第80話 セラフィムに守られる僕たち



「あれ? 爆発したのに、無傷だ。HPへってない」

「ぽよもっすよ」

「ミ〜」


 あっ、ミニコの言葉はわからない。ゴーレム職マスターしたら理解できるかな?


 機織り機はまた部品を増殖させたけど、そこであっちのターンは終わった。


「ランス。何したの?」

「だから、神の言葉だ。ありがたい神の御言葉を唱え、その聖なる力で光属性以外の攻撃が無効になる結界をはる」

「無効? 光属性以外無効?」

「いいか? ちょっと見てみ」


 ランスは精霊騎士の杖をかまえると、呪文を唱える。


「光神爆発ー!」


 ああ、自身の最強魔法使ってきたか。容赦ないなぁ。ランスの知力なら、一番弱い『光れ〜』で充分、瞬殺なのに。


 ものすごい巨大な光の柱が糸巻きを直撃する。糸巻きは燃えかすも残さず消えうせた。


「残酷!」

「どうせなら強い魔法使いたいだろ!」

「糸巻き、悪いことしてないよ?」

「いやいや。敵だからな!」


 それどころじゃなかったぞ?

 そう。今、たしかに光神爆発は効いた。ほんとに、光属性以外のすべての攻撃は無効になるんだ。


「物理的な攻撃も無効になる?」

「なるだろう。この説明なら」

「じゃあ、この結界があるかぎり、光魔法使えない敵はなすすべないじゃん」

「だから、スゴイだろって」

「うん。スゴイね!」


 糸巻きも退治したし、これで安心してバトルできるね。


「ん? ちょっと待って。この結界、切れたら、また張れる?」

「かかってるあいだは唱えても効果ないけど、次のターンでなら、かけれる」

「機織り機が部品を呼びだしても、そのターンでは自爆できない。なら、結界が切れても張りなおすことは可能」


 そして、自爆する子たちのHPは10。機織り機は一回で十体の部品を呼ぶ。全部のHPをもらったら、1ターンで100。10ターンなら1000だ。


「HPだけはさぁ。モンスターから奪うと完全に殺しちゃうから、かわいそうでとれなかったんだよね。でも、自爆する子は出た時点でもう死ぬことが確定してる。かーくん、ちょっぴり非情になる!」


 というわけで、そのあと、僕はつまみ食いチューチュー。部品をなめてるみたいで、なんとなくサビっぽい気がしたけど、塩気のきいたトマトジュースだと思えば、味はごまかせる。


 もちろん、エルは途中でランスが生き返らせたよ。でも、退屈そうだったけど。僕がずっと無限に増殖する部品をチューチューしてたからさ。


「やっと一万超えた。HP10を吸って増やすの大変だね。そろそろ、いったんバトル終わらせようか。さきを急ぐんだった」


 僕が一万HP吸ったってことは、みんなも1000から1500ていどは増えたんだよね?

 レベルの低いエルで確認してみると、なぜかHP1825になってる。たしか、レベル12でHP110だった気がするんだけどな。二割多いような? ま、いっか。多いぶんにはオッケー!


「じゃ、最後は機織り機をやるよ?」

「光神爆発!」

「ああっ、だから、もっと優しく倒そうよ」

「派手な魔法が好きなんだよ!」


 まあ、これなら次に部品が出てきても楽勝かな。

 たくさん倒したから、経験値も多い。エルがいっきに20レベルあがった。それに、野生の部品が宝箱百個落とした。なかには『やや大きい歯車』が入っていた。


「ミニコ〜。歯車だよ。お食べ」

「ミ〜!」


 歯車をおせんべのようにかじるミニコ。前にミニゴーレムが落とした『ふつうの歯車』はランダムでいずれかの数値を10アップしてくれたんだけど、やや大きいから、それより伸びるはず。


「あっ、体力が20あがったね。一個20か。いっぱい集めよう」


 それにしても、広い工場だ。ほとんどの部分が平屋建てで階段はない。それだけが救いだ。

 糸巻きや機織り機や部品と戦いながら、僕らは奥をめざす。


「アニキ!」


 とつぜん、ぽよちゃんが注意をうながす。


「強い敵の気配がするっす!」

「だね。かなり強いなぁ。HP10万超えてるっぽい」


 ボスがこの近くにいる。

 この町を牛耳ってる、ウジットに違いない。


「フローラン!」

 叫びながら、エルがかけだす。


「エル! ダメだ。ボスとは戦わないように、隠れ身で行かないと」

「……うん」


 そこからは隠れ身で姿を消して、慎重に歩いていく。

 やがて、ある部屋の前にたどりついた。

 この扉の奥に、ウジットがいる?

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