第40話 やっと、地下脱出!
そのあと、僕らは階段をのぼり続けた。今度は長かった。ジグザグの階段が五十階? 百階?
出現するのは、前にモンスター製造所のあった廃墟城に出てくるヤツらとほぼ同じだ。本の形をした魔法呪文を使うブッキー、そのデカいバージョンのビッグブッキー。竜兵士。ガーゴイル。まれにドラゴンが出てくる。ドラゴンと言いつつ、火は吐かない。あと、サラマンダー隊長とかね。
「サラマンダー隊長はミルキー城の地下に出たやつだね。ビッグブッキーも」
「あっ! かーくん!」
「うん?」
「サラマンダー隊長がついてきます……」
そうだった。忘れてた。蘭さんのストーカー製造機ね。そういう名前のモンスターを仲間にするスキル。
「サラマンダー隊長は頭もいいし、使える呪文持ってるんだよ。前に戦ったとき、スゴイ苦戦した」
「じゃあ、今日から仲間ですね。サラマンダーだから……」
「サラ公やな」
僕と蘭さんは同時に三村くんをにらんだ。
「あいかわらず、シャケ。ネーミングセンスない!」
「ですね。言語道断です」
「そういえば、シャケ。僕がぽよぽよのとき、さんざん、悪口言ってくれたよね? 僕が僕を食ったとか。なんでそうなるわけ? イミフー」
「ええー! あのぽよぽよ、ほんまにかーくんやったんか?」
「今? 今なの?」
「うっ、ウソやろー! 食われたんやなかったんかー!」
「いや、さっきから僕いるじゃん」
「亡霊かと思うたわー!」
「ぽよちゃん、アルテマハイテンションヘッドアタック!」
「キュイ!」
三村くんが白目むいたところで(じっさいにはアルテマハイテンションではない)、僕は蘭さんとあらためて話しあった。
「ふつうにサラでよくない?」
「それだとシャケにサラ公って呼ばれちゃうから、ちょっと凝った名前にしたいな」
「サラマン?」
「サラリーマンみたいでイヤ」
ん? ロラン、サラリーマンを知ってる。ってことは、ほんとは召喚されてきた? 少なくともサラリーマンが存在する世界を記憶してるんだよね?
「サラン」
「お皿っぽい」
「サラダン!」
「サラダっぽい」
「マサ……マサシ!」
「そんなの日本人でしょ!」
あれ? やっぱり日本から来たのか?
「ロランの故郷は京都なの?」
「京都御所の近所です」
「やっぱり!」
「え? やっぱり?」
「うちはねぇ。五条だよぉ〜」
「わあっ」
なぜか、ハイタッチ。
やっぱそうなんだ。
僕が使う小説を書くとか、つまみ食い、小銭ひろいなどの生来特技。アレを使える人ってみんな、本来、この世界の人じゃないって、前にワレスさんと話したんだよね。それなら、ロランだって、僕らの世界の蘭さんではないけど、きっとどこかパラレルワールドの蘭さんなんだ。
「あ、それはともかく、サラマンダーは?」
「そうだった」
「ダマン! マンダラ! ラマダン! サンダー!」
「ん?」
「ん?」
僕と蘭さんの声がそろう。
「サンダー?」
「サンダー。ラとマをぬいて、サンダー」
「それでよくないですか?」
「だね」
というわけで、サラマンダー隊長はサンダーだ。見ためは二足歩行のトカゲ。炎使いの剣士系だ。よろいや剣を装備できる。炎属性のダメージを吸収する炎のマントを自前で着てた。
「さ、新しい仲間も増えたし、がんばってここから脱出しましょう!」
蘭さんに励まされて、みんな「おおっ!」と声をあわせる。
摩天楼非常階段風ダンジョン。ほんと長いなぁ。おかげで、精霊どころか、精霊騎士もマスターしたよ。
「ああ、僕も精霊王にはなれないね。僧侶や魔法使い系の人は精霊まで。商人や戦士系だと、精霊騎士までおぼえられる」
「ちょっと疲れてきました。もう何階ぶん、あがりましたか?」
「百はとっくに超えてると思う」
「百二十五だよ」と、アジ。アジは数字に強い。
「古代の人は、なんで、こんな階段を地下に造ったんでしょう?」
こっちは蘭さん。
僕は『この下におれが眠ってる』と言ったユークリッドの言葉を思いだしていた。
何かを封印するため?
国と国の架け橋を?
最初は仲よく交流していた四つの国。精霊の国。魔族の国。古の国。そして、人の国。
彼らはなぜ争ったんだろう?
なんのために?
それは、どんな結果を生んだのかな?
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