第295話
「2番バルブを開けて3番レバーを下げてくれ。」
「っしょー!!これで良いか!」
「その後4番レバーを中間で止めて、5番バルブを閉める。」
「こ、こうか?」
「後は足元の12番スイッチを入れたらやっと起動だ。」
「複雑すぎる上に長すぎる!!」
「一度起動したら完全に停止するまでは簡単に起動状態に持って行けるからな。その分最初の起動には複雑な手順が居るんだよ。」
ヴォォォォォォォン
アインに指示を出しながら、設置し直した魔道変換炉の調整を終える。いやぁ、さすがに手順を覚えてるか不安だったが、機関士たちの鬼の指導を覚えていて良かった。無事に変換炉が起動した。
「お疲れさん。これでルシファーはまた空を飛べる。」
「ふぅ・・・。本来このクエストはもっと複数の人でクリアするんじゃないか?じゃないとこの手間の数が説明できんぞ・・・。」
「お疲れさまでした。」
「本来はキニスが言ってたとおり空中都市に行ってからくる場所なんじゃないか?それだともっと大人数でクリア出来るから楽なんだろ。」
「まったく、ルドに声を掛けてなければあのボス戦でやられていたし、これだけの人手も確保できなかったぞ。改めて感謝する。」
「俺も懐かしい物を見れたからな。無理行ってついてきたわけだし成果が出せて良かったよ。」
クエスト 眠る翼 をクリアしました。
協力者ルドに報酬が支払われます。
特殊アイテム 黄昏の結晶 結晶の中にはいつかの誰かの思いが眠っている。
協力者アイギスにも報酬が支払われます。
特殊アイテム ランダムスキル権 その種族が取得可能なスキルをランダムで取得する。本人以外が使う事は出来ない。
おっと、これでクリアなのか。それで貰ったのがこの結晶っと・・・・。何に使うんだコレ?オレンジと綺麗な青色が入り混じる結晶なんだが・・・。思いが眠っている?どう使うかもわからんしとりあえずインベントリに入れておくか。
そんでもってアイギスにも報酬が出たのか。友魔にも報酬が出るのは珍しいな?それだけアイギスが活躍したからか?これを知ったらシアの奴が文句を言いそうだ。けどこの前暴食スキルを覚えたばかりだからな。アイギスも羨ましがっていたし、このスキル券はアイギスが復活したら有難く使わせてもらおう。
「クエストクリアおめでとさん。それで?この後はどうするんだ?」
「うん?それはもちろん、飛ぶだろ?」
「はい?」
「せっかく修理したんだ、今日からこの船は私の物。だったら今から空を飛ぶに決まっている!!おあつらえ向きに手伝いは沢山居るからな。」
「私達マジックドールが完璧にこの飛行戦艦を運営して見せましょう。」
あっキニスも乗り気なのね。他のマジックドールも頷いているし、もしかしてこの子達このままルシファーで活躍するつもりか?
「そうだな。キニス達にはこの戦艦の運用を手伝って貰う。その為のスキルがいつの間にか手に入っていたからな。」
「どんなスキルなんだ?」
「整備というスキルだ。恐らく私が機人種だからマジックドールを修理していて手に入れたんだろうな。機械系列の物や人を万全の状態に整えるスキルらしい。これが在れば変換炉の初回起動を毎回せずに済むしキニス達の修理も万全に行えるな。」
「私たちはこれからアイン様の元でこの飛行戦艦でお世話になるつもりです。何体かルド様のお世話に付けることも出来ますが?」
「いや、俺は自由気ままにやってるからお世話とか良いよ。それならアインを手伝ってやってくれ。1人にするの心配だからさ。」
「はい、もちろん私達で支えさせて頂きます。ですが助けて頂いた恩をお返ししないのは心苦しいです・・・。そうですね、お世話係をお付けしないのであればこちらをお持ちください。」
ルドは魔道人形のコアを手に入れた。
「これは?」
「修理しきれなかった姉妹のコアです。もしどこかで体を手に入れたのであれば、その子を蘇らせてください。」
「どっちにしろお世話係が増える訳か。」
「ふふふ、その子がルド様達と一緒に行くことを望んだのです。どうか姉妹をお願いします。」
そう頭を下げられちゃ受けるしか無いわな。それに体を手に入れたらって事はマジックドールでなくても良いとも受け取れる。この先使うかは分からないが連れて行ってあげよう。
「解った。大切に預かるよ。」
「話は終わったな?それじゃあ飛行戦艦ルシファー・・・・いや、もう私の船なんだ。名前も変えよう。そうだなぁ・・・・。飛行戦艦ウィンドル!!こいつの名前はウィンドルだ!!」
「風と人形の英語もじりかよ。相変わらずネーミングセンス無いな。」
「五月蠅い!!この船は彼女達と私の絆なのだ、だからこの名前で良い!!さぁウィンドル発進だ!!」
「「「「「「「了解」」」」」」」」
地下で蘇った飛行船がその翼を広げようとしているその時、地上はと言うと・・・・。
「それで?爆発音の元凶は発見したか?」
「どうやら地下で起こった爆発の様です。訓練場に居た兵士全員の全力の調査でやっと判明しました。」
「その地下への入り口は?」
「普段は倉庫として使っている建物の床に地下へと続く通路を発見しております。現在は中に入らず、入り口を封鎖しています。」
「ご苦労。そのまま封鎖を続けてくれ。」
訓練場で兵士達を見守っていたトイナ。すると突然爆発音が訓練場に響き、兵士達は突然の爆発音に臨戦態勢を取った。その混乱した現場を収める為に動いた彼女は、兵士達に調査を命じて爆発の原因を探っていた。
「地下で爆発か・・・。確かアインが今日探索に赴くと言っていた場所がその付近だったはずだな。」
部下から調査を任せて欲しいと言われ、報告を聞いていた場所が丁度そこだったと思い出すトイナ。すると、突然訓練場に謎の声が響き渡る。
『警告!!警告!!これより地下ドッグより飛行船が飛び立ちます。地上部分に居る職員は直ちに避難して下さい。警告!!警告!!これより地下ドッグより飛行船が飛び立ちます。地上部分に居る職員は直ちに避難して下さい。』
「なんだ!?何が起こっているのだ!?」
トイナが驚き、他の兵士達もその突然のアナウンスに戸惑っていると、アナウンスを聞いた旅人達が突然周りにこの場所を離れる様に言い始めた。
「すぐに逃げろ!!この場所は危険だぞ!!」
「地下ドッグ何て在ったのかよ!!畜生俺達が見つけたかった!!」
「地下から飛び立つって事は・・・・。開くのかな?それとも持ちあがるのかな?」
「どっちもで良いけどここに居たら危険な事に変わりねぇだろ!!お前等もさっさと逃げろ!!」
旅人の言葉に誘導され訓練場を後にする兵士達。トイナの元にも1人の旅人が話をしに駆けつけていた。
「トイナ教官!!」
「クリンか!これは一体どういう事だ?何が起こっている?」
「詳しい説明は後でします。それより全員の避難指示を!!ここに居ると巻き込まれてしまいます!!」
「それは必要な事なんだな?」
「人命を守る為には絶対に必要です。」
真剣なクリンの表情に人命が掛かっていると言われれば動かざる終えない。トイナは大声でまだ動かない兵士に避難指示を出した。
「全員この場を離れろ!!避難最優先だ!!」
トイナの言葉でやっと動いた兵士達。全員が訓練場から退避を済ませると、突然地面が持ち上がり始めた。それを見て戸惑うのは住民たちばかり、逆に旅人達の方はと言えば盛り上がっていた。
「おう!!開閉式の方だったか!」
「だとしたら地下で加速して飛び出すパターンだな!!」
「いや、上昇してから飛び立つパターンもあるぞ!!」
「飛行船は全部壊されたと聞いてたのにまだ在ったんだな。地下ドッグでまた作れるんだろうか?それなら俺も1台欲しいなぁ。」
「「「「「それな!!」」」」」
混迷を極める状態の兵士達。その時、先程響いたアナウンスと同じ声が再度兵士達の耳に届く。
『飛行戦艦が発進します!!飛行戦艦が発進します!!カウントダウン開始。5・4・3・2・1、発進!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!ブワッ!!
開いた地面から飛び出した青と白で染められた飛行船は、その翼を大きく広げて空に飛びあがって行った。それを見た旅人達は歓声を上げ、住民は昔話にしか聞いていなかった飛行船が実際に飛んでいる光景を見て呆然と空を見上げている。そしてその中で一番テンションが高い人と言えば。
「ひゃっはーーーーーーー!!空は最高だぜぇぇぇぇぇぇ!!」
「名前も色も変えて自分の飛行戦艦になった事がうれしいのは解る。だけど最初から飛ばし過ぎだ!!60年近く寝てたんだからもっと慎重に行け!!」
「そんなのこの子は望んでいない!!最初から全力で飛びたいと言っている!!」
「そんなのアインが言ってるだけだろ!!良いから止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
巨人の叫び声は澄み渡った青空にむなしく吸い込まれて行った。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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