第26話 小説ランクアップと、もらった指輪
僕らはスリーピングを残し、牢を脱走した。夜明けまでに魔王城をぬけださないと。
前衛は僕、猛、ぽよちゃん、シャケ。それに、NPCのジョーンズさん。あっ、後衛いないんだ。
「にしても、タケル。おまえ、裏切りのユダやったんか!」
「本物じゃない。だから、捕まったんだろ。そういうおまえこそ、ゴドバに協力して、おれたちを裏切ってたくせに」
「言うてくれんなやぁ。反省しとるわ。ほんま」
ハハハ、ハハハと笑いあう猛と三村くんの会話を聞きながら、僕は空中に浮かぶ自分のステータスを凝視する。
見間違いじゃない! 小説を書くのランクがあがってる。
「僕! 小説を書くのランクあがった! さっき、スリーピングのお姉さんを生き返らせようとしたときだ」
重要人物、蘇生させられないかな? あ、ダメか。それはムリだった。また数値系だ。なになに? 自分または仲間のステータスを任意の人物に譲渡できる、か。
「ん? 数値を譲渡? それってつまり……」
たとえば、僕、ここに来るまでつまみ食いしまくったから、素早さと器用さが八万超えちゃってる。ボーナスがつくと、かるがるマックス超過だ。もったいない。
じゃあ、さっき書きなおしたとき、五万以上はエラーになって、書きこめなかった三村くんの素早さに、僕から端数ぶんの1432を移動させると…… 素早さ3156から4588に——なった! できたぞ。
てことは、今後は僕がつまみ食いでモンスターから数値を集め、みんなにバラまけば、際限なく仲間を強くしていける。
あっ、そうそう。それと、さっき指輪もらったよね。大切なものだから、大事に使わせてもらわないとね。魔法はついてるかなぁ?
吸血の指輪(黒)
装備品魔法 吸血・改
装備中、仲間が吸血系特技を使うと、得た数値の10〜20%ぶん、装備者のステータスも増える
えっ? これ、めっちゃ便利じゃない? これをつけてさえいれば、僕や猛がつまみ食いしたら数値が増えるんだ?
ん? もっとスゴイこと考えついたぞ? それって、三村くんの仕立て屋の特技で指輪をコピーできたら、パーティー全員が装備できるようになるんじゃ……。
「へへへ……へへへへ……」
やっぱり、この世界は僕に甘いなぁ。
「シャケ。この指輪、装備して増やしてよ。ほかの装備品もつけてると、指輪が増える確率へるからさ。しばらく、武器も防具も全部はずして。指輪だけつけとけば、百パーセント、これがコピーできる。そしたら、次にスリーピングにあったとき、オリジナルの指輪を返せるよね」
「せやから、キュイキュイ——」
「猛! 通訳!」
「はいよ」
ていうかさ。なんで、猛は声聞いただけで、僕だとわかったのかなぁ? 姿見ても、たいしておどろかなかったし。愛? 兄弟の絆? さすが、兄ちゃん!
「えっ? おれに装備品ぬげって? タケル。このぽよぽよ、かーくんを食ってしもたんやで。信用したらあかん」
「イヤだからな。それは、このぽよぽよが、かーくんだから……」
「アハハ。かーくんがぽよぽよなわけないやろ」
ダメだ……今一瞬、鈍感すぎる友人に対して殺意をいだいてしまった。
「シャケ。それ以上つべこべ言ったら、今後、シャケ弁当って呼ぶからね?」
なんでかわかんないけど、シャケの顔色が変わった。
「今、コイツ、可愛い顔して、ゴッツイ悪口言いよったやろ?」
そういうのだけわかるのか。エンリコはプレゼントの単語だけ聞きわけたよね。
「シャケ弁当」
「あかんわぁ。気分悪いわぁ」
「シャケとイクラの親子丼」
「おれ、体育ずわりしょうかなぁ」
「じゃあ、黙って装備品をはずして、この指輪つけて」
「しゃあないなぁ。もう、かなんわぁ」
よし! 説得できた!
これで、吸血の指輪が増えるぞ。仲間の数ぶんはムリでも、三、四個は欲しいよね。
そんな話してるうちに、罪人の塔を出た。行きの秘密のぬけ道を通って、本丸一階まで戻ってくる。
「兄ちゃん。ここから、どこ行くの?」
「こっちだ」
魔王城の端っこまで行かないといけないのか。まだまだ、さきは長いな。でも、ここから脱出したら、これからは猛ともずっといっしょにいられるぞ。
そう思うと、心が弾むかーくんであった。へへへ。
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