HPの二百倍ダメージと考えると、二百万! みんな死ぬよ!」


 これは、とんでもない敵だ。それにコイツ、僕らを追尾してきてるよね? ターゲットを定めたら逃がさない仕様なのか。


「アニキ。就労特性がターゲットロックオンってやつっすねぇ。発見した敵を倒すまで、ずっと追ってくるっす」


 ぽよちゃん、就労特性まで見えるのか。僕より耳がいいの? 野生のぽよぽよだから? 僕は言ってみれば、飼いぽよぽよ。野性味ゼロ。


「スキルはぶっとびちらかすだけっすよ」

「自爆必至!」


 四文字熟語っぽく言ってみた!

 いや、そんな場合じゃないぞ。緊張すると、つい笑いに走ってしまう。

 緊張緩和きんちょうかんわの法則! こっちは化学の教科書っぽく言ってみた! ギャグが止まらない。


「就労特性か。じゃあ、どうやっても封じられないね。封じる? そっか。封じ噛みすれば、スキルは一つだから百パーセント封じられる」

「でも、封じ噛みの効果は1ターンなんすよね」

「こうなれば、ランスの神の言葉で爆発をふせぐしかないね」


 と思ったら、わが美少年しもべが忠言してくる。


「わが神よ。あやつの就労特性、もう一つございます」

「どれどれ?」


 ぽよちゃんの聞き耳効果で、みんながソレを読めた。見れば、『自爆後、ダンジョン内のすべてのモンスターがその場に急行するアラームを発動させる』って書いてある。


「えっと、つまり、アイツが自爆したら、ウジットがやってくる」


 自爆させずに戦うしかないのか。ということは、つねに封じ噛みで封じつつ、逃げる……。


「しょうがない! ぽよちゃん。封じ噛み!」

「うっす! 封じ噛み!」


 ぽよちゃんが巨大な歯車の端っこにガブリとかみつく。

 すると、歯車はビーン、ビーンと苦しそうな音を立てた。



 巨大すぎる部品のぶっとびちらかすが停止した。自爆用充填エネルギー5%(100%になったら爆発します)



「ん? 充填じゅうてんエネルギー5%? コイツ、自爆するまでに数ターンかかるタイプだね?」

「そうっすね」


 よく見たら、HPの表示がなんかおかしい。HP9500(500)ってなってる。あのカッコのなかが充填されたエネルギーなのかも?


「もしかして? ペロッとな」


 チューチューしてみると、吸えた。カッコ表示がなくなって、HP9500に変わってる。充填中のHPだけ吸えた。これをくりかえしたら、コイツの爆発力を弱められるね。


 もしかして、やれるかな?

 と思った瞬間、テロップが浮かびあがる。



 巨大すぎる部品のぶっとびちらかすがリセットされました。あらためて、ぶっとびちらかす発動します。



 むーん。リセットすると、封じ噛みの効果もリセットされるのか。やっかいだなぁ。

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