第63話 神獣になった僕ら



 晴れて神獣に転職した僕ら〜!

 神獣って、一人何個でもなれるんだねぇ。僕は山びことソロモーンと白虎だ。

 蘭さんはチャーミーと朱雀。

 バランはフラウとクィーンハピネス。


「これでまた僕ら強くなれるねぇ」

「ふふふ。早く新しい力で戦ってみたいです」


 さ、じゃ、となり街へ行こうか。関所はどうやって突破しようかなぁ? なんとかして、こっそりぬけだせないかなぁ?


「じゃ、神官さま。ありがとうございましたぁ」

「待ちなさい!」

「はっ?」

「君たちほど金払いのいい信者はほかにいな……いや、なんでもない。わが職業の神から授かったこの力。君たちのために使いたい。ぜひ、このモンスター神官ゴウヨンを君たちの旅につれていくがいい!」


 ああ……悪魔って、やっぱ強欲なのかな? ホムラ先生と同じ匂いがする。


「みんなが僕の財布を狙ってる!」

「ハハハ。何を言っているのだね? 協力してくれるって言うんだから、いいじゃないか」

「ホムラ先生。狙ってるナンバーワンですからね?」

「ハハハ。かーくん、ナーバスなりすぎやで」

「シャケ。ナンバーツーだからね」

「さあ、君たちの旅につれていきたまえー!」

「ゴウヨンさん。名前がすでに強欲くさいです」


 まあいい。金に執着する魔物は御しやすい!


 というわけで、僕らは港町コットンをあとにした。ここのゲートは難なく通過。弱っちいガーゴイルが立ってたけど、僕らはみんなモンスター職だから、まったく怪しまれない。


 港町の外には土の道。敷石はされてないな。殺伐とした光景が広がってたらどうしようかと思ったんだけど、いちめん草原だ。そして、羊……のモンスターや、牛……のモンスターや、馬……のモンスターがのんびり草をはんでる。ヤギ……もモンスターだね。ウサギ……は、ぽよぽよか?


「牧歌的と言えなくもない。けど、これは完全に魔物化されてるね。やっぱり、この国にはもう人間は生きてないのかなぁ?」

「あっ、かーくん。しっ。ゴウヨンさんが聞いてます」

「大丈夫!」


 僕は百億円金貨を一枚、財布からとりだす。


「ゴウヨンさん。僕らの正体、人間なんですけど、黙っててくれますよね?」

「ほうほう……」

「ナイショにしてくれたら、コレあげます」

「われらが神はおゆるしくだされた!」


 ほらね。チョロい。


 さて、道中は平穏そのもの。出てくるモンスターも、てんで歯ごたえのない連中だ。今回、この物語、やけに戦闘シーンが少ないのはそのせいだ。だって、ザコ戦、一瞬で終わるんだもん。


「なんか、刺激ほしい」

「かーくん。贅沢ですよ」

「ほなら、一戦ずつ一人で戦ってみたらどないや?」


 というこの会話は、昼ごはんのときにかわされた。草原のまんなかで、たき火して、魔物の市場で買ってきた謎肉を調理。豪快に焼いたソレがなんの肉かは気になるが、美味は美味。ぽよぽよの肉でないことだけを願う。ぽよぽよだったら共食いじゃないか!


「とくに、ふだん前に出ない人たちが、どのくらい戦えるようになったのか、見てみたいです」と、ロランはさすが十代の蘭さん。用意周到よういしゅうとうな意見を述べる。


 西へとむかう道すじ。

 たき火を消して歩きだすと、さっそく出た。出た。



 野生のシープンA〜Fが現れた!



「かーくん! 出ましたよぉ」

 前の馬車から、蘭さんがのんびりした声で、後続猫車の僕らを呼ぶ。ゾロゾロと車をおりて、みんなで戦闘現場までおもむいた。


「じゃあ、誰が戦うの?」

「とりあえず、僕のスキルで先制攻撃になってますから、このまま、僕は後衛についてます」

「そのほうが、もしものときに補助できるからいいね」


 僕と蘭さんの会話に、三村くんが口をはさんでくる。


「ほな、おれ、イケノがどのくらい戦えるんか見たいわ」

「そっか。イケノくんといっしょに戦ったのって、僕とアンドーくんだけだよね。それも機械になる前だし。イケノくん、やってみる?」

「うん。いいよ。わがやるわ」


 イケノくん。ロボットになってからバトルを見るのは、僕も初めてだ。


 遠耳で見ると、シープンたちのステータスはHP1200、力180、防御力120など、そのていど。スキルは突進、マトンアタック、羊毛の舞だ。突進は当たると必ずクリティカルになるけどヒット率低い技。


「イケノくん。羊の数多いけど、大丈夫?」

「問題ないと思うよ」


 どれどれ。そういうイケノくんのステータスは?

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