第71話 華北の王者・袁紹
公孫瓚が袁紹に大敗したらしい。
その報告を受けた時、呂青は槍を手入れしていた。
「公孫瓚の
「十年分の食糧と十重の城壁があります。難攻不落という意味では中華で五指に入るでしょう」
城の内側に田畑があるらしい。
兵士を使って屯田できるから半永久的に籠城できる。
「公孫瓚は易京城以外を失ったか。これで幽州は袁紹の手に落ちたも同然だな」
かつて呂布が手合わせしたいと名前を挙げた相手だった。
残念ながら公孫瓚の騎馬隊と対戦するチャンスはなさそうだ。
呂青は地図を広げる。
この国は大きく三つに分けられる。
華北(黄河より北)、華中(黄河と長江の間)、華南(長江より南)である。
華北の内、袁紹の支配が及んでいないのは并州のみ。
次の戦場は確定したといえる。
「千里隊に命令だ。袁紹が西へ向けてくる兵数、その構成、指揮官、侵攻の時期を調べてくれ」
「承知です」
曹操の動きも気になった。
寿春には徐栄と華雄の二名が駐屯している。
いつでも曹操を背後から牽制できるよう、十分な武具や兵糧を蓄えていた。
「やるか、袁紹」
呂青は独り言をいった。
……。
…………。
鄴にいる千里隊から続々と報告が入ってきた。
「袁紹が檄文を出しております」
「ほう……漢王朝と対峙する覚悟を決めたか」
檄文は名士の
劉協のことは非難せず、廷臣のことを痛烈にこき下ろす内容だった。
袁紹は以下のメンバーを逆臣と呼んだ。
呂布、李粛、徐栄、華雄、胡軫。
樊稠、張済、韓遂、馬騰、馬超、徐晃。
王允、李儒、孫堅、孫策……etc。
罪状は以下の通りだった。
大忠臣の董卓を殺した罪。
大忠臣の袁術を殺した罪。
賊と徒党を組んで民草を弾圧した罪。
皇帝を傀儡にして漢王室を私物化した罪。
勝手に法をねじ曲げた罪。
詔を偽造した罪……etc。
呂布については『父親殺し』『主君殺し』の罪を足すのも忘れていない。
「あの二人が大忠臣とは笑わせるな。自分が反董卓連合の盟主だったことを忘れたらしい」
この檄文に目を通した呂布は、
「俺のことを父親殺しとか主君殺しとか罵倒するのはいいが、故人である孫堅まで逆臣に含めるのは明らかにやり過ぎだろう」
といって眉根を寄せた。
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