第39話 今度こそ、地上めざして



 どうやら、ギガンテスの胃袋じたいがあの世とこの世をつなぐゲートだったようだ。ギガンテスに丸飲みされないと、外に出られない。


「もしかして、そうじゃないかと思ったんです。かーくんに伝える前に僕が移動しちゃったから、このまま二人だけ戻ってこなかったら、どうしようかと思いました」


 蘭さん、考えこんでたもんね。まさかの探偵モードをここで発揮してくるとは。

 たしかに、ミニコやシルバンもブリキのオモチャっぽいロボットに戻ってる。


「そっか。帰ってきたのか」


 でも、なんだろう? そうとわかると、むしょうにさみしいな。ぽよちゃんとお話しできない。ミニコも『ミ〜』しか言わない。


「ぽよちゃん」

「キュイ」

「ああ、ぽよちゃんの言葉、やっぱり僕も理解したい!」

「精霊職をマスターしたら、わかるようになりますよ」

「そうなんだ?」

「僕もあの洞くつのなかでマスターしたんです」


 それで、蘭さん。ぽよぽよの僕の言葉が通じたのか。ということは、蘭さんの適職は精霊系?


「じゃあ、僕も精霊マスターしよ。ね? ぽよちゃん?」

「ピュイピュイ!」


 なんとなく、「いいすっね! アニキ〜」と言った気がする。最初はショックだったヤンキー語がなつかしい。


 転職ももうできるようになっていた。願いの国とそれにつながるエリアをぬけだしたからだ。チョチョイと精霊に転職しといて。


「ところで、ここは?」


 見ると、周囲は大きな岩がゴロゴロころがった洞くつ。目の前に暗い穴があって、階段が上に伸びている。

 あのギガンテスが守ってた橋の奥の場所によく似てる。でも、違うのは、階段や岩壁に緻密ちみつな古代文字が刻まれてること。


 現実世界だ。いや、ほんとの僕の世界じゃないけど、この異世界では現実側。たぶん、魔神がくずした坑道のさらに下方だろう。


「上から落ちてきたからか。じゃあ、この階段をあがっていけば、ノームの坑道まで帰れるね」

「行きましょう」


 急がないと、いろいろやることがあるぞ。

 猛はどうなったんだ? それに、たまりんは?

 たまりんは……やっぱり、いない。ウールリカにあるっていう本体に魂がひきよせられたんだろうな。


「まず、ボイクドの城に戻って、ワレスさんに報告して、そのあと、僕はウールリカに行く」


 魔界にも行きたいよ? もちろん、猛を助けたい。けど、魔界への行きかたがわからないじゃないかー!

 ふぅ……ここは、しょうがない。魔封玉から解放はしたから、なんとか自力で逃げてくれると信じよう。


「祈りの巫女、夢の巫女、予言の巫女。三人の巫女がそろわなければ、封じられた扉の奥に行けませんからね」と、蘭さんも賛成してくれる。

「たぶん、あの扉のうちどれかが魔界に通じてるんだよね?」

「そうでしょうね」


 ボイクド城の地下、シルキー城の地下、それに、ヒノクニの王家の墓に、巫女だけがひらけるっていう封印された扉がある。

 本来は四つ、そういう扉があるらしいんだけど。もう一つはどこにあるのかわかんない。もしかしたら、ウールリカかな?

 どの扉も大国の王城やその関連場所にある。古代で扉の管理をしてた一族が、代々、王になってきたってわけだ。


 祈りの巫女は、蘭さんの……勇者ロランの双子の妹スズラン。

 夢の巫女は、ヒノクニのセイラ姫の姉キヨミンさん。

 そして、たぶん、予言の巫女が、ウールリカのたまりん。たまりんって本名はなんだろう? 火の玉モンスターだから、たまりんって僕がつけただけ。


「三人の巫女がそろってきたんじゃないの?」


 僕が言うと、蘭さんやほかのメンバーも、おもてをひきしめる。


「いよいよ、封印されしゲートのむこうへ行くときが近づいてきてますね」


 そうかもしれない。願いの国や魔王城で、僕は古代人たちの言葉を聞いた。ユークリッドさん。スリーピング。ホウレンの顔も見たし、これまで謎だった魔王や四天王、絵本に描かれていた物語の真実に少し近づけた。


 それは、はからずも、最終決戦にむけて大きな運命が動き始めたってことなんだ。

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