第305話
「こわっ!!」
「ふむ、かなり出来る御仁で御座るな。」
「それ言いたいだけじゃないの?」
「メアちゃん下がって!」
「危ないです!!」
「くっメアちゃんのお義父さんは無事か気になりますぞ!!」
「かくなる上は我等が敵討ちを!」
まるでダンジョンに現れるボスの様な風貌の熊を前に私達は戦闘態勢を取ろうとしました。ですがその熊さんを見てメアちゃんが駆け出します。
「お父さん!!」
「おぉメア!!心配したんだぞ!!」
「「「「「「へっ?」」」」」」
熊さんに抱き着き笑顔を浮かべるメアちゃん。その時初めて、メアちゃんがずっと被っていた頭巾が脱げました。するとそこには可愛らしい熊耳が。
「ぐふぅっ!!」
「兄者!!ぐふぅぅぅっ!?」
「熊耳幼女尊い・・・。」
男性の3人はその姿を見て鼻血を垂らしながら倒れ。
「メアちゃん可愛い!!」
「あぁぁぁぁぁやっぱり連れ帰りたい!!」
「是非妹になって欲しい!!」
メアちゃんを可愛がっていたお姉さん方がピコピコと動く熊耳に身悶えし。
「思わずスクショを取ってしまったで御座る。」
「まさに美少女と野獣ね。」
「こら、失礼だぞ。」
「でも言おうとしてる事解るわ。あの父親でこの娘は生まれんだろ。」
盾さん達が抱き合っている熊さん達を見て感想を漏らしていました。
他の人達も似たようなもので、あまり似ていない2人に唖然としている様子。かく言う私達も抱き合っている2人を呆然と見守っています。
「メアの事を助けて頂き感謝する。家から連絡が在ったんだがいつまで経っても来ないので心配していたんだ。」
メアちゃんを抱き上げてから、私達が居る事に気が付いた熊さんが感謝の言葉を口にしながら頭を下げました。そんな様子に慌てる私達、するとルゼダちゃんがすっと前に出てくれました。
「いえいえ、メアちゃんはおつかいを達成しようと頑張っていましたわ。私達はその手助けをしただけですの。」
「お父さん!!メア頑張ったよ!はい来れ、忘れ物!」
「おー、ありがとうなメア。どれどれ?」
籠を受け取った熊さんは、その中を見て驚きに目を見開きます。
「おぉ!!妖精の果実にチョコレートの実、それにバオンの実か!!凄いぞメア!!なかなか手に入らない物ばかりじゃないか!一体どうしたんだ?」
「蜂蜜のお礼に貰ったの!!」
「そうか、じゃあお父さんも張り切って料理を作らないとな。皆さんもメアを助けてくれたお礼です。是非食べて行ってください。」
「では、遠慮なく頂きますわ。」
熊さんがその大きな体を無理やり扉の中にねじ込み、私達もその後に続きます。店内はとても明るい雰囲気で、植物や可愛らしい飾りがそこら辺に飾られとてもオシャレになっていました。
「・・・・あの風貌でこの店内?」
「似合わないよね?」
「いや、意外とマッチしてるかも?」
店内の様子とさっきの熊さんがどうしても結びつかなくて困惑する私達。するとお店の奥からコック帽とエプロンを付けて出て来た熊さんが苦笑していました。帽子とエプロンを付けた強面の熊さん・・・・。ちょっとコミカルな印象に変わりましたね。
「全部妻がやったんですよ。私は料理しか出来ませんで、その他の事は全部この子の母親がやった事です。」
「お母さんすっごい頑張ったんだよ!!」
お父さんの前でエッヘンと胸を張るメアちゃん。しかもお父さんの真似をしてかエプロンと帽子をかぶった姿に私達は癒されます。
「さて、それでは料理を準備させて頂きます。」
「何を作ってくれるのですか?」
「月並みですが、カレー等どうでしょう?」
「お父さんのカレー人気なんだよ!!」
ぐぅ~。
カレーと聞いて食欲が湧いたのか、私達の何人かのお腹から音が鳴ります。結構な時間クエストを行っていたので、空腹になっていたみたいですね。
「何人かとか言ってますが、なったのはリダさんのお腹だけですよ。」
「私達を巻き込まないで欲しいですわ。」
「良いんです!!皆もお腹空いたでんでしょ!!」
「はっはっは!それでは気合を入れて準備させて貰います。メアも手伝ってくれるかい?」
「うん!!メアも頑張る!!」
「では皆さんは席に着いて待っていてください。」
お店にはカウンター席とテーブル席が準備されていました。私達はカウンター席に、他の皆さんはテーブル席に座りました。すると2人が料理を始めます。
その光景はまさにファンタジーな光景でした。食材が宙を舞ったかと思えば、熊さんがどうやって持っているのか解らない包丁を走らせます。すると、食材の皮が剥かれ、丁度良いサイズになり、鍋の中に吸い込まれて行きます。
その間にメアちゃんも一生懸命お鍋に水を入れたり、食材を準備したり、メアちゃんが持って来たチョコレートの実を砕いたりと手伝っています。
ピコピコと動く熊耳は可愛らしく、一生懸命お手伝いをする姿はとても可愛かったです。そんなメアちゃんの姿を目で追っていると、私達の鼻にとても良いカレーの匂いが漂って来ました。
「いつの間に!?」
「凄い手際です。」
「メアちゃんを見ていたらカレーが完成していましたぞ!?」
「全く気が付かなかったわ・・・。」
「ふむ、スパイスから調合するとは本格的なカレーの様だな。」
「見てたの?」
「店主の手際が良くて参考にしようとな。スパイスの比率迄は解らないが、かなり作り込んで居るみたいだぞ?」
「材料斬るのも速かったしなぁ。」
料理の完成があまりにも早かった為にそれぞれが驚いています。そんな中、カレーの準備が終ったのか熊さんが手を拭きながら私達に注文を聞きに来ました。
「ご飯とパン、ナンも用意できますがどれが良いですか?」
「私はナンで!!」
「それじゃあ俺はご飯で!!」
「パンをお願いできますか?」
「カツカレーとか出来ますか?」
「えぇ、出来ますよ。トッピングも準備できます。」
「おれから揚げカレーが良い!!」
「卵とか入れられますか?」
「チーズ入れてくれ!!」
それぞれが好きな組み合わせでカレーを頼んでいきます。私はシンプルにカレーとご飯、クリン君はパンとチーズカレー。ルゼダちゃんはなんとオムカレーを頼んでいました。
「はいどうぞ。熱いうちに召し上がれ。」
「「「「「「「頂きまーす!!」」」」」」」」
スパイスカレーと言えばサラサラのスープカレーを思い浮かべますが。このカレーは日本人の舌にあうドロドロの家庭カレーになっています。口に含めば、蜂蜜とリンゴ、バナナの甘さに加えてチョコレートの苦みとレモンの爽やかな風味を感じます。旨味も深くとても美味しいカレーです。
その美味しさにお代わりを望む声が続出、店主も笑顔でそのお代わりに答えていました。そんな中、今食べているカレーに私は既視感を覚えます。このカレー、どこかで食べたような・・・・。
そんな時、キッチンの中でお代わりを準備しながら、次のカレーを作っている店主の背中が見えました。その背中が、とても良く知っている人の背中と重なります。
「あーーーーっ!?」
「どうしたんですのリダさん?」
「いきなり大声を出すとビックリするじゃないですか。」
「どうしたんですかお客さん?」
私が突然大声を上げた事で皆の注目が私に集まります。私はそんな注目の中熊さんの正体を口にしようとしましたが・・・・。
「**********!!」
「本当にどうしたんですのリダさん?」
「感激するほど美味しかったんですか?」
「おいおい嬢ちゃん、言葉を失ってんぞ?」
「確かにそれくらい美味しいけどね。」
なんと、熊さんの正体の部分だけ言葉にならなかったんです。これはセーフティが掛かったという事でしょうか?熊さんはと言えば、私にだけ見る様に片目を瞑って口元で一本指を立てていました。なるほど、内緒と言う事ですね。
「すみません、次はナンで貰えますか?チーズとほうれん草、ウインナートッピングで!!」
「畏まりました。」
「そんなの在るのかよ!俺もウインナー入れてくれ!!」
「納豆とか入れられますか?」
「大丈夫ですよ。」
「マジか!カレーに納豆って合う?」
「試しにやってみて、結構合うから。」
「うっそでぇ。じゃあ試しに納豆追加で。」
私達はその後も、カレーが無くなるまで熊さんのレストランで打ち上げを続けるのでした。
イベント『夢幻の世界』クリア!!
イベントシークレットクエスト『少女のおつかい』クリア!!
特殊条件
少女が無傷である事
少女の持っている籠が無事である事
☆元聖女のお婆さんを助けた。(報酬UP・魔物討伐数+)
☆フォレストクイーンの一族を助けた。(報酬数UP・魔物討伐数+)
☆密猟者の捕縛(スキルUP報酬獲得・森からの贈り物獲得)
特殊条件をクリアしたため、該当する報酬が支払われます。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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