セマザサ族の刺繍

作者 くれは

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★★★ Excellent!!!

 架空の民族の架空の風習が話の骨子なのだが、工夫をしていなければ、アイデア倒れに終わっていただろう。
 それを防いだのは、セマザサ族を研究している学者の視点から描くことで、話に奥行きを持たせたこと、そして、個人的に高く評価したいのは、固有名詞の選択。
 作者が自分で考えたのか、何かを参考・加工したのかはわからないが、固有名詞に引っかかることなく読めるようにしたのは、作品の完成度を高めるうえで、とても大切なことだったと思う。
 刺繍の内容が散文詩で説明され、それを学者が読み解く。話はその繰り返しで進むが、詩を自分で解釈してから、学者の「解説」を聞くと、読む楽しさが増すように思う。

★★★ Excellent!!!

KACのお題「日記」からこんなに素晴らしい物語が生まれるとは……これが創作だなんて信じられません。NHKのドキュメンタリーを一本見終えた気持ちです。

生まれてからの一生を刺繍にして綴っていくセマザサ族。見たもの聞いたもの、そして祈るものを刺繍にして綴っていく、その布はまさに人生を記録した日記そのもの。
途中で刺繍が荒くなった部分で子から親に受け継がれたことがわかるとか、悪い精霊の刺繍は守りの刺繍で覆ってしまうとか、本当にこの民族がどこかにいてそれぞれの物語を紡いでいるかと錯覚してしまうほどです。

セマザサ族の研究者である「私」が、雪の山と呼ばれる人物の思い出と共に語られていく民俗学。
ラストの切ない余韻が、この作品を美しく彩っています。

★★★ Excellent!!!

雪山に暮らすセマザサ族は生を享けたそのときに布を与えられ、みずからの人生を克明に刺繍していく。
……刻むように。……祈るように。
刺繍は多岐に渡る――祝い事の記録から悪い精霊を遠ざけるためのまじない。日常のなかにある喜びから哀しみ。心惹かれた花のこと。その晩、降った雪のこと。何を想い、何を感じ、何を愛したのか。
それはまさしく、命の織物。

民俗学者の記録というかたちを取ったこの小説は、土着民族の風習を綴るだけに留まらず、「命」というものの真髄を記しているように感じます。意識する、意識しないにかかわらず、誰もがいま、このときも刻み続けている命の脈動。
読後、しばらく経ちましたが、セマザサ族は確かに何処かで「生きているのだ」という実感にまだ浸っています。
そうしてこれを読んでいるわたしも、あなたも、生きている……。

ほんとうに素晴らしい小説です。このような物語を綴られた著者様にただただ、敬意を表したいとおもいます。

★★★ Excellent!!!

生まれてからの一生の全てを刺繍として記録する文化のある、セマザサ族と共に暮らした男の記録。

セマザサ族の刺繍は日記のようなもので、その刺繍の持ち主の人生を刺繍から読み取れる。

本作はひとりのセマザサ族の刺繍を読み取るものである。

セマザサ族は架空の民族であり、当然この刺繍文化も架空のそれであるが、そこに彼の生きた息遣いをも感じ取ることができる作品であり、本作を読んで是非ともその息吹を感じ取ってほしい。

日記を題材とした、おすすめの一作。

★★★ Excellent!!!

どこを取ってもリアリティのある描写で、願いや思いを込めたセマザサ族の刺繍について、もっと知りたいと思ってしまいました。
このお話がくれはさんの想像力によって生み出されたことのへ驚きと、創作の面白さ、その純粋な喜びを改めて感じられる作品でした。