第323話
2人を追いかけて霊廟を出ると、途方に暮れている姿が目に飛び込んで来た。
「おうおう、大分参ってるな。」
「貴様!!どの口が!!」
「止めてシール!ルドさんは約束通り相談役に会わせてくれました!今回の結果は私の力不足です・・・・。」
「アニス様・・・・。」
ふむ、絶望感に浸り切っちゃってシルのメッセージに全く気が付いてないな。しゃーねぇ。妹の不始末は兄貴が始末を付けるか。
「なぁアニス嬢?シルの言葉をよーく思い出してみ?」
「相談役の御言葉ですか?」
「そそ。何か言ってなかったか?」
俺の言葉に考え込むアニス嬢。気が付くかなぁ?気が付かないかなぁ?この瞬間が教える側は一番そわそわするよな。
「・・・・解りません。私には援助を断られたことくらいしか・・・。」
あぁ駄目だこりゃ。完全に心折れちゃってらぁ。思考力まで奪われてるな。正解を教えてやるか。
「旅人に力を借りても良い。そう言ってたよな?」
「そういえば?」
「それとな、獅子身中の虫って話。ブラドの事じゃないぞ?」
「えっ!?」
だってシルの奴ブラドの事そこまで気にしてないもん。ランスが簡単に制圧出来るような奴の事を気にすると思うか?俺は思わん!!つまり俺が聞いていない話の中にその答えが在るって事だな。
「さて、ここで問題です。シルの言う虫は一体だーれだ?ちなみに俺は話を聞いていないから全く解らんぞ?まぁ話したいっていうなら聞くけどな。」
また悩み始めたアニス嬢。今度はしっかりと頭を働かせているな。頑張れ若人よ。これも試練じゃ!!
「・・・・・。まさか?」
「何か解ったのですかお嬢様?」
「ルドさん。皆さんは何処ですか?」
「ん?今はウィンドルの修理に地下ドッグに居ると思うぞ?」
「そこに案内して頂けませんか?協力を得る為に、お話をしたいと思います。」
「おっけ、それじゃあ早速行くか。」
地下ドッグに行くにはまずは訓練場だな。さて、アニス嬢は一体誰を思い浮かべたんだろうねぇ?
地下ドッグは現在守備隊が管轄する秘匿区画扱いだ。そんな場所に別の街の重鎮を案内できるのか?結論、出来る!!というか秘匿技術の塊である飛行戦艦にもう乗せちゃってるからな。今更ドッグを見せても問題無いって判断だ。
「と言う事で連れて来た。」
「まったく貴様は・・・。大問題だろうが!!ここにはまだ私達でも解っていない技術が沢山眠っているんだぞ!!ほら見ろ!!今もあんな作業アームが突然壁から生えて・・・。」
「おう、これなら修理が楽そうだなぁ。」
「楽しそうにするな!!」
「まぁまぁ、連れて来ちまったものは仕方ない。それに嬢ちゃんから話しもあるみたいだしな。時間も無い事だしさっさと話を聞こうぜ。」
「今回だけだからな!!まったく彼女達にも口外しない様に言っておかないと・・・・。」
アインにしこたま怒られてから、アニス嬢の話を聞く為に全員を集めた。
「皆さん忙しい中お時間を頂いてありがとうございます。私はヒュマニア・リ・アニス。ヒュマニアの次期街長です。現在私の街が後継者問題に寄って混乱に陥り、民が困窮している状態です。その状態を解消する為に、皆さんの力を貸してください!!」
頭を下げるアニス嬢。シーンは止めたそうにしているが、旅人の協力を得られるかどうかでヒュマニアがどうなるかが決まるからか黙って一緒に頭を下げていた。
「手助けするのは良い。だがどうやってその状態を解消する?」
「それには考えが在ります。あなた方だけが取れる方法です。」
アニス嬢の説明を簡単にまとめると、飛行戦艦で街長の館を襲撃してある人物を確保するという。その人物と言うのが!!
「兄上達の教育係であり、父の執事を務めるシバルです。」
このシバルと言う人物。アニスたちが生まれるより前にゴルドン街長が拾って来た人物らしい。頭もよく聡明で、政治にも明るい事からすぐに重宝されるようになったそうな。
その手腕から子供たちの教育にも関わるようになり、上2人の兄妹を教えていたんだとか。だけどその結果があの体たらく。おかしいと思ったゴルドンはアニスにだけは別で雇った家庭教師を付けたと。
「それでもシバルの政治手腕はヒュマニアに欠かせません。子供の教育は苦手だったのだろうと父は執事に専念するように言ったのですが・・・。」
「なるほど、もう読めましたわ。その頃から街の治安が悪化。犯罪が横行して組織立って動く者も出て来た。その調査をしようにも執事がやると言って全く進展なし。そのうちにアニスさんは留学に出され、後継者問題が起こったんですわね。」
「説明もしていないのにどうしてそこまで解るんですか!?」
そりゃ旅人には色々な人が居るからね?シナリオライターの思考を読める奴何て超人も居る訳だよ。めっちゃ知ってる声だったけども。
「そりゃ執事が黒ですわ。」
「そう言えば裏で動く組織が在るとか?戦争の生き残りが国を乱そうと動いている何て話も・・・。」
「あっそれ俺も聞いた!!」
「その情報は事実ですぜ?ですが相手が尻尾を掴ませないから調査していやせんでした。」
「ふむ、今回はその連中が暗躍しているという事か?赤落ち達の関与は?」
「ちょっと待ってください・・・・・。何人か特殊クエストを受けたっていう報告が上がってますね。ヒュマニアに行くための裏ルート開拓クエストだとか。内容がならず者の護衛ですからこれが怪しいですね。」
「なんで赤落ち用のSNS閲覧出来てるんだよ。」
「蛇の道は蛇って言いますし?」
「さてはおまえ1回赤落ちしたな?」
説明していたアニスを放っておいて自分達で勝手に話始める旅人達。その様子におろおろするアニス嬢。まぁ何だ、もうちょっと待ってくれ。多分すぐに落ち着くから。
「結論!!ヒュマニアの騒動の裏には戦争時に負けた敗残兵が関与している!!」
「執事はその敗残兵の仲間でありヒュマニアを乗っ取ってならず者を集め、また戦争を起こそうとしている!!」
「「「「「「早く止めないと!?」」」」」」」」」
「あー、まぁそう言う事らしいぞ?」
「そこまで考えていませんでした・・・・。」
3人寄れば文殊の知恵と言うが。それ以上集まっているから結論に達するのはまぁ早かったな。
「そうと解ればすぐにウィンドルを修理するぞ!!」
「他に手の空いた旅人に声を掛けて集めろ!大規模レイド戦が起こる可能性もあるぞ!!」
「置き去りにしたクランにも声を掛けます!ランクアップを報酬にすれば手を貸してくれるはず!!」
「えっあのっ皆さん助けてくれるんですか?」
「「「「「「当然!!こんな美味しいクエスト逃す手はない!!その代わりクランランクアップよろしく!!」」」」」」」
「・・・・皆さん本当にありがとうございます!!」
感動してるところ悪いけどアニス嬢?ちゃんと話聞いてたか?こいつ等面白そうっていうのと報酬でやる気出してるだけだからな?まぁ俺も一緒だけど。
「旅人と言うのは何というか、こんな人達ばかりなのでしょうか?」
何やら深刻な顔をしたシールが俺に声を掛けて来た。まぁこんな人質ばかりじゃないと思う。多分、きっと。
「こいつらが特別変わってるだけだと思うぞ?まぁ俺も含めてだけどな。楽しそうな事が最優先、その次に報酬が良い奴って感じか?まぁ今回はクランランクを上げてくれれば何でもいい訳だが。」
「お嬢様は勝てるでしょうか?」
「逆に聞くが、これで負けると思うか?」
俺が指さした先にはどんどん修理が進み、何なら強化してしまおうと動き回る旅人達の姿が。そのバカでかい大砲はどっから出て来たんだ?えっ?地下ドッグの奥に格納されてた?乗せられないから戻してきなさい。
「・・・・・・。聞いた私が馬鹿でした。」
「だろ?さてと、アニス嬢も手伝っているみたいだし俺達もやるぞ。早く修理して問題はちゃっちゃと片付けたいんでな。」
イベントへの参加申請期限が迫ってきているからな!!
「貴方に暴言を吐いた事、謝罪いたします。」
「良いって気にすんな。それよりちゃっちゃと片付けるぞ。」
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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