第2章 外交官アリアス・ユーリィ

第41話 外交官とエマ 【エマside】

ーーエマ視点ーー


 私はロントモアーズ魔法騎士団長。エマ・コンヴァーユ。


 今日ほど嬉しいことはない。


 まさか、


 ああ、まさか……。


 



 アリアスが外交官になるなんてぇええええ!!




 思いもよらない、このビッグニュースに飛び上がって喜んだ。


 外交官とは国同士の仲を取り持つ官僚のこと。


 いわば、国を動かす役人。

 

 そんな職業に彼がなるなんて……。


 なにやら、ジルベスタルでは、大変盛り上がったイベントがあったようで。


 魔法設計の性能比較テストらしいのだが、一体どんな内容だったのだろうか?


 来賓になったのはロントモアーズでも主要な大臣だけ。


 ああ、私もそのイベントに参加したかった。


 そうすれば、アリアスの勇姿を見れたのに……。


 それで、そのイベントをきっかけに、ロントモアーズとジルベスタルが同盟国になるらしい。


 しかも、その外交を勤めるのが彼なのだ!


 ああ、これで会える機会が増えたぞ。


 今日は新品のピアスを付けることにした。


 少し大きめの、ダイヤの宝飾。フフフ。


 味気のない鎧姿では、お洒落が限られるんだ。


 お昼を過ぎると会議が始まる。


 会議と言っても、おもに両国の交流がその内容。


 担当するのは勿論、彼だ。


「やぁ、エマ。君も会議に参加するのかい?」


「ア、アリアス!! いつ来たのだ?」


「ついさっきね。早めに来れば君に会えるかと思って」


 わ、私に会いに来てくれた?


 ンキャーーーーーー!!


 嬉しいーーーー!!


 あーー。でもダメだ。


 魔法騎士団長の威厳がある。


 眉間にシワを寄せて、冷静に冷静に〜〜。


 キリリ〜〜。


「私は国防大臣の管轄なのだ。同盟はまだ結ばれていないからな。両国の間にどんな危険が潜んでいるやもしれぬ。国防の観点からも常に出くわすことになるぞ」


 そうなのよぉお!


 だから、あなたとは毎回会えるのぉおお!


 もう、こんなラッキーなことってあるぅ?


 神様ありがとうーー!!


「なるほど。じゃあエマの仕事を増やしてしまったな」


「別に構わんさ。国防の一環にすぎん。それより、君の方が大変だな」


「ははは。本当だ。まさか、外交官に選ばれるなんてな」


 うは。

 素敵な笑顔♡


 っていかん。

 顔が崩れてる。


 キリリ〜〜。


「名誉なことさ。外交官は能力の高い人間しか選ばれないからな。所長から官職なんて凄い出世だぞ」


「うーーん。それが良いのか悪いのか……。設計の仕事はそれなりに繁盛しているしな」


「け、兼任してるのか?」


「ああ。僕は設計士だからね」


「す、凄いな……。歴代でも類を見ないだろう。仕事の掛け持ちで外交をする人間なんて……。よく国王が許可を出したな」


「ああ。僕が譲らなかったからね。僕にだって選ぶ権利はあるさ」


「こ、国王と交渉したのか?」


「まぁね」


「き、君はあいかわらずぶっ飛んでいるな……」


 んきゃーー!!


 流石はアリアスゥウウ!!


 カッコいい!!


「でも、条件をつけられた」


 キリリ〜〜。


「条件?」


「この外交で少しでもミスが発覚したら、魔法研究所の所長は解任だってね」


 ええーー。

 なによそれぇええ!!


 国王のいけずぅう!!


「アリアスが解任されたら、残された者は大変だな」


「うん。だから、絶対にミスはできないんだ」


「そうか……。なら、困ったことがあったらなんでも言ってくれ。できる限りのことはするから」


「ありがとう。助かるよ」


 当然よ!

 アリアスはこの国を何度も救ってくれた英雄なんだから。


「あ、そのピアス……。見たことがないな」


「え……?」


 えええええええええええええ!!


 気づいてくれだぁああああああああ!!


「あは……。あはは……。ちょ、ちょ、ちょっとな……。き、気分を変えたくて……」


 ドキドキ。


 君に見せる為に付けた、なんて言えねぇええええええええええ!!


 ああ、でも気づいてくれただけで幸せだ。




「似合っているよ」




 え?


「え?」


「……あ、だから、似合ってるって」


 えええええええええええええええええええええええええええッ!!


 ちょ、萌え殺す気くぁあああああああああああああ!!


 キュン死にさせる気くぁあああああああああああああああ!!


「き、君は、そ、そ、そ、そういうことをサラリと言うのだからなぁああああ」


「?」


 い、いかん。


 平静。


 平静を装うんだ……。


 私は閃光のエマだぞ。


 それに、私は22歳。


 彼より2つもお姉さんなんだ。


 こんなことで破顔ではいかんーー!


「熱でもあるのか? 汗だくだぞ?」


 キリリ〜〜。


「い、いや……。熱はない……」


 しまった。

 これじゃあ冷たい女だと思われる!


 この対応はなかった。


 話しを膨らませぇえ。


「あ、えーーと。このピアスは最近買ったんだ」


「へぇ。君はセンスがいいな」


「え、えへへ……」


 では、なぁぁああああい!!


 破顔ではいかんーー!!


 魔法騎士団長としての威厳があるんだぁあああああああああ!!




 ……あ、でも待てよ。



 

 他の女にも言っているかもしれん。

 

 意図的に、こういうことを言って好かれようとしている作戦かもしれんぞぉお!


 騙されるもんくああああ!


「お、女になら、だ、誰にでも……。そ、そういうことを言っているんだろ?」


「何を?」


 はぁーーーー!!


 キョトンとしてるーーーー!!


 無自覚ぅううう!!


 そうよねぇ。

 アリアスに限ってそんなことなかったわよねーー!!


 意地悪な私が出たーーーーーー。


 性悪女だったーー。


 猛省ーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


 あーー。もっと喋っていたいぃいいい。


 このまま時間が止まったらいいのにぃいい。


 アリアスはどこに泊まるんだろう?

 日帰りってことはないわよね?


 ディナーを一緒したいけど、おそらくシン所長たちと食べるんだろうしなーー。


 私も参加したいぃいい。


 キリリ〜〜。


「あ、あの、アリアス。今夜のディナーは──」


「あ、もう会議が始まるぞエマ」


 はうぅううううッ!!


 

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