最終話 大将軍・呂青

 さらに数年後。


 万里の長城の向こう側まで兵を進めた。

 匈奴と連合軍を組み、鮮卑を征伐するためである。


 劉協から紅龍旗を借りている。

 一時的ではあるが大将軍の位も与えられた。


 鮮卑のリーダーは三兄弟で魁頭かいず歩度根ほどこん扶羅韓ぶらがんといった。

 兄弟仲はあまり良くなく、付け入る隙が大いにあった。


「鮮卑では一番強い男が族長になるのだろう」


 道案内の青年に鮮卑の言葉で話しかける。


「昔はそうでした。しかし世襲されることが多くなりました。そのことを鮮卑の各部族は不満に思っています」


 敵影を見つけた、と斥候から報告が入った。


 数は一万くらい。

 先遣隊だろう。


 呂青は予定通りの場所に味方を待機させる。

 本隊が囮となり敵の主力を誘い出すのだ。


 馬がブルブルっと首を振った。

 すでに飛電は引退しており、牧場でのんびり過ごしている。


 今乗っているのは飛電の息子だ。

 親に似てイタズラ好きな性格をしている。


「鮮卑の戦い方は研究している! 訓練通りにやれば負けることはない!」


 呂青は平地に布陣する。

 鮮卑の騎馬隊が迫ってくる。


 大した敵じゃない。

 呂布の騎馬隊はこの十倍怖い。


「弓を放て!」


 その隣には妻がいて一緒に戦ったとも噂された。


 ……。

 …………。


 後年。

 学者の陳寿ちんじゅらがこの時代の歴史を編纂した。

 呂布、劉協、呂青に関する記述も存在しており、一部を抜粋すると下記の通り。


◆呂布◆


 最高位は大将軍。

 生涯一度も敗北しなかった。


 正妻との間に三女がいた。

 他に養子一名あり。


 董卓を誅殺し、劉協を支えた。


 武勇に秀でており天下無双と称された。

 呂布の兵士は一人で十人の敵を倒した。


 呉起や白起との比較について。

 呂布には威張ったところがなく人々から敬愛された。

 呉起や白起は才能を鼻にかけ、野心を隠そうとせず、他人を許さなかったため、考えられる限り最悪の最期を迎えた。


 項羽との比較について。

 呂布は民や敵にも優しかった。

 狭量だった項羽と比較するのはおかしい。


◆劉協◆


 即位から二年は董卓の傀儡だった。

 それから三年で版図を回復した。


 その功績は高祖(劉邦)や世祖(劉秀)に匹敵する。


 玉座に座っているだけで天下統一した。

 劉協が何もしなかったと言う人もいる。

 これは三流の人間の発言である。


 蔡皇后と終生仲が良かった。


 袁紹との比較について。

 劉協の臣下は主君のために働いたが、袁紹の臣下は自分のために働いた。

 劉協のような君主を聖天子という。


◆呂青◆


 最高位は大将軍。

 正妻との間に三男四女がいた。


 名臣の衛青と合わせて『二青』と呼ばれた。


 呂布の功績の中には呂青の功績が含まれている。

 分けるのが難しいし、父子なので分ける必要がない。


 よく調べてから事に当たった。


 年下の者や格下の者を軽んじなかった。

 人々は困ったことがあると呂青に相談した。


 董卓に命じられて歴代皇帝の陵墓を暴いた。

 董卓滅亡後は私財を使って陵墓を修復した。


 高順や張遼と仲が良かった。

 他には孫策、荀攸、李粛、華雄、賈詡、典韋、馬超、趙雲、於夫羅と親交があった。


 辺境における統治で大いに活躍した。


 呂青の時代から義理の兄妹で夫婦になる者が増えた。

 両親から許可を得るには『呂青の前例にならいます』と言えば事足りた。


 …………。

 ……。




《作者コメント:2022/05/09》

読了感謝です!

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思い入れのあるシーンは多いですが、丁原の死(第41話)と李儒の死(第82話)は涙なしに書けません……。

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父ちゃん無双 〜呂布奉先は天下一強くて優しい漢だった〜 ゆで魂 @yudetama

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