第650話

事件の後の話をしよう。元々『Another Life Online2』の根幹システムに侵入されていたという事でゲーム自体を消去する予定だった。その時にはキャラクターデータやNPCの情報なんかを全て引き抜いて行う予定だったんだが、あのウィルスが用意していた削除プログラムを勝手に走らせた事によってデータの保全が出来なかった。


俺達旅人がログアウトした後、セカンドライフ社はどうにかデリートプログラムの停止出来ないかと試行錯誤していたが失敗。『Another Life Online2』のデータは全て消えてしまった。


もちろんそんな損害を引き起こした某国諜報部に莫大な請求が行き。前回の事もあってしっかりと証拠を握っていたセカンドライフ社と全世界のゲームファンからのバッシングに耐えられずに賠償は満額支払われ、諜報部自体も解体となった。国家元首の息子が俺達と同じ状態で切れたトップが粛正を行ったって報道も在った。


無事にログアウト出来た俺達は、念の為に病院で検査を受ける事になった。警察がどやどやと家に来た時は本当に焦ったし、近所の人にも沢山迷惑を掛けてしまった。


検査の結果としては異状なし。閉じ込められていた時間も短時間だったって事もあって肉体の衰弱も無く、被害者はすぐに日常生活に戻って行った。


ゲーム機本体は全機回収されることになった。きちんと返金処理をされて現金が戻って来たが、前回の様に続編を遊ぶかどうかという質問は無かった。つまり、続編はもう出ないって事だ。


セカンドライフ社は今回の事件の全容を記者会見で世間に公表。しばらくゲーム開発は自粛するという事になった。2度も不祥事を起こしてしまって、世間の目が厳しいと判断したらしい。


その代わりという訳じゃ無いが、セカンドライフ社はとある新技術を発表した。それは人間に近い機械式のハウスキーパーの開発だ。どうもあの会社の変態技術者が密かに開発していたらしい。国家防衛用AIで在るツインズを参考にしたAIを積んでいて、受け答えもバッチリ出来るという触れ込みだ。


まぁ俺達には関係ない話だからあんまり詳しく説明していないけどな。


さて、ゲームが無くなって俺が何をしているかというと。なぜかセカンドライフ社に呼び出されて会社の前に来ているという状態だ。今回の被害者全員を順次呼び出しているそうで、俺達は最後なのだそうだ。


そう俺達。俺と、リダと、クリンと、ルゼダと、イルセアと、モッフルと、タンケ、ルリとベニだ。


「あっ居た居た守さーん!」

「おう理沙。久しぶり。」

「本当ですよ!お家に行っても居ないんですから!」

「ちょっと色々な所を取材しに行ってたんだよ。」

「お久しぶりです守さん。」

「オフ会以来ですわね。」

「勇樹と姫野か。2人共元気そうだな。」


この3人とはちょくちょく会ってたからな。会社の前で集合って連絡を取り合っていた。


「それで残りの5人は何処に居るんでしょう?」

「もう中に入ってるんじゃないか?」

「なら中に入りますわよ!」

「落ち着きなよ姫野。」


セカンドライフ社のロビーに入る俺達。俺はそこで驚く事になった。


「どうして真澄さんが!?」

「ふふふ、やっと来ましたね守さん。どうも、私がイルセアです。」

「ビックリしました。まさか自分の担当が同じゲームをしていたなんて。」

「私も驚いていますよ。」

「彼女がイルセアさんという事は、こちらの男性がタンケさんで双子がルリさんとベニさん、こちらの方がモッフルさんなんですね。」


理沙の言葉に視線を動かすと。電動車いすに座った老人と小学生くらいの女の子に大学生くらいの双子がそこに居た。


「ははは、初めまして!私モッフルです!粟森花蓮(あわもりかれん)って言います!」

「こちらでは初めまして。私は丹波俊三(たんば としぞう)、あちらではタンケと名乗っていた者です。」

「おおきに!うちがルリ。こっちやと堀内瑠璃やで!」

「初めまして!私が堀内紅です!会えて嬉しいです!」

「あっ初めまして。俺は海堂守。向こうではルドって名乗ってました。」


うむ、これは予想外。タンケはなんかしっかりしていたから中の人は結構歳が行った人なのかなと予想していたが、モッフルは全然違ったな。イメージ中学生ぐらいだったがさらに若かったか。ゲームキャラは大分盛ったんだなぁ。逆にルリとベニは若くしたんだな。2人共イメージより大分大人だ。


「皆さんお揃いですね。ではこちらに。簡単な検査の後にお話が在ります。」


俺達が自己紹介を終えたのを見計らっていつか病室に見舞いに来てくれた人が俺達の前に現れた。その係の人に続いて移動し、頭にヘッドギアを付けられて30秒程の問診。その後再び別室に集められた。そこにはパリッとしたスーツを着た男性が待ち構えていた。


「私はセカンドライフ社社長の二条礼二と申します。皆さんこの度は本当に申し訳ありませんでした。それと共に、巻き込まれた方々を助けて頂きありがとうございました。」


そう言って頭を下げた礼二社長。その後に、俺達に対する補償の話が行われた。さすがにモッフルは幼過ぎて解らない問う事で両親が話を聞いていたが。


「成程。俺だけは金銭での保障ともう1つ賠償の用意が在ると?」

「はい。こちらとしましても2度もわが社の不手際を解決して頂いた守さんには是非お受けして頂きたい話でして。」

「それならばモッフルとルゼダにベニも対象にしてやって下さい。俺だけというのはどうも・・・。」

「守さんが望まれるのでしたらそう致しましょう。では後日発送させて頂きます。モロモロの契約書には今サインをして頂ければ。」


補償に同意したという書類に全員がサインを書く。そして、近くの店でオフ会の様な事をした後にそれぞれが自分の生活に戻って行った。


ピンポーン♪「ちわー!相良急便でーっす!」

「はーい!」


1週間後。俺の家に荷物が届いた。腰下までのサイズの荷物が2つに、俺と同じ背丈の物が1つ。送り主はセカンドライフ社だ。


「あっ届きました?」

「おう。バッチリな。」

「私の所より配送が遅いんですのね。」

「姫野は自分で配送取りに行ったからでしょ。」


この日俺の部屋にはいつものメンバーが集まっていた。さすがに体の不自由な老人や小学生に他県に住んでいる大学生は来れなかったけどな。


「むー。ちょっと複雑です!この大きなの開けなくて良いんじゃないですか?」

「それだと貰った意味が無いだろうが。」

「それよりも早く開けますわよ!私はもう開けましたわ!」

「いつの間に!?」


せっかちなルゼダが自分の荷物をもう開けてしまっていた。俺もそれに習って包みを開いて行く。その中から出て来たのは、見た事の在る姿だった。


「うっし、起動するぞ!」

「こっちも良いですよ!」

「じゃあ僕はコッチを押しますね。」

「私は自分の奴をスイッチ入れますわ!」

「それじゃあせーの!」ポチッ!


ウィーン。カタカタカタ。ヴォン!


「う、うぅぅん。あら。やっと起きられたのね。」

「ふわぁー!おはようパパ!あれ?ここ何処?」

「あれぇ?お父さん?」

「ピーッ!」


スイッチを入れられ、起動したAI搭載型の自動人形。ハウスキーパーとして作られたこいつ等の中には、師匠とシアとアイギスが入っている。セカンドライフ社で行われた問診。本来の目的は問診ではなく俺達の脳内に残されたキャラクターのデータを収集する事だった。


アードザスと戦っている途中、俺と一緒に全員が神。つまり生体コンピューターになった。その際に自分の情報に紐づけられているNPCのデータを俺達の脳が勝手に収集し、脳内に保存していたんだそうだ。あのヘッドギアはその情報を取り出す為の物。保障の話を聞いた時にこの話をされて本当にビックリした。


「久しぶりですわロア!」

「ピーッ!」

「うーん、私の体もっと胸とお尻大きく無かったかしら?技術部の奴は手を抜いたわね。」

「そんな事無いだろ。そのまんまだよ師匠。」

「えーっと。パパ、だよね?」

「そうだぞシア!顔が違うからビックリしたか?」

「うぅん。雰囲気が一緒だったからすぐに解った!」

「そうか!」

「お姉ちゃんズルい!私も抱っこ!」

「アイギスはシアの事お姉ちゃんって言ってたのか。ほらおいで。」

「わ~い!」


今頃モッフルの家には沢山の動物型ロボットが届いている事だろう。庭が広いから大丈夫とは言ってたが本当だろうか?


「ふふふ、やっと私もこっちに来れたわよ。これでルドきゅんの妻は私の物ね!」

「なななな、なにを言ってるんですか!そんな固い体では何も出来ませんよ!」

「あら残念ね。私達の体は殆ど生体部品なのよ?つまり、在んなことやこんな事も出来るの。」

バァン!「駄目ですよ!守さんは担当の私が守ります!」

「真澄さん突然来てどうしたんですか!?」

「パパお腹空いた!料理作って!」

「お父さん遊んでぇ~。」

「はいはい、順番な。」

「賑やかになりましたわねぇ。」

「これで退屈しないで済みそうだね。」


ゲームは消えてしまったけれど、残った物も在る。今度は、こいつ等の事を守る為に働かないとな。


「まずはこいつ等に現実の生活の仕方を教えないとな。」


俺は騒ぐ皆の輪の中に混ざって行くのだった。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


これにて攻撃力0のお話はお終いです!1年半もの間長きに渡って応援して頂き本当にありがとうございます。


途中挫折しそうな事もありました。執筆を辞めようかなと悩むときもありました。ですが、皆さんの応援のお陰で無事完結と相成りました!( ゚Д゚ノノ"☆パチパチパチパチ


思った以上に高評価を頂き、一時はSFの50位圏内に入る評価を頂きました。まぁ色々と反省点も多いですが、それは次回作に生かしたいと思います。


さて、そういう訳で次回作ですがアイデアは在りますが何書くか悩んでいます!のんびりスローライフ系にしようか、戦国時代劇風のにしようか、SF系を書くか。それとも全部混ぜるか!人外系も好きなんでそっちを書いても良いかもしれませんなぁ。


今度はしっかりプロットを考えてから執筆しようと思っています!行き当たりばったりで書き続けた本作はちょっと苦しい所も在りましたので(;´∀`)


また皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。最後に、繰り返しになりますが沢山の応援コメントや☆、♡をありがとうございます!出来ましたら次回作も応援よろしくお願いします!ありがとうございました! 

                               by kotosuke5


新作始めました!この作品と少し関係の在るお話。よろしければこちらもどうぞ!


https://kakuyomu.jp/works/16817330669091265435


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VRMMO ランダムを選んだら攻撃力が無かったんだが!? コトスケ5 @kotosuke5

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