第50話 コットン港



 願いの国は四つの世界の架け橋なんじゃないかと思う。魔界、精霊界、人界……もう一つは何かな?

 封印された四つの扉にも通じてる?

 ああ、もしそうなら、兄ちゃん助けに行けるのにな。

 そのためにも、三人の巫女の力がぜひ必要だ。祈りの巫女と夢の巫女はすでにいる。あとは予言の巫女だけ。


 そうこうするうちに、「港が見えたぞ」と船員が岸をさして告げた。


「我々は港から少し離れたところまでしか行けません。往復を考えて六日間だけ待ちます。が、もしもそれをすぎたら、あなたがたが戻ってこなくても、いったんボイクドへ帰還し、応援をつれてきます」


 船長は説明した。それはそうだろうね。船乗りは戦闘員なわけじゃないから。


「では、行きましょう。ウールバニアの城までは全員で。ただし、何かの都合でパーティーをわける必要があるかもしれない。それこそ、城には四天王がひそんでる可能性もある。その場合はヤドリギやゴドバ戦のように、パーティーを複数にしたほうがいい。そのときは馬車隊と猫車隊にわかれましょう」


 蘭さんはそう作戦を立てる。

 猫車、以前は少人数しか乗せられなかったけど、今は馬車と同じ人数が乗りこめるからね。二手になるにはちょうどいい。


「いつもみたいに、ロラン隊と僕隊にわける?」

「前衛、後衛などバランスを考えないといけません。必然的に、作戦を立てられる僕とかーくんがリーダーになりますからね」


 相談の結果、ロラン隊は蘭さん、バラン、アンドーくん、ラフランス、モリー、クマりん、ケロちゃん。NPCにスズランとゴライだ。ゴリ押しの力技を使える蘭さんとアンドーくん、クマりんがいるし、ゴライの反射カウンター、バランの薔薇がある。アンドーくんは隠れ身も使えるし、ラフランス、スズラン、ケロちゃん、モリーは後衛から補助や回復ができる。よっぽどの番狂せがないかぎり、まず全滅はしない。


 猫車で行く僕の隊は、僕、ぽよちゃん、三村くん、トーマス、イケノくん、ヒカルン、シルバン、ネコりん四匹とNPCにモッディとジョーンズさん。

 が、今回はなんと、ホムラ先生が自ら言いだした。


「私も行こうじゃないか」

「えっ? でもどうせ、戦わないんですよね?」

「戦ってもいい。ただし、条件がある」

「なんですか?」

「私の幸運値をあげてくれ!」

「……」


 ギャンブルに勝ちたいがために人間の下僕になりさがる魔神……。


「そんなにカジノで勝ちたいんですか?」

「はっ? 何を言ってるんだね? 研究のためだよ。研究のね。ハッハッハッ!」


 いや、絶対、ギャンブルのためだ。

 まあいいや。まがりなりにも異世界(この世界から見て)の魔王の一柱なんだから、それなりの力は持ってるでしょ。


 僕はホムラ先生のステータス画面をながめた。先生の数値、見るの初めてだ。



 レベル752(魔神)

 HP9795、MP22161、力1179、体力1897、知力39260、素早さ4743、器用さ19591、幸運799



 うっ! レベル752? 何それ? レベルって99が上限のはずなんだけど。


「なんでレベル750超えてるんですか?」

「魔神だからだよ。いわゆるボスキャラだからね」

「ズルイ!」


 たしかにゴドバのHP、上限の十倍くらいだったもんな。ボスの設定は人間とは違うのか。これだと、僕らがつまみ食いや小説を書くで数値いじってなければ、あっけなく敗北してた。ふつうのゲームなら充分、魔神にふさわしい。でも、たしかに幸運値ほかにくらべて、やけに低いな。


「レベルが752で幸運値799ってことは、レベルアップで平均1しか上昇しない」


 知力四万とMP二万ばっかり突出してる。クセ強系のボスだなぁ。


「そのかわり、僕らを襲わないでくださいよ?」

「そんなことしたら、誰にコインを恵んでもらうんだね!」

「……じゃ、幸運に書きたせるだけ書きますよ」

「頼む! ぜひ頼む!」


 一万はかるく書けた。二万も……行ける。以外と三万も突破。四万はムリだったけど、三万五千たせた。


「ふむふむ。これで、私も君のように……ふふふ」


 やっぱりギャンブルのためだ……。


 それにしても、魔神なだけある。ステータスそのものより、とんでもないスキル持ってる。職業でおぼえる魔法をすべて使えるとか、魔法効果二倍とか、便利な生来特技がたくさんあるんだけど、そのなかでも目をひくのが、実験とインスピレーションだ。



 実験

 モンスターをかけあわせて、新種を生みだす。失敗したモンスターは死亡。成功すると仲間になる。ランクによって成功率が上昇。


 インスピレーション

 戦闘中、たまにまったく新しい魔法を思いつく。効果や能力はピンからキリまで。いい効果の魔法発生率とキープ数はランクで上昇。



 まったく新しい魔法って、そんな規格外な。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る