第68話 可愛いモンスター大冒険
「わーん! みんな、嫌いー!」
「ケロちゃん。一人で走りまわったら危ないっす」
「ほっとけばいいのよ。ぽよちゃん」
「にゃーにゃー。遊んでるにゃ? トイも遊びたいにゃー!」
四者四様の声をあげ、走り続ける四人。
先頭で走りだしたケロちゃんだけが、ほかの三人から少し離れている。このままではケロちゃんが迷子になってしまう。ぽよちゃんはスピードファイターをかけようとした。そのときだ。
「ケロー!」
闇のなかに響く悲鳴。
フワリと生あたたかい風が舞った。
ぽよちゃんは立ちどまり、暗闇に目をこらす。ぽよぽよは昼行性だから、あまり夜目はきかない。が、前方でケロちゃんをつかむ影が見えた。モンスターではない。人間のようだ。
(ん? たしか、アニキが言ってたっす。ウールリカにはもう人間は残ってないんじゃないかって。でも、これは人間の匂い?)
いつのまにか、ぽよちゃん視点でストーリーは進む。
ごめんよ。ケロちゃん。かーくん的に、ぽよちゃんは
さらに、耳をすます。
複数の人間の話し声が聞こえる。
「これ、昼間の……だろ?」
「たぶん」
「よりによってカエルか。それもぬいぐるみだ。動いてるけど」
「このへんじゃ見ないモンスターだな。戦えるのかな?」
「アイツらの強さからしたら、そこそこ使えるんじゃないか? つれてこう」
「だな」
ハッ! ケロちゃんがさらわれてしまった!
ぽよちゃんは急いで追いかけた。が、相手の人数や目的がわからない。それに人間だから、ケガをさせると、かーくんが悲しむかもしれない。
しばらく進むと、岩山に洞穴があった。入口に木の枝やツル草がかけられて外から見つからないように隠してある。
そのなかへ人間たちは入っていった。入口の枝がどけられたとき、一瞬だけ、なかから光がもれて、人間は三人だとわかった。しかも、洞穴からは、もっと多くの人間の気配がしている。
ぽよちゃんは慎重に外からようすをうかがう。
「はぁはぁ……やっと追いついた。ねぇ、ぽよちゃん。もうほっといて帰りましょ?」
「クマりんさん。それどころじゃないっす。ケロちゃんが人間に捕まったっす」
「えっ?」
話してるところに、トイがやってくる。ネコりんは夜行性だから、嬉しそうに目がらんらんと輝いてる。
「にゃっ! もっと追いかけっこするにゃ!」
「しいっ。じゃあ、みんなでケロちゃんを助けに行くっす」
「行く、行く。行くにゃ〜」
トイは状況がよくわかってないみたいだが、しかたない。ここは、かーくんアニキの一の舎弟ぽよがなんとかしてみせるっすと、ぽよちゃんは心に誓った。
あの人間たちは、昼間のヤツらと話していた。
じつは、ぽよちゃんは遠耳で昼間の行軍中、何かがついてきていると察していた。敵意はないみたいだったからほっといたのだが、こんなことなら、アニキに相談しておくべきだった。
「さ、こっそり行くっす。人間に見つからないように。そっと、ケロちゃんを助けるっす」
「にゃっ、にゃっ。ワクワクするにゃ。お魚あるにゃか?」
「……魚はないと思うっす。カエルはいるっす」
「にゃあ……ま、カエルでもいいにゃ!」
コイツ、仲間を食う気だ——ぽよちゃんは血の気がひいた。
とにかく、枝葉のあいだから、洞穴のなかへ侵入する。なかはところどころに松明がかけられていた。せまい廊下で丸い穴の部屋がつながっている。
「にゃあ、にゃあ。これ、なんにゃ? カエルにゃか?」
トイがカリカリするのは、木の箱だ。うしろ足で立ちあがってフタをはずす。なかには武器が入っていた。
「剣っすね」
「こっちは薬草よ。盾やよろいも置いてある」
「戦いの準備っすね」
何かが怪しい。
魔物しかいなくなったはずの国に人間がいて、洞穴に隠れ住み、そして、戦いの支度をしている。これは、いわゆるゲリラというやつだろうか?
ぽよちゃんは仲間たちと進んでいく。
モンスターは出てこない。魔除けのアイテムが使われているようだ。ぽよちゃんたちが野生のモンスターだったら、きっとイヤな感じがして、とても近づけなかっただろう。
穴ぐらには人間がよこになって眠っていた。
ケロちゃんの姿はない。いったい、どこへつれていかれたのだろうか? 夜明けまでに見つけて、必ず馬車まで戻らなければ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます