76.憧れの人 ~幸田実果子~
10月21日(金)
私が矢沢あい先生の作品で1番最初に読んだのは「ご近所物語」でした。この作品で私が憧れを抱いたのは、その主人公の「幸田実果子」です。
実果子は一人っ子で、幼い頃に両親が離婚しています。漫画家の母と2人で暮らしていて、服飾の学校、ヤザガクに通う高校生です。お隣さんのツトムは小さい頃からの幼なじみで、ずっと実果子と一緒です。本編にはその2人と周りの人達の恋愛、友情、人生について描かれています。
私がその中で1番感動したのは、本編とは逸れますが過去編です。過去編は、実果子が中学生時代に出会ったクラスの「委員長」目線で描かれています。委員長はまさに「委員長」といった感じの性格。周りの空気を読んで、自分の人生に期待せず生きています。そんな2人の過去のお話です。中学生時代、実果子はクラスの人から虐められていました。原因はハッキリしています。
「中2の時 クラスに幸田実果子という名のすごく小柄な女の子がいて 私はひそかに彼女にあこがれていた」
「腰まである栗色の髪と 耳たぶに光る3つのピアスと 桃色の唇」
「どれも校則違反だったけど どれも彼女には似合っていた」
これは過去編の導入部分。要は実果子はクラスで浮いた存在だったんですね。性格もハッキリしていて思ったことはどんな人にもドカン!と言ってしまうので、余計に虐められる原因に。でも実果子はそれでもいつだってキラキラしていました。
「自分の店を持って世界中の人にあたしのデザインした服を着てもらうの!すごいでしょ!」
「おしゃれする時のドキドキワクワクする気分を あたしの手でみんなにも感じてもらうんだ!」
委員長は大きな夢を満面の笑みで話す実果子に、初めて嫉妬します。私はしょせん型抜きのおにぎりでとてもつまらない存在だと言われた気がした、という委員長の言葉も私の心に深く響きました。
幼稚園、小学校、中学校、高校と全て虐められた経験がある私は、当時これを読んだ時もそうでした。家でメソメソ泣くことしか出来ない、嫌なことを嫌と言えない自分とは裏腹に、どんなに周りに理解されなくてもそれに逆行してでも、大きな夢を持って胸を張って自分を表現する。中学生ながらにして、それが出来てしまう実果子がかっこよくて眩しくて、初めて読んだ日に号泣したのを今でも覚えています。
私は実果子のおかげで、どんなに嫌なことをされても、誰にも口を利いてもらえなくても、学校を休むことはありませんでした。実果子みたいな強い人になってやる。絶対こんなものには屈しない。そう思えました。
今の私には、実果子のような大した夢はありません。周りの目だって相変わらず気にして、自分の中に生まれる不安と戦いながら日々過ごしています。でもこれをしたいな、あれをしたいなという自分の気持ちに真っ直ぐ向き合えるようになってきました。遅くてもいいから、私は実果子のような堂々と胸を張って生きれる、そんな人になりたいです。
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