第290話

起動したエレベーターに乗ると、俺達が乗った足場は下へと音もなく下がって行った。どうも全体にエネルギーが生き割った様で、壁を照らす緑色の光が動く足場に合わせて見え隠れしている。


「クエストの次の目的はどうなってる?」

「次は到着したフロアで壊れた機械を直せとなっているな。」

「それって道具が必要なんじゃないか?俺達専門的な道具は何も持って来てないぞ?それに複雑な機械だったら修理何て出来ないだろう?」

「私もそう思ってヘルプで聞いた。どうやらその場所に行けばガイドがでるらしい。」


おぉっ!!ヘルプさんはALO2でも健在でしたか!!そう言えば全く気にしてなかったな。


「ルドの体調はまだ大丈夫なのか?私とアイギスには何も影響が無さそうだが。」

「うーん、まだこれと言って影響は無いな。ログを見る限りまだスキルが俺の事を守ってくれている。」

「特別なスキルと言っていたな?どんなスキルか聞いても良いか?」

「うーん、これに関しては簡単に漏らして良い物かどうか・・・。」

「そうか、なら聞かないでおこう。」


ただ乗ってるだけってのも暇なもんで、アインと話をしているとアイギスが俺の服の袖を引っ張った。


「ヾ(・д・` )ネェネェ」

「うん?どうしたアイギス?」

「(*・・)σ」

「うん?まだ到着してないだろ?何かある・・・・あっ。」

「おー!!これほど巨大な物が地下に眠っているとは!!これは世紀の大発見では無いか!!」


そんなに話し込んでいたつもりは無かったが、いつの間にかエレベーターは広大な地下倉庫の様な場所に降りてきていた。そして、その場所に在りアイギスが指さした物はALOプレイヤーであれば懐かしいと感じる物。そうでは無かったアインはALO2から始めた新規だという事だろう。


地下倉庫に眠っていて、これから俺達が修理する物。それはかつて大空を駆け、多くの旅人に夢を与え、大航空時代を作り出し最後には浮遊大陸を作り出す切っ掛けとなった物。そう、黒い翼と砲身をその身に備える飛行戦艦ルシファーの姿がそこに在った。


「おぉぉぉぉ!!すごい!!これが何か解らないがとにかく凄い!こんな大きな物が動くのか!!」

「そうだな、これは俺達旅人がこの世界で初めて1から作り出した物だ。飛行戦艦ルシファー。かつてこの船はそう呼ばれていたよ。」

「ルドはこれが何か知ってるのか?」

「あぁ良く知ってるよ。こいつの処女航海には俺も乗ってたんだからな。」

「それは本当か!?どんな感じだったんだ!!教えてくれ!!」


さっきまでと違って目を輝かせ子供の様にはしゃぐアイン。普段は軍人っぽい言動を取っているが素はこっちなんだろうなぁ。そしてそんな彼女に詰め寄られた俺はかつての光景を思い出しながらこの飛行戦艦の雄姿を語ってやった。


「この世界で人類初の飛行に龍の国の発見と巨神とドラゴンとの戦闘まで・・・。この船はそんなにすごい船なのか!?だがどうしてこんな場所に眠っているんだろうか?それに修理するのはこの船の様だが?」

「確かにそれが不思議なんだよな。地上に在った飛行船ドッグは全部壊されてたし、ルシファーに至っては旅人が所有していたはずだから、旅人の消滅と一緒に消えたと思ってたが・・・。」


旅人が消える前に住人に譲渡していた?ウケン達なら・・・。やりそうだな。自分達が使えなくなるなら、他に冒険好きなやつにポンと渡してそうだ。


「ルド。クエストの説明文が更新された。古の飛行戦艦その物らしいぞこれは。」

「そうなのか?じゃあやっぱりこれはオリジナルか。だけどどうしてここに?それに戦争では使わなかったのか?言っちゃなんだが初期の飛行船だけあって実験兵器や何やら積み込みまくってて結構強いはずだぞ?」

「戦争の最中、敵が飛行戦力を手に入れようと旅人が使っていたこの船を狙っていたらしい。船を譲渡された人が万が一鹵獲されてはこの船を譲ってくれた旅人に顔向けできないと技術者達と協力して地下深くに隠したらしいな。だがその技術者達と当人が飛行船ドッグ事爆破されて殉職した。そしてこの場所は忘れられた・・・と書かれている。」

「なるほどな。そしてその場所をアインが発見したわけだ。だけどそれなら機人種の誕生の秘密ってのは何だ?」

「それはまだ解らん。とりあえずこの船を修理する事が先の様だ。かつての歴戦の船をこの手で修理する・・・。ワクワクしてくるな!!」


あぁうん、途中まで軍人ぽかったのに最後まで持たなかったな。その気持ちは非常に共感できるものだけどな!!


話している間もどんどん下降していたエレベーターは見えていた地下ドッグに無事到着したみたいだ。念の為に警戒していたが、到着後すぐに襲撃!!みたいなことも無く、俺達は無事にルシファーの前に辿り着いた。


「これは何処から乗るんだ?」

「確かここら辺に非常用の手動開閉スイッチが・・・・あった。」ガゴンッ

「( ゚Д゚ノノ”☆パチパチパチパチ」


どうもルシファーの動力である魔導機関が完全に止まっているみたいで、搭乗口を開く為のスイッチに反応が無い。こういう時の為に手動で開くレバーを用意しておいて良かったぜ。まだ動くか不安だったけどな・・・。


非常用のレバーを引くと、少しだけ動きはぎこちなかったが無事に搭乗口が下りて来た。これで中に入る事が出来るな。


「おー!!こんなギミックまで仕込んでいたのか!」

「皆の血と汗と情熱とロマンを詰め込んでるからなぁ。こんな事もあろうかと!!って言いたいが為に色々と仕込んでいたはずだ。これはその1つだな。」

「(((o(*゚▽゚*)o)))」

「あっこらアイギス!!中は安全か分からないんだから勝手に入るな!!」

「追うぞルド!!」


搭乗口が開いた事でアイギスが勝手に中に入ってしまった。俺達も慌てて中に入るが・・・。うん、ここに来て俺の体に異変だ。何か体の中で暴れている力を感じる。そんでもって体を徐々に食われてるような感覚が。何だこれ?


超高濃度の魔素が充満しています。

純潔による環境耐性の効果範囲を超えました。

HPに1のダメージ。純潔の熟練度が1上昇

自己回復の効果でHPが1回復


「なるほどな、スキルの熟練度が低くてダメージ入ったのか。」

「ルド!大丈夫なのか?」

「(;・∀・)…?」

「自己回復もあるから大丈夫だ。それにこれは良い修行にもなる。」


俺の異変にアインとアイギスが戻って来た。まぁ言った通りHPが減る訳じゃないし、それにこの体が食われてる感覚がもし生命力を感じ取っているなら・・・・。


ピコン♪

スキル:生命力感知 を取得しました。

生命力感知:自身、もしくは他者の生命力を感知できる。自身以外の生命探知範囲は半径10メートル。


うっし!!これでここに来た目的を1つ達成したぞ!!ついでに純潔の熟練度上げだな。


「本当に大丈夫か?」

「あぁ、新しいスキルが生えただけだ。それより奥に向かってみよう。動力が死んでるからやっぱり明かりは点かないな・・・。今準備する。」

「(´・ω・`)」

「そんな心配するなアイギス。俺は大丈夫だからさ。」

「死にそうになったらすぐにこの場を離れるんだぞ?では行こう。」


アインのクエスト情報によると、修理が必要な場所は彼女のマップに表示されているらしい。まずはその場所を修理する為の部品と工具を取りに、薄暗い艦内を進んで倉庫に向かった。


「いやぁ、懐かしいなぁ。この場所で良く戦闘訓練してたなぁ。」

「そうなのか?ここは倉庫じゃないのか?」

「旅人はインベントリに道具を全部入れてたからな。倉庫と言う名目で作ったが、実際は唯の多目的運動場だったんだよ。物が無ければ唯の広い場所だからな。」

「なるほど、おっと見つけた。これとこれだな。」

「ρ(・д・*)コレ」

「おぉすまないアイギスちゃん。それも必要だった。」


住人に譲渡してからこの場所はちゃんと倉庫として利用されていたみたいで、まだ使えそうな物が沢山眠っていた。その中から修理に必要な部品をアインと俺とで手分けしてインベントリに入れて持つ。必要な物が揃ったなら次は故障個所に行くだけだな。まぁだけどそう簡単に行くもんじゃないだろう。俺の勘はそう言ってる。ルゼダが居ればフラグが立っていると言ってたはずだ。


「故障の原因が経年劣化なら良いんだけどなぁ・・・。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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