第60話 アリアス、最強の武器を手に入れる

『フハハハッ! 謝っても許さんぞアリアスゥウウ!!』


 やれやれ。


「それはこっちのセリフさ」


『なんだと!?』


「君の触手はファイヤーボール程度で燃える防御力なんだぞ?」


『ハハハ! しかし、ここまで密着してしまえば炎魔法など撃てまい! 貴様の体も燃えてしまうぞ!』


「だったら回復しながらファイヤーボールを撃てばいいじゃないか」


『愚かな! そんなことができるもんか!』


「普通の人間なら無理だな」


『なに!? 何が言いたいのだ?』


 腕が縛られてて眼鏡を上げれないのが辛いな。



「僕は合成魔法が使えるんだ」



 ダマンデウスは目を見張る。


『合成魔法だと!? それは魔賢者が使う高等魔法。どうしてそんな知識を知っているのだ!?』


「魔法暦書で知ったんだ」


『読めるのか!?』


「まぁね。時間はかかるが知識の宝庫さ」


『うぬぅう……』


「僕は、炎の魔法と回復魔法をミックスして使うことが可能だ。どれ、君の触手で実験してみようかな?」


 僕の体から、金色に光り輝く炎が現れた。


「ファイヤーボールとライフの合成だから、ファイヤーライフってとこかなぁあああ!!」


『ギャァアアアアアアアッ!!』


「僕の火傷は回復する! 君は燃えてしまうぞ!!」


『わ、わかったぁああああ! 降参だぁああああ!! この炎を消しくれぇえええええ!!』


 触手は緩んだ。



パチン!



 と、僕が指を鳴らすと炎は消えた。


『うう……お、恐ろしい奴……』


 ダマンデウスは触手をシュルシュルと纏め始めた。

 それは互いに捻れ合い、1本の杖となる。


 ほう。

 持ちやすいじゃないか。


『我を使うがいい。アリアス・ユーリィ。お前には最強の力を与えよう』


 そういえば、さっきから最強、最強と連呼しているが……。


「君の能力はこの杖の先についたメーターで、様々な物の数値を計ることだけだろ?」


『そ、そうだが……。何が言いたい?』


「それって、邪神の邪具の中でもさ……」


 多分、最弱だと思うんだけど……。


『な、な、何がいいたいのだ? わ、我は最強の邪具なり!』


 ふ……。やたらと最強を誇示したがる。

 もしかしたら、こいつ……。

 今まで、邪具の仲間にバカにされてきたのかもしれないな。


 でも、プライドもあるだろうし、黙っていようか。


「そうだな。君は最強だな」


『う、うむ。わ、わかれば良いんだ。わかれば』


「これからよろしく頼むよ。ダマンデウス」


『ならば、早速、我を使え。どんな存在も数値化してしんぜよう』


 じゃあ……。


「まずは、君が破壊した研究所を修復しようか」


『魔力風3.272 魔力湿度2.514 魔力光力44──』


 ダマンデウスのメーターの越しに、光る数字が浮かび上がった。


 何!?

 

「小数点までわかるのか?」


『フハハ! 当たり前だろう! 我は最強の邪具なのだ!!』


 これはいい。魔力計器より性能が高い!


 こいつが最弱であっても、僕にとっては最強の相方かもしれないぞ。


 自然魔力の数値が詳細に把握できるのなら、設計はより詳細に組むことが可能だ。


 今まで再構築の魔法は120の魔力量でやっていたが、これなら半分で、倍以上の威力が出せる。


 それに、こんな使い方も……。


「ダマンデウス。自然魔力から、魔力関数と、流動魔力方程式を使って答えを導き出せ。できるか?」


『フン! お安い御用さ』


 空中に光る数式が浮かび上がる。


 なるほど……。

 これなら魔法陣は必要ないな。





「リビルド!」





パァアアアアアアアン!!



 と、辺り一面は強い光りに包まれる。


 瞬く間に研究所の修復は完了した。


 ララは歓喜の声を上げる。



「うはぁああ! 研究所が綺麗になりましたよ!!」



 うむ。

 いい感じだ。


「お兄ちゃん凄い! 再構築の魔法を魔法陣が無くてもできちゃったよ!?」


『ヌハハ! 我のおかげよ』


「でもさ。あんたに的確な指示を出してるお兄ちゃんが凄いよね? この数値ってわかってても使えるのはお兄ちゃんくらいだしさ」


『うう……。小娘。痛いところをついてくるな』


 カルナは目を細めた。


「アリアス……。そいつはもう暴走しないの?」


「ああ。もう大丈夫さ。こいつの目的は数値を測りたいだけだからな。色んな物を見せて数値を計測させれば暴走はしないさ」


「だったら安心するけどさ。また、私の体を縛ったらアリアスにとっちめてもらうんだからね!」


『うう……』


 ララは目を輝かせる。


「それにしても、瞬時に自然魔力を計測してしまうなんて凄いです。設計士とは相性が抜群。アリアスさんは最強の武器を手に入れましたね!」


「そういうことになるな」


『フハハーー! 我は最強なりぃいい!!』





 数日後。

  

 ヤミンがやっていた地下水の調査は無事に完了した。


 深さ80メートルも下に水が眠っており、それを汲み取るには特殊な井戸になる。


 これを真面に作っていたのでは数年かかるだろう。


 僕はダマンデウスの杖を深々と地面に刺して詠唱した。




「ビルド!」




 井戸は瞬く間にできてしまう。


 うん。

 上出来。


 それを見た魔法使いたちからは絶賛の嵐。


「凄い! こんなに難しい井戸を一瞬で!?」

「神か!?」

「流石はアリアスさんだーー!!」


 ついでに、駅を作ってしまおう。

 

 両国間の中央になる場所だ。


 鉄道の保全や、その他、諸々のケアをする目的だ。


 駅の設計図はもう頭に入っているんだよな。


「ダマンデウス。僕の駅を再現する数式を出せるかい?」


『フハハ! 数値化の具現化など容易い! 誰にモノを言っておるのだ! 我は──』


 わかってるよ相棒。


 最強の邪具、だろ。





「ビルド!」





 駅は瞬く間に形成された。


「凄ぇええええ!!」

「え、駅まで一瞬で……」

「はぁ……。前代未聞だな……」

「あ、圧巻だな。言葉が、出ない……」


 駅名は少し印象的にした。


【黄金駅】


 王都新聞では、この駅の周辺で2億の金塊が出土したと掲載されたからな。

 この名前なら覚えやすいだろう。


 さぁ、一通り終わったぞ!


 魔力機関車の試験運転は良好。


 施設関連は完璧。


 明日は国王を乗せて試乗会だ!


 王室のみんながどんな反応するか楽しみだな。

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