第275話
これからの行動を決めかねていた俺達の元に慌てた様子でシルが駆け込んで来た。その表情には怒りが見えていて、何やらただならぬ事が起こった様子。一体何が在った?
「どうしたシル?いったん落ち着いて事情を説明してくれ。」
「これが落ち着いていられますか!!あの馬鹿達は一体何を考えているの!!」
「これはかなりお怒りですわね?」
「シルさん、落ち着いて事情を説明してくれないと僕達も動けませんよ。」
「シルちゃん?落ち着いてシアに話をして?」
「(((uдu*)ゥンゥン」
「ふぅー!!ふぅー!!ふぅ~・・・・・。すみません取り乱しました・・・。実はですね。」
それは俺達が狩りを始めた頃に起こった事件。何とルーシとドルーの2人とその家族が鉱山への輸送途中で逃げ出したんだそうだ。しかも護送していた兵士を手に掛けてまで逃げ出した為、すでに指名手配済みで生死問わずという扱いだとか。国王様との話も肉親であるシルに指名手配の最後の確認を行ってたんだと。
「それで?なんで俺を連れて行こうと?」
「兄様はまだ鬼神斧槍流の後見人です。そのお力で2人の居場所を探し出して連れ戻して欲しいのです。」
「あー、生きたまま捕らえて来いって事か。」
「さすがに殺してしまっては父上に顔向け出来ません。捕まえて下さった暁には私直々に躾し直します。」
「70超えた老人に躾って・・・・。」
「それで?報酬はもちろん出ますわよね?」
「ルドさんは肉親だから良いでしょうけど僕達には報酬が欲しいですね。」
「もちろん参加して頂いた方全員に報酬をお約束します。」
「具体的には?」
「金銭と、アイテムをご用意しています。」
成功報酬は1万マネ。報酬アイテムとして好きな装備かアクセサリーが1つ貰える。うん、まだ初心者装備だしやってみる価値はあるな。
「解った、その依頼受けよう。」
「ありがとうございます!!冒険者ギルドを通して指名依頼にしておきます。ルド兄様のパーティー名はどのような名前ですか?」
「俺達のPT名?そんなの決めたっけ?」
「ルドさんは知らないと思って私達で勝手に決めました!!」
「シアとアイギスも意見を出したんだよ!!」
「私達と言えばルドさん、ルドさんと言えば巨人です。そこから名を取って私達のPT名は『ティーターン』です!!」
巨神の名前でタイタンの古代ギリシャ語の方か。短い時間とはいえ神の一員になった事は在るしこの名前を付けた理由もそこだろう。でもすっごい恥ずかしい!!
「却下!!今すぐPT名変えて来る!!」
「あっ、もう正式に登録されているので無理ですよ。」
「ギルドを作った時も同じ名前にするとすでに決めてますわ。」
「諦めましょう?巨双盾神様?」
「俺にもうその権能は無いんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の知らない所でPT名がティーターンになっていた件。
「では私は早速冒険者ギルドで手続きをしてきますので、ルド兄様達はあの馬鹿の捕縛をお願いします!!」
「あっ!!と言う間に居なくなってしまいましたわ。」
「嵐の様に去って行きましたね。」
「それでパパ?居場所解るの?」
「ちょっと待ってな。印籠を取り出してっと。」
鬼神斧槍流後見人の権能発動。流派に所属した事のある人物の居場所特定。マップに表示します。
「おっ出た出た。ん?洞窟に居る?」
「それって元ゴーレムダンジョンですか?」
「そうみたいだ。でも表示がおかしいんだよな・・・・。」
「「どこがおかしいんですか(の)?」」
「ハモるなハモるな。師匠が居た場所からさらに奥が在るって表示されてるんだよ。ほれ。」
そう言いながら俺は自分が見ているマップを皆が見える様に広げた。するとルーシとドルーの居場所があの洞窟のかなり奥に表示されていた。
「私達がたどり着いたあの広場のさらに奥ですわね。」
「あそこに隠し洞窟でもあったんでしょうか?」
「そう言えばあの奥はちゃんと確認していなかったような・・・・。」
「そうです!!あの悪魔女が出て来て慌てて後を追いかけたから広場の奥は確認していません!!」
「師匠が起きてたら簡単に解るんだけどなぁ・・・。」
「起きてるかどうか見て来ましょうか?」
「あぁ頼む。」
リダが師匠の様子を見に行ってくれた。師匠はあの洞窟でずっと俺が来るのを待っていたらしいからな。洞窟の奥がどうなっているか詳しいはずだ。起きてくれていれば良いが・・・。
ドゴンッ!!
「なっなんだ!?」
「いやぁ、まだ寝てましたねあの淫乱悪魔。残念ですねぇ。」
「リダさん?その拳の血は?」
「これですか?いやぁ、大きな蚊が居たので潰しただけですよ?」
「(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル」
うん、どう考えてもそれ蚊の血じゃないよね?出血量がおかしいし、あんなに大きな音が出るくらい全力で殴らないと死なない蚊なんてまだ見た事無いよね?
「シチート姉さんがパパのキスじゃないと起きないって言ったから殴り飛ばしたみたい・・・・。」
「・・・・・・。」
何も言えねぇ。こういう時もブレないのか師匠は・・・・。しかもそれをリダに伝えるとか自殺願望が在るのか唯寝ぼけていたのか・・・・。どちらにしろ師匠はしばらく再起不能だろう。貴重な情報源ががががががが。
「パパ、行ってみる方が早いと思うの!!」
「そ、そうだな!師匠には目を覚ましたら追いかけてくるように書置きを残しておくか!!」
「(゚д゚)(。_。)ウン」
「そうしましょう!!」
「準備して洞窟に向かいますわよ!!」
俺達は師匠に書置きを残して洞窟に向かうのだった。
さて、森の奥の洞窟には一度行っているのでミニマップに情報はきちんと表示されている。そこに印籠の効果でルーシとドルー、その他の元門下生が集まっていると表示されている。
それは赤い点で表示されているんだけど・・・。前に見た時この光点は黄色だったんだよな。これってつまりは指名手配されて赤落ちと同じ扱いになって居るという事なんだろうな。そしてその赤い点は洞窟の外にもちらほらと存在している。
「洞窟の周りに見張りが居ますね。」
「武装もしていますわね。」
「あの武器は何処で調達したんでしょうか?」
「あっ見て下さい!!」
洞窟を探検しようとやって来たのか、初心者っぽい旅人が不用心に洞窟を見張っている連中に近づいて行った。その旅人達の後ろからこっそりと赤い点が近づいて・・・・。見張りが気を引いているうちに後ろからブスリ!!倒れた旅人から武器を奪ってから止めを刺している。武器を奪う前に何やら会話をしていたので、武器や防具を渡せば命は助けてやるとでも言ってるんだろうな。
「SNSにしばらく洞窟に近づかない様に書き込みしておくか。」
「それよりも協力を取り付けた方が良いんじゃないですか?」
「報酬が出せないからなぁ。指名依頼を受けたのが俺達だけだから、追加人員に関しての報酬はシルと相談になる。そうなると俺達程の報酬が支払われるとは思えないな。」
「お金と装備もしくはアクセサリーですもんね。」
「初期マップとしては結構破格ですわ。」
たぶん俺達への報酬はシルの個人財産から出ていると思う。だって国からは指名手配されて生死問わずになってるからな。この依頼はシル個人から俺達への依頼だから追加人員も認められるか怪しい物だ。それよりもこの人数で出来る事を考えた方が良い。まぁ火力と言う1点に関してはうちには化け物が居るんだけどな。
「と言う事でアイギス。行けるか?」
「( ´∀`)bグッ!」
アイギスの武装なら複数を一斉に制圧するのも可能だ。手加減は・・・・・。アイギスの技量を信じるしか無いが、死ななければルゼダが治せるだろう。うん、他力本願とか言っちゃいけない。これが俺達が出来る最善手なんだよ。と言う事で、アイギスの砲火を合図に制圧を開始しますか。
「良いかアイギス。絶対に殺すなよ?絶対だからな?」
「(。´・ω・)? ( ゚д゚)ハッ! ( ´∀`)bグッ!」
「何か嫌な予感が・・・。」
バグンッ!!
俺にグッドサインを返した後、何を思ったのかアイギスは“全武装を展開した。”
「ちょっ!!まてアイギ『ドシューーーーーーーッ!!』」
俺が制止の声を掛ける前に、アイギスの全武装が火を噴いて目の前が真っ白に染まった。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます