【ホラー】代わりにやる影
ある日、僕の影は僕の足から離れ、勝手に動き回るようになった。
僕の代わりに朝ごはんを食べ、僕の代わりに学校へ行き、僕の代わりに塾へ行き、僕の代わりに夕御飯を食べて、歯磨きをする。
全ての用事を済ませると僕の足に戻り、僕の一部になる。
お父さんもお母さんも友達も、みんな僕の偽物と話していることには気付かない。
最初は驚いたけれど慣れてしまえばとても楽しい生活だった。
だって、影が外に行っている間僕は好きな事だけしていられるのだ。
漫画を読んでもいいしゲームをしてもいいしベッドでゴロゴロしていてもいい。
どれだけ怠けていても誰にも気づかれないし怒られない。
こんな日がずっと続けばいいのに、と僕は思った。
ところがしばらくしたある日、目が覚めると影は僕になり、僕は影になっていた。
影が動いた通りにしか動けない。自由がない。何もできない。
助けて、と僕は叫んだ。
だけど誰にもその声は聞こえないようだった。
そして誰一人、影が偽物だと気付いてくれる人もいなかった。
だってずっと僕の代わりをしてくれていたのだから。
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