第7話 勇者魔法
その後は"鬼謀"が音頭を取り、3人の勇者は改めて自己紹介と一党を追放された経緯を説明した。
事前に"暴勇"の経歴について聞いてたため、
「何だお前、仲間を死ぬ寸前まで戦わせるとか面白ぇことやってんな!? あの優等生でもそんなことはしなかったぜ!」
"暴勇"はガハハと笑うと少女勇者の背中を叩いた。
少女はまるで訳がわからずきょとんとする他無かった。
「ええ、大変興味深いです。よもや
"暴勇"に続き、"鬼謀"までもが少女の魔術を褒めた。
少女は我が耳を疑った。
"化け物"呼ばわりされる程の悍ましい諸行を、何故か彼らには褒められている。
『肯定』されているのだ。
「骨を蘇らせて使役できるんだって? 竜牙兵みたいなもんか? で、数は? どのくらい操れるんだ?」
"暴勇"が少女の顔を覗き込む。ただでさえ巨漢なので近付くと威圧感が尋常ではない。
「ぁ……え、えっと……あの時は結果的に襲ってきたゴブリンの大半を使役しましたので……だ、大体20、くらい……? そ、それから先は必死だったので数えてませんっ! ご、ごめんなさいっ……!」
「おい、テメェ……」
「ヒッ……」
"暴勇"が大きな手で少女の肩を掴む。思わず少女は身を竦めた。
「……そりゃ才能だわ。すげぇな嬢ちゃん」
「ぇ……?」
「"暴勇"もそう思いましたか。才能ですよ、ええ」
"鬼謀"が頷く。少女は呆気に取られていた。
「あの
「で、でも私が操れるのは、ゴブリンみたいな小型の生物の骨だけで……それも簡単な命令しかできなくて……」
「アイツとほぼ同じことが出来てるじゃねぇか! あっちは
何故か大絶賛である。どういう訳か"暴勇"は、この少女のことを甚く気に入ってしまったようだ。
「け、けどこんな悍ましい力、勇者が使うものじゃ……」
「あー、そう言えばお前さんも『勇者』なんだっけか……」
"暴勇"は気まずそうな顔をする。かつていけ好かない黒魔術師を追放した際の自分の言葉が引っ掛かっているようだ。
「やっぱり私、勇者なんかじゃ……」
項垂れる少女。目には涙が浮かんでいた。
"暴勇"は何やらうんうんと頭を捻ると、突如拳を打った。
「そうだ、お前は勇者だ。勇者の使う魔法なんだから、そいつぁ死霊魔術じゃねぇ。『勇者魔法』だ!」
「ブハッ!!」
"鬼謀"が思わず吹き出した。"暴勇"は自分で納得したのかうんうんと首を縦に降っている。
一方の少女勇者はと言うと……頭が真っ白だった。もう訳がわからないことの連続である。
「いやはや、突然何を言い出すかと思いきや……ククク……ですが、これで光明が見えましたね。貴女のその魔術は、勇者である貴女が行使するに限り『死霊魔術』ではないのです」
「え……ちょっ、ちょっと待ってください! そんなの屁理屈じゃないですか!?」
「『勇者』という職業は、既存の枠組みから外れたような素質があるようですよ」
「はい……?」
少女はまたもや訳がわからず首を傾げた。
「古の英雄譚には、炎と氷の相反する二属性魔法を混ぜ合わせた勇者が居ました。剣術を極めて魔法の域に至った勇者もいました。であるならば……骨を蘇らせて使役する勇者が1人くらい居てもいいんじゃないですか?」
突拍子も無いことを言い出す"鬼謀"に、少女は思考が追い付かないでいた。
「まぁなんだ、細かいことは気にすんな! お前の力を認め、それを必要とする奴が要る。それで充分じゃねぇか!」
「ええ、全く持ってその通り。私には、貴方の力が必要なのです」
"鬼謀"と"暴勇"は顔を見合わせて笑っていた。
そんな2人を見ていたら……釣られて少女も笑ってしまった。
初めて自分という存在を心から『肯定』されたのが嬉しくて、少女は思わず笑みが溢れてしまった。
「(お母さん、私もう少しだけ頑張ってみてもいいよね……?)」
「よし、話しは纏まったな? んじゃ俺は帰るわ。世話になったな"鬼謀"の」
「お待ちを、本題はここからです」
帰ろうとした"暴勇"を"鬼謀"が呼び止める。
「"暴勇"の、私には貴方の力も必要なのです。……提案なのですが、我々で
何度目かわからない驚愕の提案。
だが、今回は明らかに空気が変わった。
「あ゛……?」
"暴勇"が未だかつて無い程殺気立っていた。
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