第254話
3人が消え、壊れた門の外で見えない壁を叩きながら叫んでいる様子を見ていたら道場の中から1人の老婆と若い男ばかりの付き人がぞろぞろと姿を現した。豪華な服にジャラジャラと装飾品を付け、丸い体の老婆は偉そうに近くにいた門下生に声を掛けた。
「これは何の騒ぎですか?」
「これはルーシ様!!道場破りです!!我が道場を潰そうと賊が押し入りました!!」
「それならば全門下生で対処しなさい。私は忙しいのです。これからモンチ伯爵と今後についての話し合いが在るのですから。」
「それが、不思議な力を使って我等のスキルを剥奪するのです!!あいつです、あいつがあの印籠を掲げるとスキルが剥奪されます!!」
「なんですって?・・・・・あっあれは!!」
老婆が俺(正確には何時の間にか俺の肩に座っているアイギスが持っている印籠)を見て目を見開いて驚く。そして急いで俺達の前に来て頭を下げた。
「鬼神斧槍流後見人の方とお見受けします。門下生の不始末どうかお許しください。お前達も頭を下げなさい!!この方達は後継者を指名する使者の方々ですよ!!」
ルーシの怒鳴り声に一斉に頭を下げる門下生達。さてと、ここからが正念場だよな。
「久しぶりだなルーシ。元気だったか?」
「すっかりお婆ちゃんだねぇ~。」
「?どこかでお会いしましたか?」
「覚えてないのも無理はないだろうな。ルバート家の長男ルドだ。お前達の一番上の兄貴だよ。」
「私はお姉ちゃんのシアだよ~。」
「そんなっ!!父上とシル姉さまの与太話では無かったのですか!?」
「そんな訳あるかい!!実際に俺達はここに居るだろうが!!」
俺達が実在すると信じていなかったから、勝手に鬼神斧槍流の後継者を名乗っても問題無いと思ってたんだな。残念でした!!俺達は実在します!!60年間不在だったけどな。
「これは失礼しました。幾分赤子の時の事なので覚えておらず・・・・。」
「そりゃ仕方ないな。」
「仕方ないねぇ。」
「それで、今日来た要件なんだがな。お前達「ついに私達の元祖鬼神斧槍流を後継者として認めて下さるのですね!!」はっ?」
突然顔を上げたかと思えば、顔を輝かせてそんな事を宣うルーシ。ルーシの声につられて、周りで頭を下げていた門下生達も騒めき始める。
「とうとう俺達が正当な後継者に!!」
「これで本家の連中を黙らせられるぞ!」
「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」
あのね?話は最後まで聞こうね?誰がそんな事言った?
「沈まれ!!ルーシ、お前達に鬼神斧槍流の後継者は相応しくないと判断した。よって本日この時より鬼神斧槍流の看板は取り上げ、スキルの使用を禁じる!!」
鬼神斧槍流後継者の権能発動。名の取り上げとスキルの一時封印が発動しました。
「そんな!これでは父上の残した流派が途絶えてしまいます!!」
「お前が残念がっているのは親父の流派を使って手に入れられる名誉や金、そして後ろに居る男連中からの寵愛だろうがよ。何も知らないと思ってるのか?それに安心しろ、まだ名前を取り上げてスキルを封印しただけだ。試験を行い、正当な後継者に選ばれたら返してやる。」
「ぐぬぬぬぬ・・・・。その話は誠ですか?」
「あぁ。親父に誓ってな。」
まぁルーシに返すつもりは無いけどな。門下生の中にまっとうな奴が居ればそいつに、居なければ、まぁあの子にだろうな。
「今日はその事を伝えに来ただけだ。試験は明日正午に城壁の外で行う。遅れたり来なければ失格とし、名前とスキルは剥奪したままだ。解ったな?」
「解りました!父上の名誉にかけて私がその試験を突破して見せます!!」
これが本心からだったらどれほど良かったんだろうなぁ。シアがやれやれと首を横に振ってる。完全に嘘だってバレてるんだよなぁ。
「ドルーの方にもこれから伝えに行く。明日正午、忘れるんじゃないぞ?」
「はい!!」
「さて皆行こうか。」
「出番が全く無かったですわ。」
「僕が門を爆破しただけだねぇ。」
「戦闘があると思って身構えてたのに無駄でした。」
「次は在るかも?」
「( ¯•ω•¯ ) 」
在ったとしても権能が使えるんなら問題は無いと思うけどな、スキルが剥奪できる何て強すぎるし。鬼神斧槍流に限っての話だけどな。
反対側に在る本家鬼神斧槍流も、元祖と変わらない門構えをしていた。こちらは金じゃなくて赤だったけどな。東大の赤門の様な扉にこれまた金で出来た看板がキラキラと輝いている。
「爆破。」
「良いんです?こっちには看板下げろって言って無いんでしょ?」
「あっち爆破してこっち爆破しないなんて不公平だろ?」
「ルドさんがそう言うなら。えいっ!!」ドガーン!!ガラガラガラ・・・・。
爆弾により門が崩れる。瓦礫を避けながら中に進むと、今度は武器を構えながら門下生が待ち構えていた。
「貴様等誰だ!!門を爆破する何て何を考えている!!」
「俺は鬼神斧槍流後見人のルドだ!!この道場に居るドルーに用が在って来た!!今すぐにここに呼べ!!」
「舐めた事言いやがって!!全員やっちまえ!!」
武器を構えた門下生たちが襲い掛かって来た!!
・・・・・・・・・・
「弱すぎですわ。」
「まさかルドさんの盾を抜ける人が居ないなんて・・・・。」
「チンピラの時に解ってたが、全員ノーダメなんて情けなさすぎるだろ。」
「全員弱―い!!」
「q( ゚д゚)pブーブーブー」
「HPも低すぎます。体を全然鍛えていない証拠です。」
10分も掛からずにその場にいた門下生全員がいま地面に寝転がっている。これクリンもルゼダもシアもアイギスも手を出して無いんだぜ?俺とリダだけで全員対処出来ちゃったんだよな。俺が盾で攻撃を受けて、リダが攻撃する。リダの攻撃に巻き込まれて何人も戦闘不能になる。この繰り返しだ。
「さて、ドルーの奴が出てこないな。いっそ道場爆破してやろうか?」
「おおおお止めください!!ドルーめはここです!!」
俺の言葉に慌てたのか、老人が道場の中から姿を現した。その後ろにはビビりながら一家であろう人達が続いている。一番後ろには・・・何やら豪華な服を着ている人が居るがあれは貴族か?お家騒動に巻き込んですみませんねぇ。
「久しぶりだなドルー。長男のルドだ。」
「お姉ちゃんのシアだよー。」
「そんなまさか!!本当に実在の人物だった何て!!」
「お前もかよ・・・・。まぁいい、ここに来た要件だが。「我が道場が正当な後継者になるのですね!!」違う!お前達は後継者に相応しくないゆえに名前の剥奪とスキルを取り上げる!!」
鬼神斧槍流後継者の権能発動。名の取り上げとスキルの一時封印が発動しました。
「これは一体どういう事ですかなドルー殿?」
「ドンテ侯爵!!これは何かの間違いなのです!!」
「ほう?そこの御仁、ルド殿とおっしゃられましたな?何かの間違いだとドルーは申しております。そこで謝罪としてこやつを後継者としては如何です?私からもお礼は致しますよ?」
親父の作った鬼神斧槍流の名前を使って成り上がってやろう雰囲気がプンプンしてるわ。しかもお礼の所で指で輪っかを作りやがった。金の為にこんな事してる訳じゃねぇよ。
「そんな事をしたら親父にぶん殴られるな。却下だ。」
「貴様!!王国相談役とも懇意にしているこのドンテ侯爵に何て言い草だ!!」
貴族がしゃしゃり出てきてお家騒動に首を突っ込んで来たという解釈でOK?自分から巻き込まれに来たんならその代償は払って貰おうか。
「そうか、シルの奴には付き合う人は選ぶように言っておこう。ドンテ侯爵だったな?覚悟しとけよ。」
「貴様!!王国相談役を呼び捨てにする等不敬が過ぎるぞ!!」
「残念だな。シルは俺の妹だ。妹を呼び捨てにして何が悪い?」
「シアの妹でもあるよ!!」
「はっ!!そんな事在る訳が無かろう!もし本当であれば証拠を見せてみよ!!」
「じゃあ鬼神斧槍流の印籠と称号な。ほれ。」
「・・・・・・・・・。」
ステータス画面に輝く<ルバート家の長男>の称号と鬼神斧槍流後見人の証。そしてさっき使った権能のおかげで貴族は何も言えずに呆然とするだけになった。うん、部外者は退場して貰おう。
「とりあえず邪魔だから出てってくれ。あの貴族を敷地から追放で。ついでに無関係な者が道場の敷地に入るの禁止できる?」
鬼神斧槍流後見人の権能が発動。部外者を敷地内より追放。後見人が許可するまで両道場に関係者以外の侵入が禁止されました。
「おっ!認識してればどっちの土地に居ても出来るんだな。」
「お待ちを!!私は」シュンッ!!
「あの人何か言ってたよパパ?」
「知らんな。」
どうせ保身に走ろうとしただけだろう。ちゃんとシルに話をしておいてやるから安心しろよ。その後はどうなっても知らんがな。さてと、ドルーにも今日来た要件を伝えるとするか。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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